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音楽界の異端児フランク・ザッパに迫る!

【J-WAVE『SONAR MUSIC』から最新音楽情報をお届け】
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

4月11日(月)のオンエアでは、「フランク・ザッパに学ぶ【非・商業音楽のすゝめ】」をテーマにお届け。ゲストに、フランク・ザッパの伝記の和訳を担当された須川宗純さんが登場。須川さんは、この伝記だけでなく、フランク・ザッパ初のドキュメンタリー映画『ZAPPA』の日本語訳も担当している。

■ロックの可能性を大きく広げた重要人物

あっこゴリラ:須川さんから見て、フランク・ザッパを一言で表すと?
須川:本当にいろんな側面があるので難しいですが、僕なりに一言で表すと「自由と音楽を愛する不屈な男」ですね。とにかくめげない!
あっこゴリラ:おお~! やっぱりその姿勢が、この多作なところにも表れているんですかね。
須川:あると思いますね。
あっこゴリラ:フランク・ザッパのルーツが気になるんですけど、そもそもどんな人なんですか?
須川:イタリア系の移民の子孫で、小さなころから病弱で友達ができなかったり、怪我をしたり、何かと不運で。結果的に報われているとは言えないけれど、でも全くめげない強い人ですね。最後はがんで亡くなるんですが、仕事ができなくなるまでやり続けました。
あっこゴリラ:その強さはどこからきていると思いますか?
須川:フランク・ザッパには、一種の使命感みたいのものがあったんだと思います。政治に対するコメントも生涯やめなかったし、人の持っている権利みたいなものをきちんと捉えていたんだと思います。アメリカに住む一市民として、自分の自由を犯す可能性があることが生まれると、自分にメリットがなくても飛び出して戦っている人とも言えますね。
あっこゴリラ:うんうん。
須川:音楽面で言うと、いろんな引き出しがある人ですが、それだけではなく、自分なりの音楽のコンセプト的なものを掴んでいた気がします。だから、音楽にはまだまだやることがあるって思っていたんだと思います。それが動力になっていたんじゃないかな。

今回のドキュメンタリー映画『ZAPPA』では、どんなことが描かれているのか。

須川:『ZAPPA』関係の映画っていくつかあるんですが、この映画は初めてフランク・ザッパ個人に焦点を当てた映画だと言えるんじゃないかと思います。
あっこゴリラ:へえ~!
須川:僕は、今回の伝記も映画と同じような印象を受けるんですよね。
あっこゴリラ:じゃあ、フランク・ザッパがどういう人なのか知りたい人は、この伝記とドキュメンタリー映画をセットで観たらいいってことですね。
須川:そうですね(笑)。
あっこゴリラ:音楽的には、どんなルーツがある方なんですか?
須川:子供のころはドゥーワップやR&B好きだった一方で、エドガーヴァレンス、ストラヴィンスキーなど現代音楽に衝撃を受け、そういう曲を書こうと思っていたそうです。この両方に影響を受けて、その中で自分の音楽を作っていった人です。
あっこゴリラ:現代音楽に影響を受けているっていうのは、すごくキーワードな感じしますね。

あっこゴリラ:(曲を聴いて)めちゃくちゃポップですね!
須川:ザッパらしからぬっていう(笑)。
あっこゴリラ:でもすごくおもしろい! この『Valley Girl』は、どんな楽曲なんですか?
須川:ボーカルをやっているのが、実はフランク・ザッパの娘さんなんです。このころは、まだ13歳。ちなみに、フランク・ザッパ本人はそんなにだったけど、めっちゃヒットしました(笑)。内容は、当時流行っていたヴァリーガール(カリフォルニアのギャル)の喋り方(ぶりっこしゃべり。ギャル語)を真似した若者言葉のパロディです。
あっこゴリラ:でも、これが唯一のヒット曲ってなると、ザッパ的にはね(笑)。
須川:本人的には不本意なところはあったと思います。
あっこゴリラ:フランク・ザッパって、すごく実験精神がありますよね。やっぱりロックという音楽をどんどん広げようとしていたってことなんですか?
須川:そうですね。ロック、ジャズ、クラシック、現代音楽など、いろんな音楽のエッセンスを吸収して、それを作品にしていた人ですね。本当にビートルズと並んで、ロックの可能性を大きく広げた重要人物だと思います。

■物議を醸した楽曲『Fine Girl』

ここからは、ザッパが与えた影響や音楽界にもたらした変化について伺った。

須川:実は、フランク・ザッパは音楽以外のこともしていて。例えば、これは音楽絡みではありますけど、今、ヒップホップとかのアルバムを買うと「Parental Advisory Explicit Lyrics」って書いてあるじゃないですか。
あっこゴリラ:はい。
須川:あれは1985年から始まったものなんですが、このとき「これは検閲だ! 表現の自由の侵害だ! 」といって敢然と反対したのがザッパなんです。それについて上院で議論される際、その公聴会でザッパが登場し、陳述したりしています。
あっこゴリラ:へえ~!
須川:おもしろいのが、実際にやり玉に上がっているのはプリンスとかで、ザッパじゃないんですよね。でも、一市民の表現の自由を守るため声を上げたんです。これはなかなか見上げたことだったと思います。まあ、放っておけばいずれ自分の方にもやってくるのは、目に見えてわかっていたと思うんですけどね(笑)。
あっこゴリラ:実際ザッパ自身が標的になったこともあったんですか?
須川:物議を醸した『Fine Girl』という曲があります。

『Fine Girl』【歌詞】(抜粋)
あの娘はステキな娘
皿も洗ってくれるし
タイヤも交換してくれる
朝から晩まで働いて
銀の食器なんかピカピカにしてくれる
たき木で切ってくれるし
火が消えそうになったらかき混ぜてくれる
バケツを頭の上に乗せて
井戸から水をくんできてくれる
ラバみたいに無口で
できない仕事は何もない
こういう娘がもっといてくれたらいいのにね

須川:(歌詞について)ヒドいでしょ(笑)。
でもこれは、女性を貶める目的というよりもザッパ版「女は世界の奴隷だ! 」(ジョン・レノン+ヨーコ・オノ)なんじゃないかと思うんです。つまり「俺たち“オトコ”は、結局今でも女性をこんなふうに扱ってるじゃないか、どういうことなんだ」という歌なんじゃないかなと。ただ、今ではこれを真に受けてしまう人も多いと思うので、通じにくい表現になっているのは確かですね。
あっこゴリラ:当事者以外が言うってところが、難しいポイントだったりしますよね。説明が必要な時代になっちゃったかなって感じはしますね。

■ザッパのバンドメンバーに入るのはかなり難しい!?

あっこゴリラ:リスナーの方からスティーヴ・ヴァイとフランク・ザッパの関係性を教えてほしいとの質問がきましたが、どうですか?
須川:スティーヴ・ヴァイは、ティーンエイジャーのころからザッパの大ファンで、当時は若すぎてツアーに同行できなかったけれど、そのころからの付き合いです。バンドに入ってからは、自分の身がわり、影武者ギターのような存在でしたね。
あっこゴリラ:へえ~! ザッパのバンドメンバーに入るのって、かなり難しかったんですよね?
須川:難しかったらしいですね。ザッパ本人も、自分のバンドのオーディションには合格できないって言っていたそうです(笑)。
あっこゴリラ:あははは! でも、それくらい求めるハードルも高かったんですね。
須川:ちょっと色物的なところもあるから、技術はもちろん、エンターテイメント性も必要だったので、その両方を持ってないと採用されないってことだったんですね。
あっこゴリラ:なるほど。ザッパがどんな風に音楽を作っていたかも気になるんですけど、バンドでセッションして作る感じでもないじゃないですか。
須川:確かに。でも、バンドでやっていくうちにいろいろ膨らませて変形させていくってことも多かったらしいです。ライブの音源とかを地道に聴いていくと、そういうことが分かってきたりするんですよね(笑)。
あっこゴリラ:そうなんですね。ライブで練っていくってことは、バンドっぽい感じなんだ。
須川:それはそれである。だけど、ガッツリ書き込むところは書き込む、その両方があるみたいですね。
あっこゴリラ:ロックシーンに多大な影響を与えたザッパですが、具体的にどんなフォロワーがいるんですか?
須川:フォロワーというか、ザッパのバンドにいた人が、のちにもっと活躍して知名度を高めるとかが多く、そのことで有名でもあります。
あっこゴリラ:例えばどんなアーティストがいるんですか?
須川:あっこさん、キングクリムゾン好きだと思うんですけど、エイドリアン・ブリューもザッパのバンドにいたんですよ。そこで頭角を現しました。


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【番組情報】81.3FM J-WAVE『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/



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