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僕とプロ野球(広島カープ編)

2004年10月、ペナントレースが終わり、15歳の僕は失意のどん底にいた。

大好きだった近鉄バファローズはオリックスに吸収合併されることが決まった。
野球が好きなのかもわからない誰かの都合を、ファンはもちろん選手も打ち破ることはできなかった。
人生で初めて味わう喪失感だった。

それでも選手はビジネスでもあるからドライに動いているようにも見えた。
指名されてオリックスに移った選手、指名されず新球団の楽天イーグルスに移った選手、引退する選手。
その中で当時の近鉄バファローズのエース岩隈久志と打の中心選手だった礒部公一は、オリックスへの移籍を拒み楽天イーグルスに加入した。
その行動は、選手の中にもやっぱりオリックスに吸収されたくないと思ってる選手もいるんだ、と思えて少し嬉しい気分だった
(中心選手だからアクションできただけで、他にもそう思ってる選手もいたのかもしれないけど)。

僕はどうなんだ?
とてもオリックスを応援する気にはなれなかった。近鉄ファンだったハイヒールモモコがオリックスを応援しはじめて残念だったのを思い出す。

新球団の楽天を応援しようかなとも考えていたがなかなか気持ちが動かなかった。

もうひとつの候補は千葉ロッテマリーンズだった。
僕は中学生くらいからバンド音楽に興味を持つようになったのだが、それにはロッテの応援歌が、ハイスタンダードやスネイルランプ、オイスカルメイツと言ったバンドの音楽を使用していたのもきっかけだった。

当時近鉄ファンだった僕もロッテの応援には心を揺さぶられることがあった。
応援歌を配信しているインターネットのサイトでストリーミング再生しながらスピーカーにラジカセを近づけて録音という2000年代にしてはアナログ過ぎる手法で応援歌を楽しむくらいだった。

2005年シーズンが始まり、楽天イーグルスが驚異的な弱さを露呈するなか、高校生になった僕は中学生のときほんのり近鉄ファンを自称していた女友達に誘われて大阪ドームにロッテ戦を観に行く機会があった。

中学生のときキャラジャで買った黒い服(首元がやけに開いたセクシーなやつ)を着てレフトスタンドに行った。
相手はオリックス。応援に熱が入った。
終始楽しく応援でき、試合にも勝ち、友達の知り合いらしいロッテファンのお兄さんに球場近くのかごの屋をご馳走してもらうまでのことを経験し、これはファンになれるかもしれないとそのときは思った。

しかし後日、ロッテが勝とうが負けようが、近鉄のそれのような喜怒哀楽が湧き上がってこない自分がいた。
何事も好きになろうとしてなれるものではないなということがわかり、僕の中でプロ野球自体への熱もしぼんで行くような気持ちを感じていた。

そんな感じで高校生の頃は暇であれば野球を観てみるくらいの毎日を送っていたが、大学生になった僕の興味は完全に音楽に移っていた。
好きなチームが負けて悔しくて寝付けないような感覚なんてどこかに忘れてしまっていた。

そうして大学を卒業した僕は2012年になんの変哲もないような会社に就職するのだが、ここでとある転機があった。
広島への転勤だった。

バンドもやりづらくなるし気が進まなかったが、引っ越しが落ち着いて会社から帰ってテレビをつけるとどこかのチャンネルで広島カープの試合をやっていた。
そういえば広島には野球チームがあったな…と思うのだが、今までパリーグしか見てこなかった自分は、「広島市民球場は狭いからパワプロのホームラン競争で選びがち」くらいの知識しかなかった。

当時は今のような人気球団ではなかったが、広島のローカルテレビ局はしばしばカープ戦を放送しており、新鮮な感じがした。

職場にもカープファンの先輩がいて、6月のとある日の仕事終わりにマツダスタジアムにナイターを観に行くことになった。
今ではあり得ない話になってしまったが、当時は土日でも普通にチケットが入手できた。

どんな試合だったかを思い出し、調べてみたらこんな内容だった。

とてつもなく見どころのない試合だった。

しかし僕の中では忘れていた何かが蘇り、いつのまにか僕は広島カープが好きになっていた。
オリックスバファローズのことも許せるようになったし、近鉄の日本一の夢を託せる気がした。

そのうちにカープは若手の台頭やベテランの復帰により一気に人気球団となり2014年から3連覇を成し遂げる。

この間に日本一にはなれていないが、僕はこんなに魅力のあるチームに出会えて野球の面白さを思い出すことができてラッキーだったと思う。

広島に引っ越して5年が経ち、僕は関西に戻り、現地に足を運ぶことは稀になったが、今ではスカパーのプロ野球チャンネルに加入、家にいればいつでも試合を不自由なく楽しんでいる。

ところで今ではSNSを開けば簡単にファン同士繋がることもできる。
僕が近鉄ファンだったときはまだインターネットもISDNだかADSLみたいなシロモノの時代で、インターネット上でのファン同士の交流と言えばファンサイトの掲示板(BBS)が主流だった。

そこには管理人というその場を統制している立場の人間がおり、そのなかでファン同士の交流があった。
僕は当時中学生だったが、とある試合で9回にカラスコという食わせ者外国人ストッパーが打たれたあと勝ち越して勝利、という展開があり、試合後に「カラスコ盗っ人勝利ですね!」と書き込んだところ、管理人に「全員必死でやっている中あなたは選手を犯罪者扱いですか?もうこの掲示板に書き込まないでください」みたいな感じでマジで怒られたことがある。

当時はなんやねんこいつと思いかなり落ち込んだが、あながち間違った措置ではなかったように思う。

今はどうだろう。
ツイッターで野球チームのハッシュタグなんかを使ってファンの書き込みを検索すると、そこには汚い、あるいはネガティブな言葉が溢れて返っていないだろうか?
それを統制する人はいない。

とりわけそれがカープのファンの書き込みだと僕はどうしようもなく嫌な気分になってしまう。
ネットの書き込みだけじゃない、チケットを転売するようなヤツらに対してもそうだ。

今も昔もプロ野球が好きなことに変わりはないけど、いつからか僕の心の中には「同じチームのファンだからといってそれは仲間ではない」という思いが芽生えた。

少なくとも僕は人に嫌な気分をさせないように野球を楽しみたい。

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