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散文

dear. vernon

いいことばかりの人生じゃなかったけど、今まで経験したことどれ一つが欠けてもあなたを好きにはならなかったから、全てが良かったことだと思えたよ


寂しがりやのバーノンさん
FだったのにTになったのは生存戦略ですか? そのほうが楽だものね。いろんな感情-自分のものではない感情に引きずられなくて済むから。

「僕は、小さい頃は僕ではない人になろうと努力していたんですが、確かに僕の性格には向いていませんでした」

十代の頃のあなたの、弧を描く笑い目を"怖い""気持ち悪い"と思ったことは決して韓国語・英語に訳されては困りますが、事実です。そしてそれは今のあなたが本当の笑顔で笑っているということ。
FからTになるということは、ずっとTであったということとは違います。あなたは、より生きやすく生きてゆくために、他人の感情との間に壁をこさえた。(のでしょうか)
しかしそれはすなわちあなたの口をあなた自身の手で塞ぐことでもあった(きっと)

写真を撮られる時に笑わなくなったのはいつ、なぜですか?

それでもあなたは寂しがりや
ふつうの人が当たり前に得られるものを少しずつぼろぼろともらえずに育ってきたからいつも渇いている。
あなたが人を求めることは"可愛い"でしょうか?
あなたが自分の口からその手をはずして本心から笑った時、確かにその顔は本当だからこそ純粋であどけないだろう。しかしその時あなたが、本当の子どものように何のためらいもなく当然の権利としてそれを行使しているはずがないのだ。

もっと寂しいと言えばいい。もっと話を聞いてほしいと言えばいい。もっとここにい続けてほしいと言えばいい。
懇願するあどけない目に、"可愛い"で片付けられない切実さを見出す相手がいったいどれだけいるのか。
だからあなたはかわりに歌を歌った、あなた自身は何も思っていないふりをして。
あなたはまた、人前で純粋にあどけなくふるまうことにほとんど20年ぶりに成功しつつある。ただただ"可愛い"と愛されることも、他人同士なら仕方がなく、それだってきっと美しいことだ。
あなたが一切他人から奪われないように、奪わない人類しか存在しなければいいのに。そんな世界なら、君は好きなだけ笑えて、好きなだけ話せて、好きなだけ人を愛せるのだ。

それでも君は飽きるほど奪われ、幾億の痛みを背負って歩いてきたからこそ今の君である。他の誰にも醸せない君だけの命の輝き。内側から光るもの。
私は命からがら、山を登って登って頂上に出て、君を見つけた。君もまた君の山道を登ってきたのだ。野生的で、思慮深いまなざし。一人で闘ってきた人の瞳。
これから私たちは隣同士の道を登る。交わらないけれど、当分は、同じ方向へ登るつもりだ。君は私よりもうんと険しい道を登ってきて鼻がきくから、君がこっちだと言うのなら私にとってもそれはきっと正しい。もし間違えていても、君が本気なら私は騙されよう。

私は君を独りにしないためにここにいる
あるいは君が私を独りにしないからここにいる。
君が人を求めるから、私は一人の人としてあなたの前にいたい。
あなたと会って手を振り交わしたいし、できれば生きた言葉を伝えたいし、よかったら覚えてほしい。あなたが真っ暗闇の中で手を伸ばした時に、すぐに触れられる人肌でありたいから。
それは回り回って暗闇の中で手を伸ばす私の手を私自身が握ることであり、あなたを信じるということは、私の手をきっとあなたが握ってくれると信じているということだ。

それが私とあなたの誠実。

言葉を発することなく、表情を動かすことなく、正直さを消費されることなく、あなたの切実さを、いや、まだ私だけが知っていればいい まだ 今夜は まだ



ムラのない殻からたまに剥き出す感情が、こわくなるほどやらかいアイドル
を好きになってしまった 私は


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