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スイミングペンシルの秘密:グライドベイト開発記


昨シーズンのテーマは「操作する釣り」。ちょうどハンドメイドのルアービルディングを再開したので、そのあたりの釣りの傾向を絡めてお話したいと思う。

シーバスフィッシングと言えば、河口やなんかで潮目にシンキングペンシルやミノーをデッドスローで流して、「ツン」ってバイトを拾う様な感じが第一印象に浮かぶもんだが、やりこんでみるとロッドワークで積極的にルアーを操作しても鱸は意外と釣れるもので、むしろ操作して「仕掛けて」行かないと獲れない魚が思ったよりも多いという事を再認識できたのは大きな収穫だった。

特に流れの緩いエリアはその傾向が強くて、普通にルアー流したり巻いたりしても、ただ泳いでるだけで「食う動き」になっていないことも多い。

この「食う動き」が重要なポイントで、一般的なドリフトメソッドはルアーが流れに乗ってU字の頂点に差し掛かかり動きがチドるのを利用して食わせていく方法。 

ドリフトメソッドも実はそういう意味では「操作する釣り」なのだが、それをいかにオートマチックに再現するかで各釣具メーカーは鎬を削っている。

むしろ昨今はルアーのオートマ性能が強い為、一連のアプローチの中のどの要素が魚が食う為の「要件」であるのかが少し見えずらい。ダウンに入った時にウォブリングした方が良いのか、フリーズした方が良いのか、それとも着水からただ流れるだけが良いのか。

要は操作する釣りとは、オープンエリアでそこそこ流れのあるポイントがあって、そこで普段やっているオートマチックなヒットパターンをロッドワークやリーリングによって人為的に入力して再現する釣りだ。これの面白い所は普通にやったら釣れない魚が釣れるコト。明確なピンに正確にキャストして正確に操作して、見極めたバイトゾーンで「そこにいるであろう一匹」を確実に食わせる釣り。「疑似餌」つまり餌釣りの延長としてのルアーゲームではなくアングラーに主体性があるゲームとしての釣り。惹きつけて、食わせる。これが本来のルアーゲームの面白さだと思う。

実利の部分で言えば、この中心的な脈略が掴めればオープンエリアで流れが無いような状況でも魚が釣れるようになり、釣りに行く時も潮なんかのタイミングに融通が効くようになるし、何よりキャッチできる魚の数は今よりもっと多くなるハズだ。条件が揃うとビッグベイトが非常に強い状況があるのも2ozクラス程度までに限った話で言えばこの要素は大きく関係していると思う。つまり食う動きを入力できるか否か。

オルタナティブな価値を掲げるとすれば本来のルアーゲームの方向性に立ち戻ることが大事だと思う。そしてそれが1番誰にとっても得だし、良い事だと思う。だから最近そういう系のルアーも少しずつ脚光を浴びているのは嬉しくて、もしかしたらシーバスルアーのメインストリームは分水嶺に差し掛かりつつあるのかもしれない。

閑話休題

北上川というのは鴇波洗堰から旧北上川へ分流し、地図上では追波川の方が本流のように見えるので水量が多く流れているイメージを持ちがちだが北上大堰が開放されてなければ、水量のかなりの部分は旧北上川へ流れている。歴史的には旧北上川が本流で工事によって追波川へと分岐するよう作られた半人造の川で、旧北上川に比べて非常に緩慢な流れが特徴的だ。

元々ルアーでのシーバス釣りを覚えたのはどちらかといえば旧北上川のような流れのタイプの川で、護岸され切っておらず日々地形が変わる様なトコロだったので明確な変化を意識しなければならない教科書のようなポイントだった。追波川へ通うようになってから凄くクセの強い川だと痛感したのを今でも覚えていて、半年くらいどこに魚がいるのか全くわからなかった。



通ってみると、必要なルアーの特性が以前通っていたような中規模河川とは違い、比較的大きいルアーの方が反応が良い。今となって考えれば当たり前だけどそれは単に飛距離の問題もあるが、流れが弱いことも相まってドリフトさせるにはルアーの側面に当たる流れの面積が広いほど、漂わせたときに「食わせの動き」が出やすかったからだ。だからもちろん流れが飛んでる場所ではいつもの釣り方で十分釣れたし、そういう意味では旧北の方は一定レンジを正確に操作しやすい小粒なルアーの方がむしろ良かったりもした。

ただでさえ緩慢で、川の流れがルアーを演出してくれないとなるとどうにか自分で演出するしか無いわけで、潮が緩いタイミングにも魚を釣る為にスイミングペンシルをただ巻き+ジャークで食わせるメソッドをよくやった。ミノーでやるには少し慣れがいる(釣れるが、状況を選ぶ)がスイミングペンシルをラインべたつけ気味にして流しながら巻いてきて、数回ほどアクセントでジャークを入れると、これがよく釣れた。誰でも再現性があるので是非試してみてほしい。

ハイスタ120F。ジャークというよりトゥイッチ。4-5回叩いて休符からの浮上で食わせる。中層を意識しているとかなり反応が取れるはず。基本的にはミノーでもスイミングペンシルでも考え方は同じで「流れが走れば流す、止まれば操作する」ミノーやスミングペンシルは流れが適当なら操作しても大型も反応しやすい。ミノーに限っては逆に流れているとイマイチ。

一時期デイゲームにハマっていたときにルアーの後ろを着いてくるが食わない魚が結構多い事に気が付いて、そこでナイトゲームのブラインドの釣りでも、流れが効いてる間は反応があるのに緩んだ瞬間食わなくなるところを、おおよそ食うであろう箇所をジャークで味付けしてやると、コレがなかなか釣れる。イメージとしては後ろからルアーに着いてきている魚に、ルアーをダートさせてスイッチ入れて食わせるような感じ。実はこのリアクションの釣りは日中のミノーイングに応用しても十分釣れるメソッドなので是非チャレンジしてみてほしい。

ブローウィン140Sでも似たような事ができる。ジャーク一辺倒というより流しながらアクセント付けて弾くようにしても使える。ただ釣りの展開速度は遅くなる。


そこで昨シーズンはもう少し近距離で、完全なピンに着いた魚をいかに食わせるかという部分にこだわって釣りをしてみた。もちろん中下流オープンエリアのように数やサイズこそ恵まれている訳ではないが、非常に楽しい釣りになった。

ラパラシャッドラップエリート。シャッド系でもこういうピン狙いで生きる状況があって、水深がある程度深くて流れが非常に早い場所だとルアーが漂う時間が短くなりすぎるので、それを解消するためにアップからジャークしてボトムを叩くと反応を取りやすい。これもルアーが停止した直後しか反応しない。

小場所でのピンは大体の場合やる気はあるが数はそんなにいない事が多くて、しかもプレッシャーに対して非常に弱い。日中はとくにそうだけど魚にルアーを見せられるのは数回だけで、それ以上は何をやっても反応しなくなりやすい。そのなかでより確実に食わせるためには「なるべく最短で、その場所、そのタイミングにおける正解」のアプローチをしなければいけない。ルアーを一切動かさず流すのか、素早く引いて横切らせるのか、ジャークするのか、レンジ、サイズ感は?これが西部劇のガンマンの撃ち合いのようで凄く面白い。正解なら一発で食うが、外すと追尾したりミスバイトだけで終わってしまう。そして次は無い。

ランドラゴ120F。流れに着いていてボイルしているときはこの手のペンシルをトゥイッチすると食わせやすい。ベイトに完全にベッタリなので泳ぎすぎるルアーでは魚は散る。このとき一つのピンから連続15ヒット程した。


原則的には流れの速さと魚の活性がこの釣りのポイントで、速度が遅く、餌を食うモードではあるがボイルにまでは湧かないくらいの状況だと積極的にルアーを操作した方がよく、逆に速度が早くボイルしている状況ではルアーは動かさない方が良い。そしてレンジもシビアだ。ただしスイミングペンシルなら操作したほうが釣れる。ミノー類ではたぶん水を動かしすぎるのが良くないんだと思う。

川は流速の早い瀬とプールの繰り返し構造をしていて基本的にはプールになっている場のチャンネル沿や葦際なんかはS字のスイミングペンシルが非常によく効く。サーフェイスコントローラー118が特にそう。瀬でも効くが、どちらかというとBMC120のようなミノーライクな方が釣りやすい。

S字はスライド幅が大きい程流されやすいし、激ダウンになると操作できないから速度帯にもよるが置いときやすいのはローリング系。

サーフェイスコントローラー118。とにかくバスが釣れる。面白いのがバスの着いてる葦際から最寄りのチャンネル沿にはシーバスが潜んでいる確率が高い。


S字のスイミングペンシルは中下流のオープンエリアでも応用して使えるのでオススメ。止水のポイントではこの手のルアーが非常に良く効く。今は廃盤だけどスイッチヒッター105Fとか。現行だとサーフェイスコントローラー118。

流れが全くない場所で使う際は常に操作し続けるのがコツで、サーフェイスに関しては移動ウェイトがバランサーになるので着水からドッグウォークさせるとトッププラグになる。かちゃかちゃかちゃ…ってドッグウォークさせて魅せて惹きつけてからのダイブ+グライドで左右に弾くと…ゴン!居れば大体食わせられる。流れが早ければ流しながらたまにトゥイッチで弾くのが1番ハマるがあまりに流れが速すぎるのは不得意。

サーフェイスコントローラー118で出た1本。流れのある場所ではこのサイズはルアーを丁寧にドリフトで流さないとほとんど食わないが、止水状態だと操作でも食わせられる。

S字系のアドバンテージはいくつかあるが、何よりしっかり動かしても大型個体が反応しやすい所だと思う。シャッドや一部のミノー系も同じような使い方ができるが小場所ではどうにもサイズが落ちがちだ。

一口にスイミングペンシルとい言ってもアクションやレンジによってその性格はほとんど別のルアーと言っていい。この面白さがクセになって昨シーズンは何種類もスイミングペンシルを作ってしまった。サブサーフェイス+流速特化+水切り仕様の組み合わせは本当に魔境で「あるポイントではとんでもなく釣れるが、他の場所では全く使えない」超ピーキールアーになる。

サブサーフェイス+高速ローリングの組み合わせ。

BMC120のテールスイングを全部キャンセルしてローリングしかしないようにしたらどうなるのか、という疑問で作ったルアー。というのもBMCで追尾する魚をよく見るが、なかなか食わないのでどの要素が見切られる原因か考えていて思いついた。たぶんカラー要素もかなり大きいけど川幅的に泳ぎ出しのラグとかアクション性質も関係していると思う。バルサボディで球形ウェイトを下腹部ギリギリで入れた高速ローリング仕様。


使ってみて意外な事実に気がついた。上記のスイム動画を見てみると一定の角度になると全く泳がず水面からラインアイを出して滑ってきて、また一定の流れを受けると潜って泳ぎ出す。そしてそれ以上絶対に潜らない。注目して頂きたいのは水面を滑っているときはほとんど動いていないトコロ。瀬で使うためにハイフロートにしたので泳ぎ切らせる(滑らないようにする)ために追加ウェイトを仕込むか迷ったが、この超極端なスイッチのオンオフがとんでもないくらい瀬の流れに着いた魚に効く。

ルアーのカラーを変えて、微調整したモデル。

この水面からアイを完全に出した状態でのI字トップ的な動線と流れを掴んだ瞬間に高速でローリングし出す「動きの切り替え」が驚くほど釣れる。おそらく頭を出した状態で通ってくるのがプレッシャー減に役立っているんだとは思うが、I字が爆速の瀬で効くのは意外な展開だった。

マイクロベイトパターンなんかで魚がセレクティブになってるときにこの手合いがいいのは知っていたけど、大体の場合小中規模河川の汽水域の話な訳で。この全く反する条件×要素の組み合わせは面白かった。

スイミングペンシルは流すかジャークで入力するか、ハッキリ役割と使い方が明確なのがとても良い。ジャーキングで叩いてからのクラッチ切って流し、再びジャーク、流しの繰り返し。これが凄まじく釣れる。

ハイフロート設定なのでジャークしたときのレスポンスも非常によく、ほんの10センチ程潜ってローリングしながらの浮上も効果的。この爆速の瀬の中では釣った本数的にはハードプラグでトップクラスの釣果だった。130mm:21g:#3×2仕様でルアーサイズは120を超えると2フック仕様なら最低#3じゃないとフッキング率もキャッチ率も落ちてしまう。

BMCだと腹部から尻にかけてV字に面が切ってある。あれはテールをスイングさせて絶妙な8:2くらいのウォブンロールを出す為の工夫だと思う。ロールしかさせないようにウェイトは直線配置で尻は太く丸くしてテールスイングを全部キャンセルした。

瀬の中を引いたり、流したり、ジャーキングしたりかなり魚が取れたが、釣り全体のバランスで言えば一点特化型になった。もう一歩、大場所や中下流の普通の釣りにも応用できると満足いくルアーかなと。そしてウッドルアーは動きはピカイチでも必ず飛距離問題が付きまとうので、そこをクリアするには自重自体を重くして力技で飛ばすようにするのが動きを殺さず、バランスをキープするのにいい塩梅かなと。

リップ無しで自重を重くするとどうしてもウォブンロール系の動きになってしまうし、それだと微妙に痒いトコロに手が届かなくなる。ならばアクションタイプをS字に変えることにした。これなら流してよし、トゥイッチしてよし、操作の楽しみも生まれる。

スライストロング156F。超デッドスローのどんぶらこパターンでキャッチ。

普通にドリフトの釣りも出来るし、操作しても良いルアーは使ってて飽きない。そういう両義性がいいルアーの条件だと思う。アイディア次第でどういう使い方もできる。

瀬ほど早くはないけど全体的に流速が早く川幅が絞れている箇所だと、ボイルまで湧かないけども魚がステイしてて流れてくるものに極端に反応するときがある。これは普通のドリフトの釣りと違ってルアーは絶対に激しく泳いではいけない。いわゆる落鮎パターン的な流し方だが、別に落鮎と無関係でもそういうシチュエーションになっていることは結構ある。どんぶらこパターンっていうのか、本当にただ流すだけ。

アップクロスにキャストしてルアーが下流に頭を向けて流れていく。このときスラッグをある程度出してライン自体を手前じゃなくて下流に引っ張らせる。そうすると捕食射程に入ったときにボールをキャッチしようとするゴールキーパーのように流れていく動線上にポジショニングしてバイトするのが見えるときがある(数が多いと引き波を立てて泳いで行くのが確認できるはず)

この手の状況はルアーは泳ぎすぎないことと、14-15センチの棒状のものなのがマスト。12センチ台でそこそこ泳いでしまうと真っ先に1番小さい魚が食いにきてしまう。アイザーとかカゲロウではちょっと違うかな。(155ならいけると思う)


この釣り方はアップからダウンまで舐めるようにルアーを見せて激ダウンに入った時に食いやすいが、不思議な事にアップからクロスに差し掛かるタイミングは絶対に食わず、レンジ帯を下げて少し下を通せるビッグベイトやジグザグベイトのようなS字にすると上手側の魚も食ってくる事が多々ある。ところがダウンに入ると、それでは全く食わない。

中央がラパラ、トゥイッチンラップ12

ジグザグのような菱形のグライドベイトをしっかり操作してやるとアップへキャストしてからのアプローチでは食わせられる。慣性運動が一定のところで止まること。レンジが少し入ることが絶対条件で操作性を取るならば、固定重心の方が良い。

そこでラパラのトゥイッチンラップ12に目をつけた。確かに思った通り良い線をしていて、流速が極端に遅い場所でトゥイッチやデジ巻きをすると良い具合にスライドして、ただ引いてくるよりも高いアピール力で長い時間置いておくことができた。

しかし一方で課題もあって、流速が早い場合、菱形ボディだとサイドから受ける水の抵抗面積が大きすぎるため、バイトゾーンに長くステイさせておくことが非常に難しかった。だから菱形よりスティック状のボディーの方がより扱いやすい。

当初は桐材を使う予定だったが、SF-SS-SPの3タイプ作りたかったので後から調整できるようなるべく高い浮力のバルサにした。

ウェイト自体も鋳造することにした市販の丸型やナツメのような型だとウォブンロールのようになってしまうため、カマボコ型か円柱型が望ましく、市販では手に入らなかったためだ。

顔を彫刻しても良かったけど、実用面で無関係なうえ、段差にコート剤が溜まったり手間があまりにもかかって動き悪影響が出そうだと思い、ペイントにした。
SFタイプ34g SSタイプ40g
140mm:#2×2仕様で#3でもいい。

どこでも使えそうなSSタイプをメインに作った。タングステンの調節ウェイトでやや前傾にしてあるので足場が多少高くてもイケると思う。グライドハスラーみたいな感じかもしれない。使用感は流れ特化のトゥイッチンラップ。

34gのSFタイプはスライド幅がデカいのでサーフェスコントローラーやジグザグに近い印象だ。

もし使うなら極端に流れが早い場所か、極端に流れがトロい場所で試してほしい。中下流の下げ止まりなんかも良いと思う。ブレイクライン沿いに落としてチョンチョンしてると良い思いができるかもしれない。

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