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デビューアルバムでグラミー賞2部門受賞!全世界から熱い視線を集めるUKの新星“Wet Leg”

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

■音楽の楽しさの原点が詰まっているアルバム

2021年デビュー。BBC Sound of 2022に選出されるなど一瞬で音楽業界・音楽ファンを虜にした、へスター・チャンバース、リアン・ティーズデイルによるイギリス出身の2人組「Wet Leg」。

デビューアルバム『Wet Leg』が、第65回グラミー賞で5部門にノミネート。さらに、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンスの2部門を受賞。

2月7日(火)のオンエアでは、そんなUKロックの新星の魅力に迫った。
ゲストには、日本における英国文化を紹介しているメディア『British Culture in Japan』の編集長で音楽ライター、本人たちへのインタビュー経験もある、油納将志さんが登場。

あっこゴリラ:デビューアルバム『Wet Leg』は、どんな部分が評価されたと思いますか?
油納:受賞するとまでは思ってなかったので、ちょっとびっくりしました。実はこのアルバムは、2人を有名にしたデビューシングル『Chaise Longue』のリリース前に完成していたそうなんです。
あっこゴリラ:へえ~!
油納:『Chaise Longue』でバズった後に、アルバムのレコーディングだと、いろいろと考えてしまいがちですよね。“次にウケるためには……”という具合に。
そうした意識がまったくない、彼女たちふたりの素の音楽がアルバムという入れ物にパッケージされています。そこが、いちばんの魅力ですね。
小難しくなくて、音楽の楽しさの原点が詰まっている感じがします。
なみいる大物たちをおしのけて受賞したのは、そうした新鮮さが評価されてのことだったのではないかなと思います。

ここで、簡単にプロフィールを紹介。
Wet Legは、イギリス・ワイト島出身のへスター・チャンバース、リアン・ティーズデイルによる2人組。
ライブを4回しかしたことない状態から突然名門レーベル「DOMINO」と契約。2021年、デビューシングル『Chaise Longue』がいきなりヒット。
その勢いのまま2022年、デビューアルバム『Wet Leg』をリリース。第65回グラミー賞を受賞。5部門にノミネートされていた。

あっこゴリラ:この曲一発で注目された理由はどこにあったと思いますか?
油納:まずキャッチーですよね。曲のスタイルとしては90年代のオルタナティヴ・ロックからの影響が感じられる、特に目新しいものではありません。
それなのに、間もなくYouTubeでの再生回数が1000万回に達しようとしているのは、ウィットに富んだ歌詞が支持されたと僕は考えます。
あっこゴリラ:ちなみに、この「Chaise Longue」とはフランス語で横になれる長さがあるソファという意味なんですね。
油納:はい。リアンが、ヘスターの祖父のソファで1日で書き上げ、タイトルも「シェーズ・ロング」と名付けたんですけど、この曲の歌詞がわりと赤裸々なんです。
ちょっとドキッとするような歌詞で、そういうところがウケているんじゃないかなと思います。
あっこゴリラ:2人が生まれ育ったワイト島はどんな場所なのでしょうか?
油納:ワイト島からミュージシャンが出てくるってあまり記憶にないんですけど、イングランドの南のロンドンに一番近い島と言われています。ロンドンから3時間弱で、なんとか日帰り観光もできる距離感のリゾート地という感じ。
日本でワイト島と言うと、ザ・フーが出演したワイト島フェスティバルで知られています。
あっこゴリラ:ワイト島の音楽シーンっていうのも存在するんですか?
油納:本土の都市で形成される音楽シーンのような規模感はなく、学校でバンドを組んだり、友達同士で演奏したりという規模感で、リアンとヘザーも島のカレッジで別々のグループで活動していたそうで、ローカルなシーンが存在していると思います。

■名門レーベル「DOMINO」との契約秘話

あっこゴリラ:先ほど少し話に出ましたが、2人の出会いは学校だったんですね。
油納:はい。10代の頃にカレッジで音楽を学んでいるときにふたりは出会い、リアンはカレッジを中退後仕事を転々とし、ヘスターは宝石商を営んでいる実家で働くように。その頃には同じバンドで演奏していました。
あっこゴリラ:びっくりしたのが、2人とも10年くらいのキャリアがあったんですね。それを経て、2019年にWet Legを結成したっていう。
油納:そうなんです。インタビューでも、「歳を重ねたことで若い頃よりも多くの視点が身について、たくさんの人々と繫がりを持つことができるようになった」とポジティヴに答えてくれました。

ここで、彼女たちのブレイクの決定打になった2ndシングル『Wet Dream』をオンエアした。

2人が所属するレーベル「DOMINO」は、アークティック・モンキーズ、フランツ・フェルディナンドを輩出した名門レーベルだが、結成したばかりで契約できたのはなぜなのか。油納さんが契約時の話を教えてくれた。

油納:新型コロナウイルスによるロックダウンによってライブができる状況ではなくなってしまって、ロンドンで働いていたリアンもワイト島に戻り、再びヘスターと共に音楽に打ち込むようになったんですね。
あっこゴリラ:うんうん。
油納:その間にマネージャーも決まり、音源をメジャー・インディー問わずに送ったところ「DOMINO」が興味を示し、スタッフがワイト島までやってきたそうです。
あっこゴリラ:へえ~!
油納:そこでスタッフたちとパブで昼食をとり、バンドの演奏を見る前に「DOMINO」が契約のオファーをし、契約した後にスタジオで演奏するWet Legを見たというくらい二人に可能性を感じていたみたいです。

■Wet Legのプロデューサー「ダン・キャリー」とは

ここからは、Wet Legのリアン、ヘスターの音楽的なルーツについて教えてもらった。

油納:リアンは、小さい頃はミュージカルの音楽を聴いていたそうですが、16歳頃には、PJハーヴェイやアヴァランチーズ、ビースティ・ボーイズ それからシガー・ロスなどいろいろなジャンルを聴いていたそうです。
あっこゴリラ:うんうん。
油納:17、18歳になった頃にSpotifyが出てきて、世界中の音楽にアクセスできるようになり、エレクトロニカ、キングス・オブ・レオンやザ・ストロークスといったロック、デヴェンドラ・バンハートやジョアンナ・ニューサムといったフォークを聴いていたそうです。
あっこゴリラ:一方、ヘスターは?
油納:ヘスターのお母さんは四六時中音楽を流していたそうで、お母さんの聴いていた音楽に影響されたそうです。
ニック・ドレイク、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジョニ・ミッチェルなどを聴いていたそうで、そうした音楽はすべて自分の中にばっちり定着しているとのこと。
あっこゴリラ:へえ~! そんな2人がルーツと話すアーティストの中で、油納さんが特に重要だと思うアーティストは?
油納:実は、これだ、というルーツのアーティストは感じられないんですよね。
リアンも「Spotifyのようなサブスクリプション・サービスが登場してから、様々な音楽背景を持ったバンドやアーティストがさらに増えてきた感じで、絶対的に信奉するようなアーティストの存在というのが希薄になっている」と語っています。
あっこゴリラ:確かに。
油納:その中で、音楽的なルーツというよりもスタイルという点でWet Legは、ザ・レインコーツやザ・スリッツ、デルタ5といった、80年代の女性によるポスト・パンクに通じるところがあると感じています。

そんなWet Legのプロデューサーは、どんな人物なのか。

油納:ダン・キャリーという、間違いなく現在の英国で話題作をいちばん送り続けているプロデューサーです。
彼は当初、カイリー・ミノーグやシーアといったダンサンブルなアーティストを手掛けていたのですが、2009年にフランツ・フェルディナンドをプロデュース以降はバンドの仕事が増えていき、ブラック・ミディやスクイッド、フォンテインズD.C.、ゴート・ガール、フォールズといった顔ぶれを手掛けています。
あっこゴリラ:おお~!
油納:南ロンドンを拠点にしていて、彼が手がけたバンドには南ロンドン出身が多いので、ひとつのムーヴメントとして語られることもあるくらい影響力があるプロデューサーです。
あっこゴリラ:すごい! どんな経緯でダン・キャリーにお願いすることになったんですか?
油納:ヘスターはフォンテインズD.C.のファンで、プロデューサー候補にダンの名前が出たとき、すぐさま“ダンにお願いしたい! ”となったそうです。「マジ? 冗談でしょ? 」というくらいに、ダンが手掛けてくれることに喜んでいました。

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【番組情報】81.3FM J-WAVE『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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