見出し画像

灯油タンクやエコキュートの傾き、沈下修正の方法

地震による影響で建物に被害はなくとも、周りの地面が下がったり隆起してエアコンの室外機や灯油のタンク、エコキュートが傾いたり、沈下してしまったという依頼がいくつかありました。

実際に修正の方法を考えて、実践してみたので一つの参考例としてまとめてみました。

必ずしもこれが正解という訳ではありませんが、選択肢の一つとして捉えて頂ければ。

正直、私も初めて行う工事ですし、曳家岡本さんからの教えがなければこの方法は思いついたとしても行わなかったと思います。

被災者の方はもちろん、同業者でも直し方に困っていると思いますので、是非参考にしてみて下さい。


傾き修正の工事案


見づらいかもしれませんが、当初私が考えたやり方はこんな感じです。

オイルジャッキを用いたジャッキアップ+簡易的な耐圧盤工法、といった所でしょうか。

沈下修正のポイントは「重量を増さない」

計画する上で気を付けた事は「なるべく重くしない」という事です。

例えば、同じようにジャッキアップをしたとして最後に砂を埋め戻す代わりに

「頑丈にしたいから全部コンクリートで固めてしまおう!」

つい、そんな風に考えがちだと思うんですが、これは誤りだという事が分かりました。

何故なら、そもそも重いから沈下してしまったのに、更にコンクリートを足して重量を増してしまっては、また沈下するリスクを高めてしまう事にもなりかねないからです。

言われれば確かに、と理解できるのですが、同業者でも同じようにコンクリート等で固めた方が頑丈になる、と思って工事をしてしまう方も多いのではないでしょうか。

という事で、最低限のコンクリート柱による支えを作り、砂で埋め戻すだけの工事としました。

実際の工事の模様

では、上記の計画に沿って工事を行ってみた結果です。

計画ではエコキュートという電気式の給湯器になっていますが、実際工事を行ったのは灯油タンクと室外機が乗っている土間コンクリートでした。

条件はほぼ一緒だったので、同様の工事でも可能と考えました。

当初の状態

灯油タンクと大型の室外機が乗っている土間コンクリートごと、傾いてしまいました。

建物側は基礎に乗っているので沈下せず片方に傾いてしまうのは、建物に被害がない場合に同様のケースが多いと思います。

傾きは161/1000㎜

もちろん、全て取り外して傾いた土間コンクリートも壊し、整地、再び新しく土間コンクリートを作って再び設置する。という工事も可能ですが、かなりの労力と時間がかかります。

という事は必然的に費用も高くなってしまうという事です。

ジャッキアップの前に、灯油タンクを少しでも軽くするためにポリタンクをいくつか持参して、灯油を抜きました。

エコキュートの場合も満タン状態は危険なので、前日の夜の沸き増しはストップするか、工事の前にタンク内のお湯は出してなるべく軽量化を図った方が良いと思います。

想定通りにはいかないもので

最初は家と反対側に2台のジャッキを設置して上げてみましたが、上手く行きませんでした。

厳密に言うと、図の土間コンクリート左上角は建物の基礎に乗っていて、右上角は基礎から落ちてしまっていたので、力をかけても均等に上がらなかったんですね。

そこで、家側の両端にもジャッキを設置して上げてみました。

こうすることで、加減をしながら水平に戻す事ができ、更に完全に土間コンクリートが浮いた状態なので、横から押したら建物との間に出来た隙間分も戻す事ができ、元の通りに建物の基礎の上に乗せる事ができました。

という事で家側は沈下する可能性がなくなったので、計画通り家と反対側にコンクリート支柱を3箇所設置して土間コンクリートを支持するようにしました。

その他の工事も必要

また、ジャッキアップの前には配管等の切り離しも必要になります。

今回は消雪用のポンプも設置してあったので、配管を掘り起こし、一度ポンプから外しました。

配管を掘りおこし、外した状態にしてから上げる

上げた後は高さが変わってしまうので、足りない分の配管は繋ぎ直す必要が出てきます。

今回は簡単な配管だったので我々で行えましたが、エコキュート等の場合は設備屋さんにも来てもらった方が良いでしょう。

沈下量にもよりますが、恐らく配管を延長して繋ぎ直すという工程も必要になります。

灯油タンクからボイラーまでの配管もありましたが、こちらは掘り起こしてあげて無理な力がかからないようにするだけで済みました。

なるべく手に入りやすい材料で、低コスト化

コンクリートの支柱は空中に作れませんので、配管として使う塩ビ管を型枠として利用しました。支柱の下には力を受けるためにコンクリート平板を設置します。どちらもホームセンターで買える物です。

今回は径が125㎜φの物を使いましたが、軽ければ100㎜、心配であれば150㎜と条件に合わせて選ばれるといいでしょう。

この塩ビ丸柱の中にコンクリートを入れるので、写真の様に半がかりにします。横に立てた木はコンクリートが固まるまでの仮支持として入れました。

コンクリートもホームセンターで袋で売っている物で、現場で水と混ぜるだけでいい簡易的な物を使用しました。

最後に砂を埋め戻し、完了です。

工期は1日

私と大工さんの二人で行い、私は途中抜けたりしながらもおよそ1日で工事完了できました。

今回初めての工事という事もあり、特に最初は戸惑いながらも作業をしたのですが、それでも1日で完了する事ができましたので工事費はかなり下げられたのではないかと考えています。

エコキュートの場合は、朝に一度設備屋さんも来てもらい配管の取り外し→ジャッキアップ→午後に設備屋さんに来てもらい再接続、という流れになります。

これなら日中だけお湯が使えませんが、なんとか夜にはお湯が使えるようになりそうです。

もちろん敷地や設置してある条件にもよりますが、一般的なエコキュートであれば10万円以下での工事が可能です。

元通りに直せるが、地盤の改良はできない

最後に大切な事が1点、この工事は傾きや沈下を直す事は可能ですが

地盤そのものを補強する事はできません

=再び地震で傾きや沈下が起こる可能性は高いです

何故なら、一度液状化が起こったり沈下、隆起した軟弱地盤というのは、同じような現象が起こる可能性が極めて高いからです。

それを防ぐには地盤改良を行うしかありませんが、建物ならまだしも今回の様な小規模な工作物の場合に地盤改良を行うのは、費用面で現実的とは言えません。

こんな言い方になって本当に申し訳ないのですが、軟弱地盤に暮らす事を選んだ時点で、長期的なリスクが必ず生まれてしまう、という事になります。

今回のケースに限らず、どう直していいのか分からない。いくら位かかるか分からない。直したはいいけど、また地震が来た時にはどうなるのか。

色んな心配事が多く、判断に苦しんでいる方も多いと思います。

まずはお気軽にご相談下さいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?