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どんなアーティストたちが台頭し、シーンを牽引しているのか……NYのR&Bシーンを歴史から紐解く

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

9月22日(木)のオンエアでは、「NY・R&Bシーンの今」をテーマにお届け。ゲストに、音楽ライターの渡辺志保、そして、NYに渡米し、アポロ・シアターにも出演したというR&Bシンガーの藤田織也が登場。

■NYのR&Bシーンの歴史

番組では、NYのR&Bシーンの今について特集。どんなアーティストたちが台頭し、シーンを牽引しているのか掘り下げた。

ゲストの藤田は、幼少期からブラックミュージックに触れあう環境で育ち、10歳の時にはJUJUの武道館ライブに出演し、早くもその天性の歌声が話題に。
その後、NYに渡り音楽を学びアポロシアターアマチュアナイトに2度出演。日本に帰国してからはNY時代の仲間と3人組ユニット「Bleecker Chrome」を結成した。AK-69、JP THE WAVYなどの日本語ラップシーンのアーティストが大絶賛するなど注目を集めるなか、今年、1st single『ALL MINE』でソロデビュー。Spotify Early Noiseにも選出されている。

あっこゴリラ:アポロ・シアターの経験は、どうでしたか?
藤田:影響を受けたローリン・ヒルだったり、スティーヴィー・ワンダーが幼い頃に出ていたり、本当にR&Bソウルミュージックにとって殿堂のステージだし、お客さんもリアルなものを聴きに来ているリアルな人たちなのですっごい緊張しました。でもずっと夢だったので、すごく糧になったステージでした。

まずは、渡辺さんに改めてNYのR&Bシーンの歴史を教えてもらった。

渡辺:言うまでもなく、ヒップホップ誕生の地としても知られるNY。ヒップホップの誕生は70年代後半の話ですが、もっと遡ると、1920年代にはNYのハーレムエリアを舞台とした「ハーレム・ルネッサンス」と呼ばれる文化興隆の時代がありました。そこで、アフリカン・アメリカンのアーティストらによるジャズや文学、アートが花開いたという歴史があります。ブラックミュージックとはずっと密接な関係のあるエリアです。

そんなハーレムを代表するシアター(ライブハウス)が、アポロ・シアターである。1913年に現在の場所に移転。1930年代には黒人アーティストらのエンターテイメントを扱う名物シアターとして知られるように。多くの人種が住み、黒人居住区も多くあったNYにて、R&B、ソウルミュージックが根付くようになったのはとても自然なことだったのではと渡辺は話す。

渡辺:90年代にはパフ・ダディ率いるレーベル「Bad Boy Records」がNYで立ち上がり、112やTotal、ファイス・エヴァンスといった素晴らしいR&Bアーティストを次々とデビューさせました。全員がNY出身というわけでは決してないですが、こうした流れもNYとR&Bの密接な関係に影響しているのかなと思います。
2000年代に入る頃にはアリシア・キーズのデビューもあり、常に時代を率いるR&BシンガーがNYから輩出されているというイメージがあります。ただ、NY は日本でいう東京のような場所で、全米・全国からさまざまな人が夢を追いかけて集まってくる場所なので、必然的にスターも多く生まれる土壌があるとも言えます。

このように語る渡辺さんがまずセレクトしたのは、アリシア・キーズの『Girlfriend』。NY を代表するラップ・クルー、ウータン・クランのメンバーでもある故オール・ダーティー・バスタードの代表曲『Brooklyn Zoo』の特徴的ピアノのループをサンプリング。 ドラムパターンは同じNYのラップ・デュオ、ギャング・スターの『Take It Personal』をサンプリングしている。

■藤田織也がNYで感じたR&Bの転換期

あっこゴリラ:藤田さんがNYにいたのは、何年前?
藤田:もう5年前になります。
あっこゴリラ:当時は、どんなR&Bアーティストがいましたか?
藤田:当時NYでディーバな感じだったのは、ジャスティン・スカイとか、チル系だとマック・エアーズとか、そこらへんがアツかったですね。
でも僕が注目していたのは、90年代から2000年代にかけてヒップホップアーティストが、ヒップホップの曲なんだけどフックで女の子のR&Bアーティストが歌ってヒットが多かった中、初めてR&Bがヒップホップの要素を吸収したという、R&Bにとっての転換期だったと思っています。
あっこゴリラ:うんうん。
藤田:そこでトラップソウルというジャンルが生まれたんですけど、それこそPARTYNEXTDOORやブライソン・ティラー、トリー・レーンズみたいなアーティストが出ることによって、本当に元々あったR&Bの定義が崩れていったような時期でしたね。
あっこゴリラ:こういった新しい動きはNYを中心に始まっている感じしますか?
渡辺:一概に中心にとは言えないですけど、特に織也さんがNYにいた時代だとSNSもみなさん普通に使っていたと思うから、逆にいろんな地域からいろんな才能やジャンルが生まれていたと思います。でも、言うても有名な出版社とかラジオ局とかはNYに多いので、そこが流行の発信地となっているのは揺るぎない事実かなと思います。
あっこゴリラ:最近だとインドルーツのRaveena(ラヴェーナ)とか、台湾の9m88(ジョウエムバーバー)とかいますが、違う地域から人気が出てNYでブレイクという方も多い?
渡辺:やっぱり人種とか生まれた地域を問わず、NYで花咲かせたいっていう方はめちゃくちゃ多いと思いますし、そこからラジオ局とか地元のライブハウスなどの力を借りて名をあげていくミュージシャンがたくさんいるのかなって思いますね。
あっこゴリラ:ここで、藤田さんが特にくらったR&Bアーティストの曲をかけたいと思いますが誰にしますか?
藤田:ブライソン・ティラーの『Sett It Off』をかけたいと思います。この曲は、先ほど志保さんの話にも出てきたレーベル「Bad Boy Records」のアーティストであるフェイス・エヴァンスの『You Are My Joy(Interlude)』という曲をサンプリングした楽曲になります。

■NYを拠点に活躍するR&Bミュージシャンを紹介

ここからは、ゲストのお二人に注目のボーカリストを紹介してもらった。
あっこゴリラ:藤田さんがNYにいた時、衝撃を受けたボーカリストっていますか?
藤田:二人いて、一人がDemo Tapedです。彼が影響を受けたアーティストにはジャズのハービー・ハンコックとかフライング・ロータスなどがいるんですけど、そんな影響が混ざったような音楽性で、声にすごく温かみがあって、聴いているだけでこんなに平和になる歌い手がいるんだなって思いました。
あっこゴリラ:もう一人は?
藤田:ジャズメイア・ホーンというシンガーで、実は僕がNYにいた頃にジャズを教えてくれていた先生なんです。現代のサラ・ヴォーンなんて言われていたりして、グラミー賞にもノミネートされています。現在もバリバリ現役のジャズメイアなんですけど、今までNYで会った中で一番ヤバかったのは彼女ですね。

あっこゴリラ:渡辺さんからも一人、今のNYを拠点に活躍するR&Bミュージシャンを教えてください!
渡辺:テヤナ・テイラーです。スーパースター級の活躍をしているR&Bシンガーではあるんですが、NYのハーレム出身なんです。
彼女の歌い方とか歌っているビートって、古き良き感じのソウルサンプリングのビートもあれば、グイグイなトラップ系のビートやブーンバップ系のゴリゴリのビートで歌っていたりします。
あっこゴリラ:へえ~!
渡辺:彼女は、カニエ・ウェスト率いるレーベル「G.O.O.D. Music」に所属しています。二児の母親でもあり、パートナーは花形スポーツプレイヤーで、自身もスパイク・ティーという名前で自分の作品のMVも撮ったり、他のアーティストのMVの監督も務めたりしています。
あと、俳優としても活躍していて、めちゃくちゃパワフルな方なんです!
あっこゴリラ:すごい!
渡辺:NY出身のディーバという意味では、アリシア・キーズにつながる系譜なんかも感じますし、多岐に渡る活動の様子からはビヨンセとかにも通ずる求心力を私は感じています。

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【番組情報】J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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