3.英雄

「はいっ!
じゃあ早速自己紹介を始めましょう‼︎」

相変わらずテンションの高くバブリーな声が教室に響き渡る。

「じゃあ、、、
私と名前が一緒の井藤さんから。」

講師の伊藤は一番左前、そして僕の隣に座っていた井藤という女の子から自己紹介を促していった。

「はい。
井藤真美です。
〜〜小学校に通ってます。
よろしくお願いします。」

「井藤さんありがとうね‼︎
じゃあそこから右にいきましょう!
次、本田君ね」



そこから足早に自己紹介が進んでいったのだった、、、



たった8人で。

そう、入塾生は8人で予想の50人を大きく裏切る形となったのだった。


全員の自己紹介が終わり、たった50人以上は座れるであろう大きな講義室に伊藤の声が響き渡った。

「はいっ!
皆様ありがとうございます‼︎
今日からこの8人で切磋琢磨して頂きます。
知っての通り内では去年は合格者0人でした。
なのでここの8人全員で合格して英雄となりましょうね‼︎
なんだか先生自信あるの。」

超絶なポジティブさを母親と重ねながら僕は不安の2文字が頭の中でより鮮明になっていった。

その日は簡単な自己紹介とオリエンテーション、今の実力を計るためのテストが行われて解散となった。


帰り道ずっと一人考え事をしてたのを覚えている。
「おいおい、大丈夫かよ。
一念発起してこの受験にかかってるのに最悪だな〜」
そんな事を考えながら、時にはひとり言を呟きながら。
ただ、不安と同時にどこか心地よさも感じていた。
テンションの高くポジティブな講師と、全員覇気のない塾生達(自分も含めて)でこれ以上落ちることは無いし上がるイメージしか無かった。
この時の上がるとは、受験に受かるとかテストの点数が上がるとかではなく、どこか感覚的に人生が良くなる気がしてたのだった。



ところが、実際に本格的に塾が始まってからは不安を感じる暇もない程勉強に付いて行けなかった。

余談だが、当時最初に頭を悩ませたのは最大公約数だった。
泣きながら父親に教えてもらっても理解出来ず出鼻を挫かれた。
そこからキッカケは忘れたがRADWIMPSの最大公約数という曲に出会い、今でもこの曲を聴くと小学6年生の勉強漬けを思い出す。笑



そう塾や受験の不安を考える暇がない程に僕の勉強は追いついてなかった。
だが不思議と分からない事を復習し続ける事に苦痛を感じる事はなく、
来る日も来る日も課題を解き続けた。

しかもなんと、塾に通い1ヶ月でテストで100点を取れたのだった。
その時にはもう塾への不信感などはなく、純粋に受験を追いかけていた。


暑さも目立ち始めた6月初旬講師の伊藤は講義終わりに全員に言った。

「7月の16日に模試をやります。
科目毎の点数や順位もでますのて現在の皆さんの立ち位置が分かる大切なテストです‼︎
皆んな頑張ろうね〜」

僕はこの時の人生初めての経験をした。
それは テストが楽しみ という感覚だった。
出来るようになった自分を試してみたいと思い模試が楽しみで仕方無かった。

そこからと言うもの講義の終盤では毎回小テストが行われた。
その小テストの算数で特に秀でていたのが柏木だ。
毎回の小テストで100点は当たり前で、算数に関しては悩んでるのを見た事も無かった。

「柏木君‼︎
ほんま凄いよね‼︎
算数得意なんやな〜」

「算数は元々好きだから。
問題の文章を頭でイメージすれば解きやすいよ‼︎」

今振り返ると小学生から文章を頭でイメージするというアドバイスを貰えるとは凄い事だなと思うがこの時は違和感なくこのアドバイスを受け取った。

ここから大分先の話にはなるが彼は東京大学工学部を現役合格する。
生まれながらの才能を感じた瞬間だった。



何はともあれ自分を含めた塾生8人が初めての模試に挑むのであった、、、


4話へつづく

#小説 #暇つぶし #自叙伝 #受験 #someoneslife #人生


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Yojiro

一人一人の人生に結構なドラマがあって、自分の人生の一部を半分フィクション半分ノンフィクションで記しています。誰か1人でも人生の活力やどこか自分に置き換えて懐かしさを感じで癒されて貰えれば幸いです。
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