「許せない」のストレスを回避せよ! 【悩みをなくす論理思考2.0 第1章 part1】
noteマガジン 悩みをなくす論理思考2.0
第1章 あなたは何を許せないのか?(規範の論理)
どんなに優しい人でも、「あの人のこういうところが許せない」と思った経験が一度はあるものです。さらに「なんであの人のことを許せないと思ってしまったのだろうか・・・」と、自分の許容量の少なさに自己嫌悪する、つまり「自分が許せない」と思うこともあるでしょう。
他人や自分に対して「許せない」と思う時、人は大きなストレスを感じます。このストレスを軽減させるヒントを得るために「許せないと思うということは論理的にどういう意味合いを持つのか」ということを、この第一章では分析していきます。「許せない」という状況を客観的に冷静に見つめ直すことで、ストレスを回避する方法を探っていきます。
第1章 part1:「許せない」のストレスを回避せよ!
人が「許せない」と思う事柄には、多種多様なものがあります。「他人に悪口を言われるのが許せない」や、「自分が遅刻ばかりしているのが情けなくて許せない」などなど。
どのような「許せない」の状況であるかに関わらず、人が「許せない」と思う時に必ず共通していることがあります。それは、「許せない」と思うようになるまでに、無意識のうちに下記の3つの段階を経ているということです。
「許せない」と思うようになるまでの3つの段階
・段階1
自分が思う〝あるべき状況〟がある。
・段階2
現実が〝あるべき状況〟になっていない。
・段階3
現実が〝あるべき状況〟になっていないことに嫌悪感がある。
例えば、「悪口を言われるのが許せない」と思っている場合、〝あるべき状況〟というのは「誰からも悪口を言われない」という状況のことになります。その〝あるべき状況〟である「誰からも悪口を言われない」という状況が望ましいと思っていて、だけど現実がそうなっていなくて、嫌悪感を抱くことで、「許せない」という感情が生まれます。
また、「遅刻ばかりしている自分が許せない」の場合は、〝あるべき状況〟は「自分が遅刻をしない」となります。「自分が遅刻をしない」と思っていて、けれど現実はそうなっていなくて、それに嫌悪感を抱くことで、「許せない」となります。
このように「許せない」という感情を持つには、「自分が思う〝あるべき状況〟がある」「現実はそうなっていない」「そこに嫌悪感がある」の3段階を踏んでいる必要があります。逆に言えば、この3段階のうちどれかを回避することができれば「許せない」と思うことが少なくなり、ストレスを減らすことができます。「許せない」の3つの段階のどこを回避するかによって、回避方法は3つのグループに分類されます。
「許せない」の3つの回避方法グループ
・グループ1
〝あるべき状況〟を持たない。
あるべきだと思わない。
・グループ2
現実を〝あるべき状況〟と一致させる。
・グループ3
現実が〝あるべき状況〟になっていないことに嫌悪感を持たないようにする。
例として挙げている「悪口を言われるのが許せない」と「自分が遅刻ばかりしているのが許せない」の回避方法グループはそれぞれ下記の3つとなります。
「悪口を言われるのが許せない」の3つの回避方法グループ
・グループ1
悪口を言われないと思わない。
回避方法の例:
悪口を言われるのが当たり前だと思う。
・グループ2
悪口を言われないようにする。
回避方法の例:
悪口を言わないようにお願いする。
・グループ3
悪口を言われても嫌悪感を抱かない。
回避方法の例:
悪口に慣れておく。
「自分が遅刻ばかりしているのが許せない」の3つの回避方法グループ
・グループ1
遅刻をしないと思わない。
回避方法の例:
遅刻するのが当たり前だと思っておく。
・グループ2
遅刻しないようにする。
回避方法の例:
早く起きれるよう目覚まし時計を増やす。
・グループ3
遅刻しても嫌悪感を抱かない。
回避方法の例:
「他の人も遅刻しているから問題ない」と思うようにする。
さて、この回避方法グループ1〜3のうち、一番よく使われているものはどれでしょうか?
「○○が許せない」と思ってストレスを抱えたとき、多くの人は「怒り」または「不快感」という感情を持ち、それを相手に表します。怒りや不快感の表明によって相手を萎縮させ、〝あるべき状況〟の通りにさせようと本能的に判断していることになります。つまり、無意識のうちに回避方法グループ2の「現実を〝あるべき状況〟と一致させる」を行なっています。「悪口を言われるのが許せない」の場合は「悪口を言われた相手に怒りや不快感を表明して、悪口を言われないようにする」を、「自分が遅刻ばかりしているのが許せない」の場合は「自分で自分に怒りを感じることで遅刻しないように自制する」を無意識に行なっています。
「〇〇が許せない」の回避方法として、「怒りや不快感による相手の萎縮での 〝あるべき状況〟との一致」を本能的に選んでしまうのはなぜでしょうか?
回避方法グループ1「〝あるべき状況〟を持たない」は、 〝あるべき状況〟について「そもそもそれは〝あるべき状況〟なのかどうか考える分析能力」が必要です。人間は言葉によって分析する能力を持っていますが、動物はそれを持っていません。そのため、動物は自分が思う〝あるべき状況〟を脅かす事態、例えば「自分の巣を他者が破壊しようとしている」や「自分が狙っていた獲物を他者が奪い取ろうとしている」という事態に対して、回避方法グループ1「〝あるべき状況〟を持たない」では応じることができません。 「そもそもそれは〝あるべき状況〟なのかどうか考える分析能力」を持っていないからです。
回避方法グループ3「現実が〝あるべき状況〟になっていないことに嫌悪感を持たない」も同様で、「分析によって嫌悪感を自制する能力」が必要であり、これは動物にはない人間だけの能力なので、人間以外の動物では実行することができません。
したがって、「そもそもそれは〝あるべき状況〟なのかどうか考える分析能力」や「分析によって嫌悪感を自制する能力」 がない動物は、グループ1やグループ3を選ぶことができず、グループ2を選ぶしかないため、怒りを表明することで相手を萎縮させて「〝あるべき状況〟との一致」を行なっているのです。
私たち人間の祖先は知能を持っていない猿の仲間だったので、進化の歴史の中で分析能力などが無かった時代を長く過ごしています。その名残りによって、私たち人間が真っ先に選ぶ回避方法も、分析能力が必要なグループ1やグループ3ではなく、グループ2の一種である「怒りや不快感の表明による〝あるべき状況〟との一致」なのです。
動物の社会よりも複雑な人間社会では、単純な怒りによって相手を萎縮させたとしても、思い通りに相手が動いてくれることは少ないのですが、それでも本能的に怒りによる解決を選択してしまい、結果として状況が改善しないため、よりストレスが増す結果になってしまいがちです。
本能的なグループ2ではなく、進化の過程で得ることができた論理的分析能力を使い、グループ1やグループ3による「許せないというストレスを回避する方法」を今後探っていきたいと思います。それには〝あるべき状況〟についての分析、つまり「私がその状況を〝あるべき〟と思っているのはなぜなのか」を考える必要があります。
そのため、次回以降の記事では「私が〝あるべき〟と思っているのはなぜなのか」についての考え方を見ていきます。
まとめ
人が「許せない」と思うようになるまでには、下記の3つの段階を経ている。
段階1:自分が思う〝あるべき状況〟がある。
段階2:現実が〝あるべき状況〟になっていない。
段階3:現実が〝あるべき状況〟になっていないことに嫌悪感がある。
そのそれぞれに対応して、「許せない」状況の回避方法は下記の3グループある。
グループ1:〝あるべき状況〟を持たない。
グループ2:現実を〝あるべき状況〟と一致させる。
グループ3:現実が〝あるべき状況〟になっていないことに嫌悪感を持たない。
怒りや不快感の表明により相手を萎縮させて態度を変えさせることは回避方法グループ2にあたる。
本能的に選択されがちなグループ2ではなく、論理的分析能力を使い、グループ1やグループ3による「○○が許せないというストレスを回避する方法」を今後探っていく。
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