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悪魔、巨人、仮面、魔法の馬、そしてナマハゲ|世界一おもしろいお祭りの本


少年が大人になることを祝う、仮面のお祭り。
カースト制度の底辺の人々が一夜だけ神官になり、神々の舞を踊るお祭り。
乗り手に合わせて自由に大きさを変える、魔法の馬のお祭り。
原罪を清めるため、悪魔が赤ちゃんをまたいだ後にバラの花びらをまくお祭り。

世界には私たちの知らないお祭りがたくさんあります。

この度、弊社から上梓した新刊『世界一おもしろいお祭りの本』は、そうした世界中のさまざまなお祭りをカラフルなイラストとともに紹介したイラストブックです。
この記事を書いている私・編集Aは本書の担当編集者ではないのですが、できあがった見本を読んですごく好きになってしまったので、ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思い、勝手に紹介記事を書きました。

いや、たぶん好きな人はすごく好きだと思いますよ、この本。

<本書の内容>
歴史の古いお祭りは世界中に存在している。中世期に誕生したものもあれば、もっと古くから伝わるものもある。それぞれのお祭りは、この世に生きているありがたさを祝い、私たちを生かしている自然に感謝し、土地に伝わる伝承を残し、そこに住む人たちの絆を深めてきた。本書で紹介されるお祭りは、その地方以外ではほとんど知られていないものが多く、どのお祭りも目を見張るような衣装や奇怪な儀式を特徴とする。カラフルなイラストで描かれたページをめくるたび、それぞれの文化の違いと共通点が見えてくる。親子で楽しめ、プレゼントにも最適な一冊。

<本書の見どころ>
●2018年11月、ユネスコ無形文化遺産に登録された日本のお祭りを掲載!
●ユネスコ無形文化遺産を含む世界の40のお祭りを、カラフルなイラストで紹介。
●国立民族学博物館の研究者による監修。
●巻末には、大陸別の世界地図を収録。調べ学習にもお役立ち。


オススメポイント①:イラストが楽しい

まず基本的に、イラストがとっても良いです。

ちょっと下の一枚を見てみてください。
登場人物たちの表情がコミカルで(どことなくシュールなのも個人的に好みです)、資料に忠実ながらも味わいのある色合い。
お祭りに浮かれる、街の人たちの雰囲気を感じさせてくれます。

ドゥエー(フランス)の巨人祭

馬に乗る4人組は「本物の兄弟」でなければいけないという決まりがある / デンデルモンデ(ベルギー)のバヤール

昨年11月、ユネスコ無形文化遺産に登録された / 秋田県のなまはげ


オススメポイント②:異文化を学べる

また本書は、見て楽しめるだけでなく、読んで勉強にもなります。

お互いの文化を尊重し、多様性を保つための異文化教育・異文化理解は、グローバル化の進む昨今、ビジネスや教育の現場でとても重要なトピックになっています。
そうしたとき、「それぞれの地域・民族で長く伝承されてきたお祭り」というテーマは、その土地で生きる人々が大事にしてきた信仰や考え方を知るうえで、とても有用で、かつ親しみやすい切り口といえるでしょう。

本書の日本語版監修は、世界各地の民俗に詳しい国立民族学博物館の研究者のみなさん。
巻末には、大陸別の世界お祭り地図も収録してあるので、学校での調べ学習にも最適です。

カースト制度の底辺の人々が、一夜だけ神官になって神々の舞を踊る / インドのテイヤム祭り

周囲より目立とうとしたために、頭につけていた花冠がついには全身を覆うようになってしまったという / お祭りで使用される道具・素材の比較


オススメポイント③:とにかくワクワク!

などなど、実用性や学習要素もちろん重要ポイントなのですが、異文化を知ることは単純にワクワクすることで、そうしたワクワク感を与えてくれるのが本書の一番のオススメ所です。

たとえば冒頭でも触れた、悪魔が赤ちゃんをまたぐスペインの「エル・コラチョ」というお祭り(下の画像参照)。

このお祭りでは、
「生まれた子どもの原罪を清めるために」
「馬のたてがみで作ったムチをもった悪魔が走ってきて」
「マットレスに並べられた赤ちゃんを飛び越え」
「その後バラの花びらをまく」
という行事が行われているそうなのです。

いや、ちょっとおもしろ要素を詰め込みすぎというか、「なんでそうなっちゃったの?」と思う所も多いお祭りでもあるのですが、エル・コラチョの衣装にしてもユニークですし、アタバレロと呼ばれる黒い服に身を包んだ男たちがエル・コラチョを追いかけるあたりも、節分の鬼退治を彷彿とさせます。
このお祭りは17世紀からあるそうですが、起源はもっと古いとか。
いろいろな信仰のお祭りが習合した結果なのかもしれませんね。

そうした、「よく分からないけど、面白い」という感覚をたくさん刺激してくれる本になっています。

 スペインの赤ちゃんまたぎ祭

儀式に使用された森を、お祭りの後に燃やしてしまう / ザンビア北西部のマキシ


さいごに

以上、本書に収録されているお祭りをちょっとだけ紹介してきました。
ほかにも、故郷を取り戻すために植物で変装して戦ったという伝承にもとづく苔男のお祭りや、禁じられた日に狩りをした罰として頭だけ動物にされた男のお祭りなど、びっくりするようなお祭りがたくさん紹介されています。

気になった方は、ぜひぜひ以下の商品ページや紹介動画をご覧いただくか、またはお近くの本屋さんでお手に取っていただければ幸いです!


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【商品ページ】


【紹介動画】


【著者紹介】

[著]ロブ・フラワーズ(フラワーズ,ロブ)
ロブ・フラワーズは大胆な画法で知られるイラストレーターで、クレヨンを思わせる鮮やかな色彩、遊び心あふれるフォーム、とっぴなキャラクターが特徴だ。けばけばしい雑貨や、時代のはやりものを集めるのが大好きで、コレクションには80年代のグロテスクなおもちゃ、70年代の漫画、マクドナルドが誕生したばかりのころの宣伝用グッズも含まれる。主な取引先:大英博物館、ウィッチクラフト博物館〔魔術の博物館〕、チルドレン・イン・ニード〔イギリスBBCのチャリティー番組〕、アクション・エイド〔途上国支援〕、V&A子供博物館、ロンドン自然史博物館、英国民族博物館。本書が処女作である。
ロブ・フラワーズのHP → https://robflowers.co.uk/

[訳]北川 玲(キタガワ レイ)
翻訳家。主な訳書は『若き科学者への手紙』、『ウイルス図鑑101』(以上、創元社)、『死の美術大全』(河出書房新社)など。

[監訳]八木 百合子(ヤギ ユリコ)
国立民族学博物館助教。博士(文学)。総合研究大学院大学博士後期課程単位取得退学。専門は文化人類学。南米ペルーを中心に現代の宗教文化の研究を行っている。主著に『アンデスの聖人信仰――人の移動が織りなす文化のダイナミズム』(臨川書店)がある。