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ブロックチェーン冬の時代への備え

本格な冬の季節を前に、ブロックチェーンを取り巻く業界でも「クリプト・ウィンター」と呼ばれる状況に関する報道・議論が海外では数多くなされています。

その中で目についた記事を一本、ご紹介。ウォール・ストリート・ジャーナルの『暗号通貨業界の最近の話題はレイオフ(Layoffs Become the Latest Thing in Cryptocurrency)』というものです。

サブタイトルには「新興の仮想通貨の下げ相場による人材削減〜ブロックチェーンのベンチャー企業であるConsenSysは13%をレイオフ (Young market’s selloff drives cuts; ConsenSys, a blockchain venture firm, to trim 13% of staff)」と書かれています。

サブタイトルで紹介されているConsenSys(コンセンシス)の13%のレイオフ(12/6)は、とてもインパクトのある出来事として話題になっているものです。というのも、ConsenSysという会社はイーサリアムの共同創始者であるJoe Lubin(ジョー・ルービン)氏が私財を投じて5年前に創業した会社で、分散型社会のビジョンを実現するために採算度外視で技術基盤の構築やスタートアップ支援、エコシステム構築に尽力してきた会社だからです。社員も世界中に約1,200人、求人も直近では200人程募集していて、Spoke(スポーク:車輪の輪の意味)と呼ばれるスタートアップ企業も50社以上支援し、ブロックチェーン界隈の中でも圧倒的な存在感を持っている技術者集団です。

これまでConsenSysでは割と"ゆるい"分散型の経営で知られていて、それぞれのプロジェクトでは収益や目に見える投資に見合うリターンを生み出さなくとも容認される文化がありました。実際2017年も2018年も赤字とのことです。ただ、リストラ発表に先立ってリリースされたルービン氏からの社員へのメモでは、「ConsenSys2.0」を打ち出し、持続可能な成長を可能にするべく、採算性を重視する方向が示されたそうです。

WSJの記事で興味を引いたのは(ルービン氏のコメントとして)、採算重視の姿勢へのシフト、レイオフの決定は、仮想通貨相場の下落はあくまでも時期を早めるきっかけだったもであり、むしろIBMやマイクロソフト、そして急成長している他のスタートアップやプラットフォーム企業との競争が厳しくなっているから、とのことでした。

個人認証プラットフォームのCiviC社のように、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)で調達した3300万ドル相当の仮想通貨の9割を早々に現金化しておいたことで、今回の相場の暴落にもそこまで影響を受けず、継続してサービス開発に取り組んでいられる企業もあるそうです。2019年は機関投資家の仮想通貨投資への本格参入が予想されている中で、資本力のある大企業やベンチャーキャピタルから資金調達を受けているスタートアップ企業などが、ますますブロックチェーン界隈のイノベーションを加速してく可能性は十分にありそうです。

WSJの記事では他にIndeedなどでのブロックチェーン関連の求人検索数が前年の急成長(487%増加)に比べ、成長が落ちていること(マイナス4%)が紹介されています。全体の求人数は増えているそうですが全体的な興味は薄まり、増加率もだいぶ下がっているとのことです。ICOのコンサルティング会社を2017年初旬に起業したものの、その後ICOのピーク時には急成長とともに20人規模に拡大、その後リストラを余儀なくされ、現在は4名に、というエピソードも紹介されています。

リスクを備えること、そして採算性を重視する、というのは当たり前といえば当たり前かもしれません。ConsenSysの経営スタイルに対しては批判的に描かれている他の記事もあります。

ただ、一方でConsenSysが採算度外視でブロックチェーン、分散型社会の実現のための技術基盤、エコシステム構築に取り組んできたことは、将来的に評価されるのでは、ということをConsenSys社の自社ブログやルービン氏の
連続ツィートから感じられます。技術者向けの無料アプリ、ツールなどの利用者数などは右肩上がりで成長しています。

ブロックチェーン業界はあまりに多くの事象、技術革新、また視点があり、どの部分をどのような切り口で見るかで異なった印象・言説・ナラティブを抱く場合が多いのではないかと感じています。また、こうした情報を受取る人の所属、立場、知識によっても異なった受け止め方が存在するのも確かです。時にナラティブはポジショントーク、となり、自分の立場を優位にするためのマーケティング・トークともなりがちです。

「ブロックチェーン冬の時代(Crypto Winter)」をみなさんはどのように受け止めていますか?

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