プロDD・M ~その551
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
その男、欲望のカエル。
召喚されし22のヲタクよりさらに外側の存在。
力のヲタク、アネンゴを媒介とし、召喚されたヲタク。
ヲタクには進化、もしくは変容の可能性がある。
力が欲望になったように、節制のクモノサーカスが技のヨシケーになったように、正義は調整、審判は永劫、世界は宇宙になる可能性を秘めている。
ヲタクとしての概念もそれによって強化される。つまり、欲望のカエル、まさに我欲の権化、通常の人間では、その姿を拝むことさえ精神に異常をきたす。
「ツムギ!見るな!聞くな!みんな!この場から離れろ!」
マルスが叫んだ。
その様子を見たカエルがうっとりした表情で、マルスに語りかける。
「さすがだよ…兄さん。この僕の前に立ってもなお正常を保っていられる…でも、こうしたらどおうかなぁ」
カエルはさっと身を翻し、ツムギに迫った。
「やめろォーーー!!」
マルスは全速力で、間に入り、カエルをツムギから遠ざけた。
「なーんだ、わかってるじゃないか。せっかく新しい手首が手に入ると思ったのにィ…」
カエルはそう言ってにやりと不気味に笑い、近くにいた81の兵隊に触れた。すると、彼らは醜い化け物へと変化していった。
「通常の人間が、僕に直接触れられると、もはや精神どころか肉体もその形状を保てない。せっかく僕と兄さんの邪魔になるその女も、変えてあげようとしたのに、ひどいなぁ」
「そんな事、させるかよ…!」
マルスの表情に怒りが満ちていった。
「安心してよ、あの綺麗な手首と足首は、僕のコレクションとして切り取ってあげるからさ」
マルス達に悪寒が走った。
すかさずセルーがツムギを抱えて、その場から離脱する。
「マルス!ツムギは俺に任せろ!必ず守る!」
「恩にきるぜ…セルーの兄貴」
カエルは2人のやり取りをみて、小さく舌打ちをすると、唇を舐め回した。
「まぁ…..いいか……」
「アッキーさん、こいつぁ……」
アッキーとライコは、滅びた群青王国へと来ていた。
「何も…..ないな」
「あんたがやったんでしょうが」
「ふっ…遠い昔の事さ。ここに来れば、何かわかるかと思っていたが…」
「特に確信があったわけじゃなかったんすね」
「…….」
廃墟と化した群青王国。かつてアッキー自ら滅ぼした国である。
ユイの欠片を求めてここへ来たアッキーだったが、その残滓すら感じることが出来なかった。
諦めて帰ろうとした時、ライコが止まった。その額からは汗が流れている。
「アッキーさん……ここから先は特別料金ですぜ……」
「ここで…ニシを仕留める」
「ご主人、いつになく真剣ですにゃ」
「あれは…邪悪だ。この世にあってはならないものだ。ブルジョン!!神器に使用を許可する!仕留めろ!!」
ソウチョウが叫んだ。彼には、ニシの危険性がわかっていた。
だが、ニシは、それを読んでいた。
「貴様が俺を真っ先に倒そうとすることはわかっていた。この俺の頭脳の前にひれ伏せ!」
「急げ!ブルジョン、奴に何もさせるな!!!!」
ブルジョンは咄嗟に足下に手を伸ばした。
「遅い!まずはお前が死ねィ!」
ニシの拳には禍々しいまでに強大な力が込められていた。
「やはり!奴はッ!!」
ソウチョウは叫んだが、非情にもニシの拳はブルジョンへと迫っていた。
「落とし物を拾いました。」
「何ッ!?ぐあぁ!!」
ブルジョンが何かを拾うと、ニシは勝手に吹っ飛ばされた。
「ふっ、あれがブルジョンの持つ神器…引っ掛かったな、ニシ」
そして、倒れたニシの状態を確かめるべく、ブルジョンは近づいていった。
戦いは混沌を極めていくかに見えた。
しかし、数人の者は気づいていた。
(このまま戦いを続けていいのか?先に潰すべき相手がいるんじゃないのか?)
「皆の者、少し話がある」
ヨシケーは仲間を集めた。
そして、その動きはエーケーの率いる81にもあった。
「全く状況が読めていないな」
「!?」
近づいたブルジョンははっと飛び退いた。ニシがぴんぴんしているのだ。
「何をしているブルジョン!本気を出せ!」
すると、ブルジョンの頭から黄金の輝きが現れた。
「止まらない止まらない止まらない」
「…….」
「GOLDEN TIME!」
輝くブルジョンの能力が飛躍的に上昇した。
その凄まじいまでの力は、ニシを圧倒する…..はずだった。
「ふん…他愛のないことだ」
「ブルジョーーーーン」
あっさりと頭をかち割られたブルジョンは、その場に転がり、力を失って消えていった。
「やはり…この世界の女神の力は…」
ソウチョウが呟くと、隣でコーが焦ったように言った。
「ま、まずいですにゃ!ご主人!手持ちのヲタクを失ったことで、このフィールドから強制排除されますにゃ!にゃにゃー!!」
こうして、ソウチョウとコーはシブヤの外へと飛ばされていった。
「ザコがヲタクを偶然手に入れただけで…まぁこれにて脱落だ。さて、他の連中も気づいただろう、計画を始めようか」
ニシはにやりと笑った。
シブヤの外に飛ばされたソウチョウに、コーは訴える。
「どうするんですにゃ!ご主人!脱落しちゃいましたにゃ!!」
しかし、当のソウチョウは不敵な笑みを浮かべていた。
「脱落…?違うぞ、コー。全ては計算通りだ」
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