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人生の夏休み

いつからだろか。心から休むことが出来なくなったのは。社会人になって業務に対して「責任」が伴うようになった頃からだろうか。

会社員時代は休みが暦通りで、年末年始やお盆、ゴールデンウィークに連休もあった。

長い休みは身体こそ休まるけれど、家でゴロゴロしていても、旅行に行っても、仕事が上手く引き継げたのか?とか、納期が気になったり、ふとしたタイミングで頭の中にチラつき、心がずっと休まらなかった。

仕事をすることは、社会との接点を持つこと。歯車の一部になることで貰う給料の対価として、忠誠心を捧げなくてはイケナイ…と、いつしか思うように。

今の生活をこれからもずっと続けて行くのか?と考えた時に、一度休んで気持ちを切り替えてみたいと思うようになった。

そしてついに、人生の大きな決断ランキング1位になった思い切りをする。

題して「人生の夏休み」。

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わたしは今アイルランドにワーキングホリデーの制度を利用して来ている。

よく勘違いされがちなのだが、この制度は協定を結んだ国から特殊なVISA(決められた期間内での就業、就学、休暇が可能)を貰えるだけで、お金の支援は一切ない。

わたしは日本にいる準備の段階で、片道航空券、一年間の保険代、税金…もろもろ含めると既に70万円は支払っている。

これにプラスして現地での家賃(地区によるが東京の下町エリアだと1LDKに住める価格でシェアハウスもざら)・生活費…となると、むしろ結構なお金が掛かる。

「今は仕事を探してはいない。」

ーそう答えると、「気楽で良いね」「これからもずっと探さないの?」と、軽い気持ちで言っているのだろうけどチクりと心に刺さることがある。

確かに逆の立場だったら、わたしも同じ質問をするかもしれない。それくらい日々の生活費は悩みの種なのだ。

去年仕事を辞めた後にも似たようなことを言われたけれど、働かないことが悪なのか?と思う程に人を変えて繰り返される会話。

でも日本でいるのと違うのは、良くも悪くも他人に関心を必要以上に持たない人も多くて、ネチネチとエンドレスに心が摩耗することはない。

そして何より、"自分で自分の人生を生きている"と感じることが出来ている。

英語もろくすっぽ出来ない中、初めての訪れた国で多国籍の人達と一緒に過ごすこと。
学校に通い、家を決めて引っ越し、スーパーで食材を買い自炊。洗濯機の使い方すら分からないなんて笑っちゃうけれど、予定調和の中で暮らしていた日本では味わえない”新しいことの連続”

1カ月が経ち、生活にも慣れ始め、心がとても穏やかになってきていることを感じる。

費用を考えれば旅行をする方が抑えられるかもしれない。でもわたしのやりたかったのは”海外に旅行でなく暮らすこと”ただそれだけなのだ。

もちろん日本に居る家族や友達が恋しくなることもあるし、時々原因不明不安感に襲われることもある。

でもそんな全ての体験が、これからの英気となることることを願っている。

人生の夏休みはまだ始まったばかりなのだ。


編集:鈴きの彩子

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