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小さく生んで大きく育てる ~『プロカウンセラーの聞く技術』営業日誌

みなさま、こんにちは。営業部Gです。

創元社社員のおすすめの本、イチオシの本をご紹介するこの連載。今回は創元社営業部のレジェンド! いまはもうご退職されたK部長(当時)の「こだわりの一冊」をご紹介します。

選ばれた1冊はこちら!

〔内容紹介〕
「沈黙は金、雄弁は銀」「一度語る前に二度聞け」など、昔からしゃべることよりも聞くことの大切さが強調される。もちろん「話す」ことも人間関係の上で大きな影響を与えるが、本当に人の話を「聞く」ことができると、人間関係は驚くほどよくなる。本書は、「聞く」ことのプロであるカウンセラーが、「聞き上手」になるための極意を、実例をふくめてわかりやすく説いた1冊。

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このインタビューが行われたのは東京国際ブックフェアの準備に追われていた2014年の初夏のこと。

そもそも心理学の本だった『聞く技術』が、ビジネス書売り場で大ブレイクしたきっかけとは? K営業部長(当時)の語る、大ヒット秘話です。


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――まずは、この本を選んだ理由をお聞かせください。

いろいろな意味で、とても思い出深い一冊だからですね。

──心理学書では異例の38万部の大ヒットですね。どういったことがきっかけでブレイクしだしたんでしょうか?

きっかけのひとつとして、思い出深いエピソードがあります。発売して4ヶ月ほどの2001年の1月、『プロカウンセラーの聞く技術』がだんだん売れだした頃、取次(本を書店さんに卸す問屋さんのこと)の倉庫に行った際に、なじみの書店さんと『聞く技術』の話になったときのことです。

「これ、心理の本やけど、ビジネスや話題書のコーナーで、平積み・面陳ですごい売れてるんです。追加注文がどんどん来てて、取次さんの倉庫でもこうやって、店売(倉庫内の直販コーナーのこと。取次を訪れた書店さんがここで商品を目利きして仕入れる)で積み上げてもらってるんですよ」

と、話していたら、その書店さんが、

「じゃあ、うちでもやってみるわ」って。
「なんぼいります?」
「50冊」

え、50冊もどうするんだろうと思った。
そしたら、その書店さんの店の前に、雑誌のラックがあってね。そのラックの雑誌全部はずして、そこに全部『聞く技術』を並べるっていう、すごい集中販売をしてくれた。

──あ、写真みたことあります。立ててずらーっと。

そう! それをいっぺんやってみたら、一週間ほどで書店さんから電話がかかってきて、

「いや、売れてるよ! 一週間ですごい売れ行きや」って。

それで、すぐに追加入れて。このあたりからかな、急速に広がっていったのは。

雑誌ラックに一面の『聞く技術』!

同時進行で、他の書店さんからも、ビジネス書で平積みにしてよく売れた、という情報が入りだして、これは売れる、さらに売っていこう、ということになった。それで、編集と営業でいっしょになって、帯の文句を考えたり、チラシのアイディアを出し合ったり。夜遅くまで額を寄せ合って知恵をしぼった。その当時のデザイナーさんも巻きこんで、今までにないようなインパクトの強いチラシを作ったり。

『聞く技術』ヒットの大きな起爆剤となった書店向けチラシ

──チラシ、印象的でしたね、ファイヤー!(上図参照)みたいなのとか。

押しの強いね(笑)。こういったチラシをくりかえし書店さんにFAXしたり、帯やPOPを何種類も作って、いろんなジャンルの売り場に持って行けるようにしたり、ありとあらゆる工夫をした。デザイナーも、編集も、営業も、一丸となってがんばっていた。

帯デザインの変遷
当時は、3種類ほどの帯の本が書店に同時に並ぶという状況でした。
1番最初は緑色。定番となった黄色とは、また雰囲気が違っています。

あそこまで、部署や役割を越えて、話しながら、一体化して、みんなでやったっていうのが、『プロカウンセラーの聞く技術』がものすごく売れた要因のひとつなんじゃないかと思っています。もちろん、本そのものも、一般的で読みやすく、説得力もあった。そういう商品としての強さにくわえて、部署の垣根を越えた、販売努力。

ダーンとたくさん作って、ああ失敗やったとか、あるいは広告ガツーンと打って成功した、とかもあるけれど、そういうのは水物で、一発勝負。逆に『プロカウンセラーの聞く技術』は、積み重ねて積み重ねて、「小さく生んで大きく育てる」っていうのを実践できた本だと思っています。一番、営業の王道というか、正道というか、そういう売り方が出来たんじゃないかと。そういう意味では、今までで最高の本なんじゃないかな。とても思い出深い一冊です。


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『プロカウンセラーの聞く技術』は現在40万部。インタビューのなかの「小さく生んで、大きく育てる」「営業の正道」といった言葉が、同じ営業の人間として、心に残りました。

[元記事2014年6月10日配信]


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