見出し画像

SOKUJITSU Vol.4「コウゴ・カナエ分解計画」コウゴ・カナエ×高木 望

コウゴ・カナエというアーティストがいる。

7mm×7mm以下くらいの紙の立方体を使い、緻密で幾何学的な立体作品を作る。いかんせん立方体の使用量が尋常じゃない。1作品につき、1,300個くらい使うらしい。
なお先月「紙わざ大賞28」という紙を用いたアート作品のコンペで、450作品以上の中から「特別賞」に選出。その技術力とセンスは計りしれない。

今回のSOKUJITSUでは、幾何学模様依存症になってしまった彼女と共に、
あるプロモーションムービーを作成した。
ご紹介にあたり、彼女との企画会議の様子をまとめたので、まずはご一読いただきたい。

「その曲線の理由が説明できないから描き方を真似できない」

コウゴ:昨日自分のライブだったんだけど、気づいたら朝7時になってて。1時間だけ寝て、今来たって感じ。

高木:ドラムは社外でやってんだっけ?

コウゴ:「一緒にやりたい!」って言ってくれる人もいるから、ちょこちょこ声かけてもらうことはある。ジャンルは依頼をくれる人次第だけど、ロックもなんでも。今回は珍しくカントリーでやった。あと最近ハンドパンも手に入れて。「聴きたい!」って人もいるから、いつか何かしらの形にはしたい。

高木:ドラムはいつからやってるの?

コウゴ:11歳から。英語然りドラム然り、最近「10年以上やってます」って言えることが増えてきたなあ。

高木:ちなみに今やってるグラフィックスとかは経験歴長そうだけど、元々絵とか図工が好きだったの?

コウゴ:最近は、それこそ空想したことを絵にできるようにもなったし、映画の印象に残ったところを描いたりするのが楽しくなってきたかも。でも、昔はいわゆるイラストっぽい絵はあんまり描けなくて。

保育園の時とかから流行りの絵をトレース(なぞり描き)するのが好きだったんだけど、他に上手い子がちやほやされてるのを見て「私はこれじゃない」って(笑)。

ただ高校の時に、コンピュータグラフィックスの技法を使ったアートに出合った。当時やってたバンドでCDを作るときに、レコーディングをやってくれたエンジニアさんがフォトショも使えて。私が撮った写真を使って色々加工してジャケット作ってくれたの。で、「グラフィックデザインめっちゃ良いじゃん」ってなって。

音楽がヴィジュアライズされるのも好きだし、別の世界を与えることも好きだから、そこから大学でグラフィックデザインを勉強することにしたんだよね。

ちなみにこれが最近描いた、映画の感想まとめたイラスト。

高木:イラスト、めっちゃ上手いやん。

コウゴ:模写は好きかもって気づいた。Webサイトを遡りながら観ているところとかはあるよ。何も見ずに描くのだとうまくいかない。あと具体的といっても、結構顔だったりディテールを省いた描き方の方が好きなの。シンプルが好き!

高木:模写のスタイルもありながら、より抽象的な方向に突き進む理由ってなんなの?

コウゴ:幾何学模様とか関数で表せる図形が好きなのは前提にある。
中村祐介さんとかのイラストとかも美しいなって思うんだけど、私には描き方の真似ができない。「なんで前髪の線がここまで伸びてて、なんでこの微妙な曲線はその長さで決めたの〜!」って謎になっちゃって!

高木:何だそのドラマ『ガリレオ』みたいな発想は……。

コウゴ:私にとっては一個一個に理由が無いの。綺麗だけど、それが決められた理由が分からなくて。逆に三角形を使う時、二等辺三角形も正三角形も、そこに合わせた理由が簡単につけられる。その違いはあると思う。

「“2”はなんか赤っぽい」

コウゴ:あと数字の意味合いを作るのが好きなの。そう! 言ってなかったんだけど、数字を見ると素因数分解するクセがあるの。

高木:?!

コウゴ:数字が何かける何かける何なのかをすごい考えちゃうの。漢字も素因数分解することがあって。「龍」って文字を「立」とか「月」とかパーツに分解するのが好きで、大学でもそういう作品を作ってる。分解が好きみたい!

高木:今日ハードな気がしてきた。そもそも素数計算にハマり始めたのってなんでなの?

コウゴ:友達と喋ってる時に気に入ってる数字の羅列について話したら、不思議がられて。そこから半年くらいかけて、上野で「素数カフェ」っていう数字の話をずっとする会みたいなのをしたりして、ずっと素数の話をしたりしてた。10月24日とかやばいよ。1024って2の10乗だよ?

高木:ホウ…。

コウゴ:なんか「お前はこういう要素でできてるんだな」っていうのが分かってくる気がしてて。よく父親からも「分解すれば分かる」って言われてて、確かにって思うところはあるんだよね。仕事もそうなの。

高木:その時点で素数の話ができたってことは、それより前から数字には興味があったんだね。

コウゴ:あと私、「共感覚」を持ってるの。文字に色が見えたり、音に味を感じたり、一つの感覚で別の感覚も作用する感覚のこと。それで私は、文字に色がついて見えるの。

高木:えええええ!すげえええ!!

コウゴ:分かりやすくテンション上がったな。例えば今ノートに書いた「1」と「0」は有り・無しみたいな感じで「1」は白、「0」は黒に見える。でも「2」は赤っぽくて「4」はブルーっぽく見える状況なのね。隣り合う色によって水彩絵具みたいな感じで滲むんだよね。隣の色によって赤の濃さが変わったりする。それが数字にもアルファベットにもあるんだけど、形がシンプルな方が感じやすい。それも数字っていうものの愛を育む要素の一つで。12の倍数が好きなんだけど、12は紅白で綺麗だし、24も赤青で日本人的。36はオレンジと緑、みたいにバランスよく見える。

高木:気になりすぎるから、コウゴの見る世界をなんとかアウトプットさせたい(笑)。 色の話についても、結構さっき話した分解作業に近い気がする。

ちなみにコウゴが作る幾何学のグラフィックも、モノの分解みたいなところがテーマにあったりするの?

コウゴ:正方形と縦長の三角形を組んで作ってるやつね。あれはちょっとコンセプトが違うんだ。
例えば正十二角形ってほぼ丸でしょ。ただ正十二角形を分割した時、四角形と三角形に分割できるってことに気づいて。例えば四角形と三角形って永久に敷き詰められる。でも五角形とか円になると、隙間ができて敷き詰められない。なんて美しいんだと思った。テンションが上がってその発見を何かに残したかった。だから曲線より直線の方が好き。
三角と四角が絵筆みたいなものなのかも。もちろん置き方を間違えると敷き詰められなくなっちゃう。ただ敷き詰められるパターンは何個かある。
実際に作品を作る時はイラレで設計図を作って、形を落とし込んで色を乗せていく。そこで違和感が出てきたりするから微調整をしていって。画面上で「これだ」と思ったものの制作を始める。モノクロ線の時とはやっぱり違いがあるから。

「コウゴフィルター」映像化作戦

高木:一瞬立体作品を展示まで企画提案しようと思ったけど、話聞く限り1日じゃ無理っぽいね。
私が面白いと思ったのは、分解の話と、共感覚で視える数字のカラーについて。これからもコウゴが作品をアウトプットするに当たって、テーマであり続ける内容だと思うから。ただ、紙以外のアウトプットにしたいんだよな…。その上ですでにあるものをコウゴフィルターで説明して欲しいんだよね…。

コウゴ:じゃあどうする?

高木:……お手洗い行って来ます。(席を立つ)

〜十数分後〜

高木:(戻って来て)……自己紹介動画

コウゴ:んん?

高木:コウゴは「分解」と「共感覚」っていう特殊な能力を持っているのに、 単純な説明だけだと人にすごさが伝わらないのよ。だから、コウゴのプロフィールをコウゴ自身に分解したり着色してもらいたいのね。

コウゴ:紙はダメなの?

高木:5000字でも説明しきれない。コウゴのプロモーションビデオを作って、コウゴにコウゴ自身を分解してもらうのが良いなと。あと、作品をストップモーションで撮って、「長方形と三角形で隙間が埋まっていく感覚」っていうのを追体験できるようにすると。

コウゴ:おお!

高木:無印で方眼ノート買って、日比谷公園とかで撮ろうか。あとハンドパンとかパーカッションの音を入れたいんだけど…。

コウゴ:音とモーションをリンクさせたい。

高木:今日いままでで一番ハードかもしれないけど頑張ろうね。


動画はこちら

コウゴ・カナエのブログはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?