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じいちゃん

"ちゃんと食べとるか"

私のじいちゃんの口癖だ
口を開くことも笑うことも少ない
怖いじいちゃん

ごく稀に話し出したと思うと
戦争の話や、苦労話
正直、10も聞くと聞き飽きてしまう


そんなじいちゃんが死んだ


クリスマスの夜連絡を受けた
夏頃に入院していたが、忙しくて会うことはできず
最近元気になってきたところだと聞いていた
きっと大丈夫だ 年末の帰省で会えるだろう
そう思っていた矢先だった

12月に入って体調を崩していたらしい
危篤状態が続いていた
家族で知らなかったのは自分だけだった
長男でもないし、頭も良くない
兄に比べたら出来は悪い方だと思っていたし
兄ほど気にかけてはもらえていないと思っていた
通夜、葬儀が終わり、親族で集まっている時

"あいつは元気にやっとるか、飯は食べとるか"

入院中、じいちゃんが何度も口にしていたと聞いた
遺品の中には兄ではなく私の写真がたくさん見つかったらしい
最期の最期まで見ていたそうだ

何度も怒られ、何度も泣かされた
そんな記憶しかなかった
けど、じいちゃんは私の前でよく笑っていたらしい

口を開くことも笑うことも少ない
怖いじいちゃん
けど、私は笑っている顔も知っていた
ばあちゃんですらあまり見たことが無かった
じいちゃんの笑った顔

ずっと見守られていた
失って気づくとはこのことだった
母が私に教えてくれた、私の口癖

"じいちゃん、一緒にご飯食べよう"

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