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気に入ったソファを長く使えば、一年当たりは安いもの


ソファは何年使うのか?

よく、ソファは何年くらい使えますか?と聞かれます。私がこれまで見てきた中では、5〜6年で使えなくなる物もあれば、30年たっても普通に使っている物もありました。一般的には、10年くらいで買い替える方が多いのではないでしょうか。当社のソファでは、15年から20年くらい使っている方が多いように思います。
使えなくなるケースで1番多いのは、張り地が痛んで破れてしまった場合です。次に多いのは、クッションの変形による型崩れや座り心地の変化です。張り地が破れてしまった場合でも、布のカバーリングソファの場合は、カバーを交換することで使い続けられますし、革は張り替えることで、使い続けられます。しかし、クッション性が悪くなって、座り心地が悪くなった場合は、使い続けていると腰痛になったり、姿勢が悪くなったりします。それを修理しようとすると、買い換えるよりも高い費用がかかるため、そのソファに対する強い愛着がない場合以外は、他のソファに買い換える方がほとんどです。
ですので、クッション材やフレームが、高い耐久性を持っているソファを買うことで、長く使い続けることができます。その耐用年数の差は、何で決まっているのでしょうか。

耐久性はどうやって決まるのか?

木枠などのフレームが壊れるケースは特殊で、ウレタンやバネといったクッション材がヘタる、つまりクッション性が悪くなることで、使えなくなるケースがほとんどです。

ウレタンについて

ウレタンの耐久性は、基本的には密度で決まります。密度というのは、1立方メートル当たり何kgかです。密度が高いウレタンは、例えていうとたくさん柱のある家のようなものです。丈夫で変形しにくいので、長い間クッション性を維持することができます。かといって、高い密度のウレタンだけでクッションを作ると、座り心地が硬く気持ち良い感触が出せないのです。ですので、様々な硬さのウレタンを組み合わせることで、快適な感触と耐久性とのバランスを作り出すよう工夫しています。

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バネについて

バネがヘタる原因としては、材料と作り方、それに入れる本数の問題です。
材料についていうと、鉄のカーボン含有量が低く、柔らかく耐久性の低い鋼材を使っている場合は、バネの戻る力が、すぐに弱くなります。それに、バネ鋼材の線径(太さ)が細いものは、最初は柔らかくて気持ちいいクッション性がありますが、ヘタりやすいように思います。張替えや修理をしていると、こうした事がよくわかります。

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作り方については、さほど詳しくありませんが、バネの鋼材には均質性が重要だそうです。鋼材を作っているときに、部分的に冷たい風に触れることで、そこが硬くなり応力が集中して折れやすくなるそうです。国産のバネではそういったケースに出会ったことはありませんが、輸入の安いバネでは見たことがあります。ちょっと専門的すぎますね。(汗)
1番多く見られる問題は、バネの本数が少ないケースです。当社で主に使っているSバネでは、10センチピッチが一般的で、奥行きが深いバネでは、途中を鋼線でつなぐメーカーが多いのです。しかし、無理にコストを下げ、クッション性を出そうとしすぎて、バネの本数を減らしていたり、バネ同士をつながないようにしたりしているソファは、今でも時々見かけます。そうすると、2年くらいでバネが下がり過ぎて、座っていると腰が痛くなるようになってしまいます。
鉄のバネの代わりに、ウェービングテープという、ゴムベルトを使っているメーカーさんもあります。鉄と比べるとゴムは耐久性が低いので、密度の低いウレタンと組み合わせると、ヘタりが大きく出るので注意が必要です。
参考:ソファの構造

まだ使えるのに捨てられている

ソファを買い換えるお客さんと話をしていて、買って数年しか経っておらず、まだ使えるのに買い換えるというお客さんもいらっしゃいます。ソファ屋としてはとても悲しい気持ちになります。せっかく良いソファを買ったのに、もったいないですね。

その理由を尋ねると、座り心地が悪くて家族がみんな座らないとか、見た目だけで選んでしまい、使い勝手が悪いと言われます。以前にも書いたように、ソファは見た目だけでなく、座り心地を重視して選んでもらえたら、長い時間をソファで過ごすようになります。いろんなお店でたくさんのソファを座り比べ、詳しい店員さんに相談してみてください。それと、引越し先のインテリアに合わないという理由で買い換えるケースもあります。その気持ちも理解できますが、流行を追わないスタンダードなソファを買うことで、引っ越し先でも使い続けられるのではないでしょうか?時代を越えて残るデザインなら、いつまでも古く感じることはありませんよ。また、傷んだソファが格好悪いという理由で、捨てられるケースもありますが、ソファは年中同じ場所で紫外線にさらされていますし、柔らかい素材を使っていることもあって、どうしても経年変化してしまいます。その経年変化が格好よければ、愛着が湧いて使い続けようと思ってもらえると思います。そんな経年変化をするソファの作り方や素材を、これからも探求し続けています。
参考記事


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ソファを作る事で、幸せな時間を提供する

私たちは、ソファを作っていますが、実はソファを使って「幸せな時間」を提供しているのだと考えています。ソファに家族が集まり、一緒に時間を過ごす中で、思い出がつくられていく。そんな思い出の詰まったソファなら、愛着を持って長く使ってもらえるのではないでしょうか?
60万円のソファでも、20年使えば年間3万円です。この3万円がご自身にとって贅沢かどうか、考えてみてください。そんなに高い買い物ではないと思いませんか?
余談ですが、先日ソファを買ってくれたお客さんの、買いに来た理由がちょっと良い話でした。娘さんが成長して一人前になると、出かけていたり自分の部屋にいたりして、家族と過ごす時間はだんだん減っていきます。それに気づいた時、結婚して出て行くまであと数年だろうと思われたそうです。それまで、大事な娘さんと一緒に過ごす時間をできるだけ増やそうと、座り心地がいいソファを買いに来たという事でした。そんな思いを抱きながら、ソファを選ぶお父さんの姿は、寂しそうでもあり、嬉しそうでもありました。私たちのソファに、お父さんと愛しい娘との、幸せな時間が刻み込まれ、単なる座る道具以上の、かけがえのないソファになってくれたら嬉しいですね。

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