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「ありがとう藤本監督」球団広報が傍で見た素顔

こんにちは、マーケティング・コミュニケーション部の中澤です。

劇的な幕切れから早4日。一息つく間もなく、球団内もバタバタと来季に向けた動きが始まりました。

退任となった藤本前監督には社員としても様々な面で協力いただいていたので、急展開に寂しさも募るところ。

監督就任から2年。藤本ホークスを盛り上げようと様々な取り組みを考えてきた一区切りとして、身近にいた球団広報の想いとともに、このnoteに藤本さんへの感謝の気持ちを書き残しておこうと思います。

球団広報が見た藤本さんの素顔とは

「藤本さんは一言でいうと、人情のある人。親しみやすくてチームの現場とメディアの垣根が低くなる関係を作ってくれた人かな。」

と語るのは、球団広報として2年間苦楽をともにした篠原周至さん。

篠原さんは退任会見の司会進行も担当(左奥)

誰とでも分け隔てなく話をして、朗らかで人懐っこい。周囲とは一線を画して敷居が高いイメージとは違う、プロ野球監督はこうあるべきだという古い考え方を変えてくれた監督だといいます。

「今日が初めましての記者から、 もう十数年付き合っている記者から、関わる人みんなにフラットに接されていましたからね」。

自身のトレードマークであるヒゲを扱った企画や神輿に乗って登場するという派手な演出にも快く協力してくれるなど、球団が取り組む事業・ファンサービスへの理解も深く、一般社員にも親しまれる雰囲気がつくられたのも藤本監督の人柄があってこそ。

「以前藤本さんに「人と話すの好きでしょ」とか「コミュニケーション上手ですよね」みたいな話をしたことがあって。
その時藤本さんは「昔は全然喋られへんかった。人と喋るのがすごい嫌やった。けど、居酒屋でトークを覚えて、人を見るようになったんです」と言っていました。「この人って今、この店で何を求めてるんだろう?この料理を出そう、この会話をしよう、っていうのを考えられるようになってから、人と話せるようになったんです。 ファームの打撃コーチになってからは、選手をよく見るようになって、選手が求めてることを感じとって、言葉をかけてあげたり。 振り返ると、僕は人と話すことで人を伸ばすことを、長い時間をかけて実践してきたんやろうな」と語っていたのが印象深いです。
多方面に気を配って、コミュニケーションをとることを大事にされている方なんですよね」

※藤本さんは引退後に自身の居酒屋を経営していた時期がある

2022年開幕セレモニーでは神輿に乗って登場

今季、就任2年目の開幕セレモニーではエヴァンゲリオンに乗って登場するというバージョンアップしたお願いもしましたが、実現できた背景に藤本監督なら引き受けてくれるはずという想いがあったのは間違いありません。

「神輿の打診をしたときもさすがにこれは…と思ってこちらも入念な準備をして打診に臨んだけど、監督は「それで試合前の選手たちがリラックスできるなら」と依頼を受けてくれました。今年の年初に会った日の一言目で「今年は神輿には乗らんで」と言ってきたくらい根には持たれてますが…。また絶対何かに乗せられるんだろうなと予感していたみたいですが、まさか今度はエヴァだとはその時は思っていなかったと思います(笑)メディアから自分がどういじられるべきかを分かっている人なので、自分がOKしたら選手の緊張がほぐれる、ファンもメディアも喜ぶ、アイデアを発案した人が喜ぶ、 だったらもうどうぞって言ってくれるタイプなんです。」

2023年はエヴァンゲリオンコラボ演出で発進

篠原さんは藤本さんとのやり取りを懐かしそうに振り返ってくれましたが、一方では結果がついてこないことで周囲の評価に対して神経をすり減らしていく姿も見ていくようになりました。

「去年、すごく悔しい負け方でリーグ優勝を逃して、相当な悔しい思いをずっと持っていました。自分を支えてくれるファン、スポンサー、関係者、各方面からの期待感とプレッシャーは相当感じていたみたいで、 今シーズンは最初からチームがより最善の状況で戦えるように、情報管理に気を使われていましたね。」

藤本監督といえばベンチで常に表情を崩さず冷静に戦況を見つめている姿が印象的ですが、そこにも理由があるといいます。

「藤本さんは秋山監督の姿を理想の監督像と思っているんです。いつも冷静に試合状況を見て、次の一手をずっと考える。慌てる姿は当然見せない。 勝っても浮かれる姿は見せない、というのが藤本さんの考えるベンチでの監督の振る舞い。それを最初から決めていたんですね。でもやっぱり不器用で、カメラの前では自分を作ってしまう。だから、外からの印象はだいぶ違って見えたのかもしれません。」

戦況を見つめる藤本監督

PayPayドームでの最終戦セレモニーや退任会見で見せた藤本さんの涙には、普段の強面な印象と異なる姿に感情を動かされたファンの方も多いのではないでしょうか。

普段メディアを通して映し出されて来た姿からはあまり想像できない涙だったかもしれません。

そんな一面が身近な姿を知る人からすると普段の姿で、周囲の人に気を遣って大切にする、ちょっと不器用で人情味溢れる人、それが藤本さんなのだそうです。

大変な重圧の中で戦った2年間

親戚のおじさんが監督になったような感覚ですかね。もち吉(福岡の老舗米菓)が好きでスタッフみんなに配っているのが印象的で、いつも周りへの心遣いがありました。よく話すわけではないけど、冗談を投げかけてくれたり、何気なく突っ込む一言が面白かったり、愛情があるコミュニケーションだったけど、監督になると影響力が大きくなってそういう言葉も気軽に言えなくなるんだな、と感じていました。監督という立場ってすごいなあって思って見ていました。」

と話すのは、コーチ時代から藤本さんのことを知る球団広報の加藤和子さん。勝たなくてはいけないチームだからこそ降りかかる重圧と戦う姿を、間近で見てきたといいます。

広報としてチームを傍で見続けている加藤さん(右)

「2軍コーチ時代に選手と近い距離間で接していたような、いとこのおじさんが子どもに教えるような感じではなく、全体を見なくてはいけなくなったことで接し方を変えていく苦労もあったと思います。就任して最初のインタビューでは不安と緊張がありながらも気持ちが高ぶっていたのを覚えていますが、1敗するだけでも相当なストレスがかかるから、だんだん笑顔が少なくなっていた気がして…。大変な職業だな、と。」

CSの敗戦以来、藤本さんと顔を合わせる場所はなく、まだねぎらいの言葉をかける時間もとれていないそう。

「あの時はかける言葉がないってこのことかな、くらいの異様な状況でした。日本一になったら髭を剃ると言っていたのを実現したかったし、監督になった以上は胴上げも経験してほしかったし、その姿をファンに伝えられなくて残念だったけど、監督として背負う責任の重さは私たちには想像もできないこと。メディアで批判的なことを言われていたりもしますが、監督が色々なことを抱えて、考えて、苦心されていたことはファンの皆さまにもわかってほしいなと思います」

と今の率直な想いを語ってくれました。
チームの傍で同じ時間を過ごし、現場の空気感も感じとっている加藤さんの言葉には、藤本さんへの気遣いが詰まっていました。

藤本さんの想いも背負って、新シーズンへ走り出す

2人から共通して聞けたのは、みんなに親しまれる人柄と監督としての苦悩。

「記者たちにも慕われていて、退任会見では目をはらしている人もいたし、会見が終わるときには自然と拍手が起こった。最後まで藤本監督の人柄が表れていましたね」と篠原さん。

「相当なプレッシャーがあったと思うので、ゆっくり休んで普通のおじさんに戻ってくれたらいいな。監督になってからは以前のように選手たちと気軽に話すこともできなかったと思うので、今後は選手と監督の立場としては話せなかったことを思いっ切り話してほしいです」と加藤さん。

私たち社員にとっても待ち望んでいた「日本一になったら髭を剃る」という願いは叶えられませんでしたが、藤本監督と共に戦った2年間で色々な挑戦をすることができました。

常に結果が求められる勝負の世界とは残酷ですが、身を削る思いで使命を全うしていただいた藤本さんへ、このnoteでお疲れさまでしたという感謝の気持ちを、ファンの皆様と少しでも共有できれば幸いです。

勝つことの重み、難しさを身に染みて感じたシーズンを終え、来季のホークスは新監督に託されることとなります。

藤本さんと成し遂げられなかった日本一奪還への想いを引き継ぎながら、新監督の元で新たなホークスを作っていけるよう、来シーズンへ向けてまた社員一同で頑張っていきます。

ファンの皆さま、今後とも熱いご声援をよろしくお願いいたします。

(マーケティング・コミュニケーション部 中澤 佑輔)


※10/24追記
藤本前監督の後を継ぎ、小久保裕紀監督が就任!
選手としてホークスの礎を作り、王イズムを継承する新指揮官が、王座奪回へ始動します。


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