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【34年ぶりに刷新された"新しいマーケティングの定義"でおさえるべき"2つのポイント"とは?】

先月、日本マーケティング協会が34年ぶりに、マーケティングの定義を更新しました。内容は以下のとおりです。

>(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

>注 1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
>注 2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
>注 3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
出典:https://www.jma2-jp.org/home/news/916-marketing

マーケティングにおける実務家、有識者が集まって行った会議によって決まった定義ですが、議論の中では「企業と顧客の価値共創」「ステークホルダーとの関係性の構築」「社会課題の解決」「持続的成長」といったキーワードがみられたとのことでした。

何が変わったか。1990年の定義をみてみましょう。下記のとおりです。

>マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。
出典:https://www.jma2-jp.org/home/news/916-marketing

まず、明らかな違いは「組織⇒顧客」という一方的な流れが想定されていることです。最新版では、「顧客や社会と共に価値を創造し」と書いてあります。つまり、「組織⇔顧客⇔社会」という買い手と売り手はもちろん、その周辺まで含んだ双方向のコミュニケーションが意識されていることが分かります。

これはSNS社会に代表されるように、インターネットとパーソナルメディアの普及によりすべての人が発信者になる社会において、またあらゆる産業が参加型に変化していく中で、企業がメインプレイヤーとして取り組む広告や製品やサービスの開発が売れる/売れないにダイレクトに影響するというゲームは既に終わったということを意味します。

もうひとつの違いは、90年版の「グローバル」「競争」というキーワードに代わり「ステークホルダー」「豊かで持続可能な社会」というワーディングが行われているところです。90年版は、ボーダーレスで規制のない市場で、競争優位な最適なプレイヤーが生き残れば、社会はよりよくなるということが素朴に信じられていたのでしょう。

その結果、たしかにコモディティの質も上がり、値段は下がり、飢餓人口も割合としては減り、先進国並みの物質的豊かさを享受する人は爆発的に増加しました。しかし同時に、拝金主義、環境問題、移民問題、情報過多、相互監視社会、社会的分断などの現代的な問題が噴出し、必ずしも幸福な社会がもたらされたわけではありません。むしろ世界は多極に分裂し、2024年において社会問題は深刻化していると言えるでしょう。

そのような中でマーケティングは持続可能性とステークホルダーとの利害調整もやらなくてはいけないというのは必然の流れでしょう。弱肉強食、適者生存、もっと露骨に言えば、今だけ金だけ自分だけ、自分さえよければいい焼き畑農業的なマーケティングは、末永くビジネスを続けていこう、(曲線の角度は急だとしても)健全な成長を描いていこうという企業は選択すべきでないというのは当然でしょう。短期的なベネフィットは得られるかも知れませんが、しっぺ返しは必ずきます。

改めてタイトルを振り返りまとめると、2024年版のマーケティングの定義は、「組織⇔顧客⇔社会の双方向性」、「ステークホルダー間での持続可能なバランス」のふたつのポイントが重要ということなのです。