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サンタクロースって、サイコパスなビッチだと思う【ブログ】

マックで執筆作業をしていると、自分の後ろに、高校生くらいのカップルが座った。一緒に勉強しているようだ。
何気なく振り返ってみると、彼女が彼氏の膝の上に座っていた。彼氏はテーブルにあったポテトを手に取って、後ろから彼女の口元に持っていって食べさせていた。

店内には、"Have Yourself A Merry Little Christmas"が流れ始めていた。
僕は、その様子をみて微笑んでから、ゆっくりと自分のPCに視線を戻した。

「もうすぐ、クリスマスだね」
彼女さんが、そう言ったのが聞こえた。
僕は、ポケットからサイレンサー付きの銃を取り出すと、素早く振り返り、カップルの心臓に、一発ずつ銃弾を命中させた。
それから、銃口をハンカチで拭いて、ポケットにしまってから、作業に戻った。

"Have Yourself A Merry Little Christmas"が止まって、店内に「ポーン」という音がなった。
「夜マックの時間だ」と思った。


All I Want For Christmas is You - My Chemical Romance


クリスマスが近い。カレンダーを見なくても、街が教えてくれる。
気づいた頃には、街路樹に申し訳程度のイルミネーションが施され、至るところでマライア・キャリーが必死に歌っている。
カフェでは、赤・白・緑を基調とした、毎年同じ「クリスマス限定デザイン」グッズが肩を並べ、
糖分を取りすぎたキッズ達が、おもちゃを求めて絶叫しながら街中を駆け巡っている。
こんなの、クリスマスに決まっている。

大嫌いなクリスマス。僕は、ある男の存在が気になった。
サンタクロース。
年間の稼働日は、わずか1日。それ以外の364日は有給。トナカイ達をまとめるチームリーダー。全人類から発露する欲望に応える、最強のホスピタリティを兼ね備える。

一方で、人々の住所や個人情報を丁寧にまとめている節があり、毎年生まれた子供をチェックするというサイコパスな一面をもつ。さらには、プレゼントをもらえる子供を、独断と偏見で選ぶというビッチな行動も起こす。

サンタクロース。彼は、人類の味方か、それとも敵か。


そんな風にサンタへ思いを馳せていると、ある疑問が浮かんだ。

「サンタがいないってことに気づいたの、いつだっけ?」

思い出せない。
何がきっかけで、どのように「サンタはいない」と知ったのか、全くもって思い出せない。
いつからか、クリスマスの朝にプレゼントをくれるのは、サンタではなく、僕の両親だと知った。

昔の僕は、さぞショックだったに違いない。
「親からプレセントをもらうのがクリスマス、で良くないか?」
「正体を隠すことに、何のメリットがあるのだろうか?」
「こんな嘘を何年もつくなんて、大人は、なんて汚い生き物なんだ」
そう思ったに違いない。

寂しいことに、僕のサンタとの思い出は、2つしかない。

1つは、確か小学二年生くらいの時だった。
朝起きて、クリスマスツリーの下をみると、当時発売されたばかりのGAME BOY Colorが届いていた。正確に言うと、GAME BOY Color「だけ」が届いていた。電池をはめて、電源を入れると、「ピコー」という明るい電子音が鳴って、画面に「ソフトを入れてください」と映った。何度か、その作業を繰り返した。
「人に何かを頼む時は、出来るだけ丁寧に伝える必要があるな」と思った。
僕は、ひとつ大人になった。

2つは、確か小学四年生くらいの時だった。
妹が、感謝の気持ちを込めて、サンタさんにケーキを作ったのだ。苺がたくさんのった、大きなホールのショートケーキだった。
次の日の朝、冷蔵庫を見てみると、ケーキの四分の一がなくなっていた。
「全部食べなかったんだ」
僕は最初そう思ったが、すぐに思い直した。
「逆に何故サンタさんは、ケーキが好きだという前提なのだろう」
「それって、ただの偏見なのではないだろうか」
「ていうか、ケーキ好きな人でも、ホールで渡されたら困るだろ」
これらの思考を整理した結果、「偏見はダメ」と帰結した。
僕は、またひとつ大人になった。

あれから、10数年後。
あの頃と同じ音楽が流れる街で、あの頃と違う感情に飲み込まれている自分に辟易とする。
大人になって良かったことなんて、マックのポテトをいくらでも買えることくらいなのかもしれない。でも、あの頃の僕にそれを言ったら、「大人、最高じゃん!』って言うんだろうな。
凍てつく寒さに身を震わせながら、そんなことを考えていると、プレゼントがもらえそうだ。

「続いては、私がクリスマスのために書き下ろした新曲です!」
店内で流れているラジオから、聞いたことのないアーティストが、自分の歌を流し始めた。

サンタさん、どうかお願いです。
もうこれ以上、クソみたいなクリスマスソングが生まれないようにしてください。

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