見出し画像

反対したい? それとも、否定したい?  【悩みをなくす論理思考2.0 第1章 part2】

忙しい人のためのこの記事の結論:

「〜であるべき」の反対は「〜であるべきではない」、否定は「〜でもよい」。
自分が「〜であるべき」と思ったときには、
反対と否定のどちらの人々と対決したいのかを考えておくべき。

画像1



★★★★★
noteマガジン【悩みをなくす論理思考2.0】前回の記事の続きですが、前回の記事を読まなくても大丈夫です。


自分とは逆の意見について考えよう


前回の記事で、何かを「許せない」と思ってしまった時のストレスを回避する方法として、「自分がその状況を〝あるべき〟と思っているのはなぜなのか」を改めて考え直すことをご提案しました。


「〝あるべき〟と思っている」を考え直すにあたり、今回はその逆の意見である「〝あるべき〟だと思わない」について考えてみます。自分と異なる意見との比較によって、自分の意見の特徴を把握することができます。逆の意見について考えるのはとても大事です。


「逆の意見」には、「反対の意見」と「否定の意見」の2種類があります。「反対」と「否定」という言葉は同じ意味だと思われることも多いですが、厳密には意味が異なります。今回は、まず「反対」と「否定」という2つの言葉の意味の違いについてご説明し、その後に、「〝あるべき〟と思う 」という意見の「反対」と「否定」がどうなるのかを見ていきます。


「反対」と「否定」の違い

「反対」と「否定」という2つの言葉の意味は、辞書によって様々な書かれ方をされていますが、今回は下記の意味でこの2つの言葉を使います。

反対
 真逆のもの。対極にあるもの。
否定
 そうではないこと。それ以外。

これだけでは分かりにくいので、具体例を見ていきましょう。


「西方向に10メートル」の反対は何でしょうか?反対は真逆で対極にあるものなので、「東方向に10メートル」となります。

画像2

「西方向に10メートル」の否定は何でしょうか?否定は「そうではないこと。それ以外」なので「西方向に10メートル以外」が否定になります。これは「西方向に20メートル」や「西方向に5メートル」や「東方向に5メートル」など、もともとの「西方向に10メートル」ではないものすべてを含んだものです。反対である「東方向に10メートル」も「西方向に10メートル以外」の一種なので、否定に含まれます。

画像3


さらに具体例を見てみます。「100点満点」の反対は何でしょうか?反対は真逆で対極にあるものなので、「0点」となります。(マイナス点が存在しない普通の学力テストを想定しています。)一方、「100点満点」の否定は何でしょうか?「そうではないこと。それ以外」なので、否定は「100点満点以外(0〜99点)」になります。これは「99点」や「50点」、反対である「0点」などを含んだものです。

画像4

画像5


もっと考えてみます。「サイコロの1」について考えると、反対は「サイコロの6」、否定は「サイコロの2〜6」です。「磁石のN極」については、反対は「磁石のS極」、否定は「磁石のN極以外の部分」となります。

画像6


上の例から、「反対」と「否定」には下記のような性質があることが分かります。

性質:反対は否定の中に含まれる。

画像7


「東方向に10メートル」「100点満点」「サイコロの1」「磁石のN極」のそれぞれについてこの性質を確認していくと、下記の表のようになります。

画像8


「宿題をやるべき」の反対と否定

「〝あるべき〟と思う 」という意見の「反対」と「否定」がどうなるのかを見ていきましょう。具体的な例として、ここでは「学校の宿題をやるべき」という意見の反対と否定を考えます。


反対は真逆で対極にあるものなので、「学校の宿題をやるべきではない」ということになります。これはつまり学校の宿題を禁止するということです。日本の学校の宿題について、不必要な強制性があると感じて、実際に「学校の宿題をやるべきではない」という意見を持つ方もいます。


「学校の宿題をやるべき」の否定はどうなるでしょうか?「やるべき」以外である、ということは、義務ではなく、やるかどうかは自由であるということになります。ですから、否定は「学校の宿題をやらなくてもよい」となります。この意見についても、実際に持っている方がいます。

画像9


前述した性質「反対は否定の中に含まれる」はどうでしょうか?反対「学校の宿題はやるべきではない」は、否定「学校の宿題はやらなくてもよい」の人たちの中に含まれているでしょうか?含まれている、と論理学的には解釈します。これについてはすぐに納得できる方もいれば、なかなか納得できない方もいるかと思います。説明は長くなりますので、後日別の記事として書きたいと思います。

画像10

画像11



いろいろな「あるべき」の反対と否定

「〜であるべき」や「〜をするべき」という意見には、必ず反対の意見と否定の意見があります。「学校の宿題をやるべき」と同様に、反対は「〜であるべきではない」「〜をやるべきではない」、否定は「〜でなくてもよい」「〜をやらなくてもよい」という形式になります。いくつか例を挙げてみましょう。

「困っている友達にお金を貸すべき」の反対と否定
反対:困っている友達にお金を貸すべきではない
  (困っている友達にお金を貸してはいけない)
否定:困っている友達にお金を貸さなくてもよい
  (困っている友達にお金を貸さない自由がある)
「会社員は残業するべき」の反対と否定
反対:会社員は残業するべきではない
  (会社員は残業をしてはいけない)
否定:会社員は残業しなくてもよい
  (会社員には残業しない自由がある)
「総理大臣は辞任するべき」の反対と否定
反対:総理大臣は辞任するべきではない
  (総理大臣は辞任してはいけない)
否定:総理大臣は辞任しなくてもよい
  (総理大臣は辞任しない自由がある)
「超能力を信じるべき」の否定と反対
反対:超能力を信じるべきではない
  (超能力を信じてはいけない)
否定:超能力を信じなくてもよい
  (超能力を信じない自由がある)


対決したいのは反対の意見?否定の意見?

あなたが「〜であるべき」だと思ったとき、すべての人が同じように「〜であるべき」と思ってくれれば幸せですが、そうなることはとても難しいです。あなたの意見「〜であるべき」について、反対「〜であるべきではない」の方もいれば、否定「〜でなくてもよい」の方もいます。


「反対の人たちだけと議論をする」のか、あるいは、「反対も含んだ否定の人たちと議論をする」のかで、あなたの意見をどのように主張した方が良いのかが変わってきます。そのため、主張を行う前に、自分が対決したいのは反対の人たちなのか、否定の人たちなのかを考える必要があります。


また、反対の人たちと否定の人たちを同じとみなすのは危険です。自分からは同じような「自分と逆の意見」に見えるかもしれませんが、反対の人たちと、否定の(反対でない)人たちは意見の食い違いがあるからです。

画像12


「〜であるべき」と思ったときには、その反対と否定はどういう意見になるのかを考えて、それぞれの人たちにどのように接するかを考えると、不要な混乱を事前に避けることができるかと思います。


まとめ

「〝あるべき〟と思っている」の逆の意見には、「反対の意見」と「否定の意見」の2種類がある。
「反対」と「否定」という2つの言葉の意味は、反対は「真逆のもの。対極にあるもの。」、否定は「そうではないこと。それ以外。」
「反対は否定の中に含まれる」という性質がある。
「〜であるべき」や「〜をするべき」という意見の反対は「〜であるべきではない」「〜をやるべきではない」、否定は「〜でなくてもよい」「〜をやらなくてもよい」という形。
「反対の人たちだけと議論をする」のか、あるいは、「反対も含んだ否定の人たちと議論をする」のかで、意見をどのように主張した方が良いかが変わる。自分が対決したいのは反対の人たちなのか、否定の人たちなのかを考える必要がある。
反対の人たちと否定の人たちを同じとみなすのは、反対の人たちと、否定(の中の反対でない)人たちは意見の食い違いがあるので、危険。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?