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CTOに会う | WAmazing 舘野祐一さん「成長する観光産業をはてな・クックパッドで培ったバランス力でリアルとインターネットを融合する面白さ」

こんにちは、SOLMU PdM吉村です。
今回は、株式会社WAmazing 取締役CTO 舘野祐一さんにインタビューをさせていただきました。ちなみに舘野さんには、弊社で技術的なアドバイスもしていただいております。

ーー御社の事業内容を教えてください。

海外旅行の際、その国の観光地や楽しみ方を調べるのは大変です。今後増える訪日人観光客も同様であり、日本の良いところをインターネットを通して知ってもらうサービスを提供している会社です。そのために、日本の『和』とAmazingを掛け合わせてWAmazingという社名になっています。

ーー社内での役割を教えてください。

今は、CTO業務は3割ほどで、7割は中国方面のWAmazingの展開が主な業務です。2018年の6月に中国推進部という部署を立ち上げ、同時に中国法人も設立しました。私は、中国推進部の部長と中国法人の社長を担当しています。まだまだ、WAmazingとしてはゼロイチのフェーズであり、エンジニアとして特定のことだけを行うのではなく、技術をうまく他の所に広げているところです。
外国人観光客の増加に伴い、中国の観光客に向けてもWAmazingを広めていくために、中国事業を拡大する責任者も務めています。

スタートアップだと、タイミングによって自分のロールはガラッと変わります。CTOに関わる部分では、中国のWeChat向けのミニプログラム(注・アプリ内で動作するアプリケーション)を2本リリースしているのですが、そのうち一つは自分がメインでプログラミングを行なっています。未知の領域の技術選択を行う場合、現場のエンジニアは目の前のことで忙しかったりするので、自らリサーチを行い、社内のエンジニアのリソースで行けそうか、あるいは異なる領域の人を採用すべきなのかなど判断しています。

コーディング・エンジニアリングマネジメントや組織マネジメント・採用など何が組織に必要かを、その時々で判断して実行することで、役割が異なってきています。

ーー技術のキャッチアップはどのようにされていますか?

自分自身でキャッチアップし続けるより、専門的な知識をもつ人からのインプットやアドバイスを受けることが多いです。
弊社ではメインのサーバーサイド開発言語として、Ruby on RailsとScalaを選定しているのですが、Scalaに対して知見のあるエンジニアがいるので、こういう時の設計はRubyよりScalaでこう書くといい設計ができますよね、と自分より詳しいメンバーからの話を受けて、他のサービス設計へ言語特性やドメインモデルの知識を反映させていくことが多いですね。
現在は、10名くらいのエンジニア組織となっています。私自身は、1on1でエンジニアが直面している課題や技術に対する雑談から吸収できる所もありますね。

ーーエンジニアになったきっかけはありますか。

大学3、4年生くらいからプログラミングを始めています。当時はインターネットの黎明期であり、今のように産業として発展していませんでした。
自分が作ったWebのソフトウェアを色んな人が使ってくれるという体験はとても嬉しかったです。数千人のユーザーが使ってくれて、このサービスは便利だと声が届きます。そうするとソフトウェア開発が楽しいと感じ始め、プログラミングの面白さにのめり込んでいきます。

この話はあまり参考にして欲しくないのですが、実は私は新卒でネットワークエンジニアとして入社した会社を一ヶ月ほどで辞めています。プログラミングを楽しいと思えてきたのが、内定が出た後でした。その会社が悪いという訳では全く無いのですが、ネットワーク構築を主とする会社であり、プログラマーとしてやっていきたいと若気の至りもあり、行動に移しました。

面白いサービスを沢山出しており、自分もサービス開発に関われたらということで、株式会社はてなにエンジニアとして入社します。そこで先輩方から教えていただき、エンジニアとして様々な経験を積ませていただきました。
はてなには4年半ほど在籍し、その後、クックパッドではCTOとして5年半ほど在籍していました。

ーーWAmazingへジョインするきっかけは何でしょうか?

クックパッドを辞めたあと、ゆっくりしつつ自分の好きなことをやって過ごそうと思い、何社か手伝っていました。そのうちの一社がWAmazingです。創業前から代表の加藤の事業内容について聞いていて、事業をやるには自社エンジニアで内製で開発しながら成長させたいという相談を受けていました。創業時、メンバーが私以外に5人いて、創業前の仕込みの仕事を何ヶ月間かしていました。その中でジョインしたきっかけは主に三つあります。

1つ目は、WAmazingが取り組む観光産業の成長を確信したことです。外国人観光客の伸び率は、年間15%ずつ伸びていて、人口が減少する日本の中で珍しい成長率を見せる産業だと思っています。2020年にオリンピックもありますし、政府も2030年に6000万人の外国人観光客誘致を目指しています。成長産業にインターネットをうまく掛け合わせて、日本での観光体験をより良いものにしていきたいですし、WAmazingだと両方できるということで、日本の未来にコミットメントできる所に魅力を感じました。
デジタルで完結するインターネット事業に対し、観光産業は人が情報を目にして観光して戻ってくる一連の体験の流れの中にリアルとの接点が沢山あり、ソフトウェアだけは完結しません。まずは、ソフトウェアだけで完結できる産業が先行し、その後リアルとデジタルを結びつけるサービスが今、生まれていると感じています。
また、リアルな産業を展開する事業者と一緒になって課題解決もしていっていますす。ソフトウェアだったら問題があればバグを修正すればいいだけの所を、リアルではバグ修正だけでは済まないところがあり、事業者と一緒に解決する必要があります。だからこそ、そこを良くして行くことで、より良い世界がつくれるのではと考えています。

2つ目は、創業メンバーと数ヶ月仕事をしてみて、このメンバーだと仕事をやりきることができる、この人たちと一緒に仕事をしてみたいと感じたことです。
創業メンバーは、良くも悪くも目指したい世界を実現するためには、泥臭いこともやりきります。私自身は、ソフトウェアで効率化をしていきたいというエンジニアマインドを持っていますが、創業メンバーは必要とあれば、非効率でも人力で回すべき、このタイミングでは成し遂げることを優先する姿勢でした。私だったらコストに見合わないのでしないという判断を下していたかもしれません。そういったメンバーの実行力やマインドとソフトウェアによる効率化がマッチすると面白いことが起きるのではないかと思いました。
代表の加藤はリクルートでの観光産業のドメイン知識が豊富ですし、ビズデブやプロダクトマネジメントの経験者もいました。
彼ら事業サイドがエンジニアリングサイドに歩み寄るなど、組織のバランスが上手く取れていて、フェーズごとに組織のあり方を調整できています。
弊社は、平均年齢が高めのベンチャーであり、いろんな視点で物事を体験してきているメンバーです。ソフトウェアだけだと若い世代だけの会社で乗り越えることができますが、リアルとの接点が多くなってくると事業者との調整も必要になってきます。そういった観点からも、メンバーの経験値は高いので面白いです。

最後は、私自身ゼロイチの事業を成功させた経験がないことです。はてなは私がジョインした時にいくつもサービスが立ち上がっていましたし、クックパッドも上場した後であり、しっかり収益も上がっていました。
ゼロをイチにするというアーリーフェーズで事業立ち上げにコミットメントしてみたかったという理由があります。やってみて、よく言われる生みの苦しみを感じますね。
現在生き残っているサービスはゼロイチのフェーズを乗り越えたはずです。事業は回り出し、収益も上がっていくわけです。そういった会社に後から入るとゼロイチのフェーズはわかりません。自分で経験してみると、いろんな変数がある中どう課題をクリアしていくかなど、考えることが山ほどありますし、施策が数値として出ない・サービスが使われないということがあると、がっかりもします。他にもありとあらゆる困難がありますね。

ーービジネスサイドとエンジニアリングのコミュニケーションのギャップをどう埋めていましたか?

お互いのことを知ることが大事だと思います。エンジニアからすると営業や事業開発の仕事内容がわからない。わからないので、発言の意図も汲み取れず、エンジニアリングの対案も作れないことになります。会社に属している以上、目指すべきところは一緒のはずなので、歩み寄っていくことで組織の立ち振る舞いがうまくいくようになると思います。
はてなはエンジニアが多く、ソフトウェアに強い会社でしたが、事業サイドもきちんと歩み寄ってくれていました。それを作ることでどんなことがいいのかなどを説明をするとしっかり話を聞いてくれて、ソフトウェアがどう言ったことを考えて働いているのか、理解してもらえ、方向性をすり合わせることができました。

ーー組織作りの工夫はありますか?

私が出張などで中国に1ヶ月のうち1週間あるいはそれ以上いるという状況の中、自分がいない時に問題なく業務が遂行されていくか、自分で考え自分で結論を出すことが必要です。解決能力を身につけて、自立運営する健全な組織を目指し、1on1のように間接的に解決する方法を考えているところです。

ーーエンジニア採用時に大事にしていることはありますか?

WAmazingにジョインしたらどう活躍するかを見ています。昔は、技術的なスキルを重視し、水準をクリアしてれば採用でした。技術的なキャリアパスのレールがしっかりしている、同僚が優秀だ、等々、安定した会社で働ける所で優秀なエンジニアは働きたいと思う方も多いと思います。私自身も昔はそういう企業で働くことを考えていました。
一方、ゼロイチフェーズのWAmazingではまだまだ採用力が弱い状態です。WAmazingのビジネスモデルはBtoBtoCなので、観光事業者と話しながら要件定義を行います。必要になるのは、純粋なプログラミング技術でなく、相手の背景を考えて、WAmazingでシステムを実装するにはどうすれば良いのか考えをできるかどうか、技術だけでなく様々な考え方を持っているか、一人一人どういうタイプのエンジニアかなと考えています。この人だったらWAmazingに合うはずで、スキルを伸ばして成長してくれるはず、など本人の将来のパスまで考えるようにしていますね。
以前までは技術力主体で見ていましたが、現在は別視点での活躍ポイントも見るようにしています。

ーー外国籍スタッフを含めた組織運営について苦労されていることはありますか?

苦労していることはほとんどありません。2018年の1月頃は外国人のスタッフが1名だったのが、現在では15名になっています。私たちがターゲットにしているのが、外国人旅行者の方々であり、その中でも大半をしめる中華圏の人がスタッフにいないというのは、ユーザーを理解する上でギャップが生じてしまいます。現在積極採用していて、組織運営に挑戦中というフェーズです。

ーー中国進出について苦労する点を教えてください。

中国の事業展開は特にITビジネスにおいて、インターネット接続に制限がありますし、法的にも日本企業がビジネスを展開することが難しい側面もあります。
中国の国自体が物事を素早く決めて行く中、14億人の人口などもあり広がるときは一気に広がったりと、中国国内の様々なスピードが速いと感じます。

中国について深い理解と素早い決断が必要と感じています。中国の方に事業の展開について聞くと、人によって真逆のことを言うことがあります。背景には、様々な物事がものすごい速度で変わっていくので、その人の過去その時点の時間軸では正解だったことも、一年後には真逆になっている、などが発生します。様々なコンテキストを知りつつ、WAmazingにとって一番何が良いかを判断し、成功に導くための決定を行なっています。

また、グレートファイアウォールについては、技術的に問題ない形でどう中国国内に展開するか、国内で広く利用されているWeChatミニプログラムの開発方法など、日本企業で展開している会社は少なく、そのため情報も少ない状態です。
日本と中国の事業展開に詳しい弁護士や社内の中国人、中国現地でヒアリングをして情報を集めているという状況ですね。

ーー現在、興味のあるサービスはありますか?

中国のインターネットの仕組みが尖っていて面白いです。中国では基本的に、性悪説で成り立っています。例えば、色々なサービスが信用スコアを持っています。大手のアリペイが持っている芝麻信用では、一定以上のスコアだとレンタルをする際のデポジットに無料といった特典が得られますが、料金未払いなどの良くない行動を取ると信用スコアが下がる仕組みになっています。他国だったら、人にスコアをつけ視覚化されることが気持ち悪いとなってしまい、成り立たない国も多いのでは無いでしょうか。このように中国では、サービスのベクトルが他国と違った成り立ちなのが面白いなと思っています。台頭してきている中国のインターネットサービスは興味深いです。

ーー最後に告知があれば教えてください

ありきたりな告知ですいませんが、WAmazingでは、「毎日を楽しみ尽くす、Amazingな人生に。」をビジョンに、観光産業xITで世の中をよくしていくことに興味がある、エンジニア、マネージャー、デザイナー等々、絶賛募集しております。また、中国関連の技術も、直接的に・もしくは間接的に知る機会も多くあると思います。もし興味がありましたら、よろしくお願いします(笑)。



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