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SNS時代を巧みに乗りこなす、世界を変えたファンクバンド・Vulfpeckに迫る

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

1月10日(火)のオンエアでは、「ニューアルバムリリース! 究極のDIYバンド“Vulfpeck”がすごい理由」をテーマにお届け。ゲストに、Dr.ファンクシッテルーさんが登場。

■すべて自分たちでやっている「DIYバンド」
番組では、いま世界ナンバーワンと言われるミニマルファンクバンド「Vulfpack(ヴォルフペック)」を特集。
2011年にミシガン大学の学生たちで結成。これまでに、12枚のアルバムを自主でリリース。大手レーベルとは契約せず、マネージャーすらいないまま、音楽の聖地と言われるニューヨーク「マディソン・スクエア・ガーデン」公演を大成功させた世界一のミニマルファンクバンドである。

世界中にファンを持つVulfpeckだが、ここ日本でも星野源やスガシカオ、Official髭男dism、ハマ・オカモトなどそうそうたるミュージシャンたちが絶賛している。
ゲストには、著書『サステナブル・ファンク・バンド〜どこよりも詳しいVulfpeckファンブック〜』を出版された、Dr.ファンクシッテルーさんが登場。

あっこゴリラ:まず、この人たちは何がすごいんでしょう?
ファンクシッテルー:DIYバンド、つまり「何でも自分たちでやっちゃうバンド」なんです。リーダーのジャック・ストラットンという人がとにかくすごくて、この人が文字通り、何でもやっちゃう人なんです(笑)。
あっこゴリラ:しかもマネージャーもいないって、すごい。私もそうだけど、Vulfpeckは人数も多いし、本当大変だと思う。
ファンクシッテルー:だと思います。自分たちで演奏して、レコーディングして、ミックスして、さらに自主レーベル。クラウドファンディングでアルバムを制作して、PV撮影も公開も宣伝もとにかく全部自分たちなんです。その“DIY力”がすごいなって思いますね。
あっこゴリラ:本当にいま出るべくして出た人たちですよね。これをバンドでやっちゃうっていうのがすごい。しかも2011年の結成のときから自主なんですよね?
ファンクシッテルー:そうなんです。彼らは全く何も変わってないんですよ。このスタイルで全くお金をかけることなく、2019年にはSNSの無料投稿だけで世界一有名なアリーナ「マディソン・スクエア・ガーデン」を単独で満員にしてます。こんなことをしたファンクバンドは世界初です!
あっこゴリラ:すごい! コスパ良すぎ! ヘルシーですよね。
ファンクシッテルー:時代にすごく合っているなって思いますね。
あっこゴリラ:バンドのコンセプトはあるんですか?
ファンクシッテルー:結成時は、ジャックがモータウンのカラオケ音源が大好きだったこともあって、「ソウル・ファンクのカラオケ音源のようなものを作る」というコンセプトでスタートします。
あっこゴリラ:へえ~!
ファンクシッテルー:カラオケ音源なんで、本来あるはずのメロディがなく、そこにあるのは最高のグルーヴだけという、ちょっと不思議な感じのするファンクで、これが日本で「ミニマルファンク」と言われているサウンドですね。

■サステナビリティを意識して活動
ここからは、彼らが脚光を浴びるきっかけとなった作品について伺った。

あっこゴリラ:Vulfpeckが脚光を浴びるきっかけとなった作品は?
ファンクシッテルー:2014年の『Sleepify』というアルバムです。これはおもしろいことに、まったく音が入っていない、つまり完全無音のアルバムなんです。
あっこゴリラ:ええ~!
ファンクシッテルー:1曲31秒なんですけど、Spotify では30秒をすぎるとお金が発生するんです。つまりファンに寝ている間にこれを繰り返し再生してもらって、お金を稼いだっていう。
あっこゴリラ:ヤバッ(笑)。もう現代アートじゃないですか。
ファンクシッテルー:ある意味、完全にアートですよね。
あっこゴリラ:これで有名になったんだ?
ファンクシッテルー:はい。あまりに斬新で、ワシントン・ポストやタイム誌などが記事にして話題になり、サウンドは入ってないけど、これでめっちゃ有名になりました。
あっこゴリラ:なるほど~。確かに、2014年にこれをやってるってすごい早いと思う。2014年って、まだサブスクって稼げるのか稼げないのかちょっとボヤっとしてた時期だから。
ファンクシッテルー:そうなんです。そんなときにこれをやっちゃったんです。めちゃくちゃ早いですよね。
あっこゴリラ:もう企画勝ちですね。音楽的にはどんな部分でファンを増やしていったのでしょうか?
ファンクシッテルー:Vulfpeckには、ファンクのスーパープレイヤー、ジョー・ダート(Ba.)とコーリー・ウォン(Gt.)の2人がいて、めちゃくちゃファンキーなんです。彼らのグルーヴが非常に素晴らしかったので、そこにファンクリスナーがファンになっていったのかなと思います。
あっこゴリラ:初期はインストですが、その後は歌の入っている曲も増えていくんですか?
ファンクシッテルー:はい。歌入りの曲も多いです。ティオ・カッツマンという天才シンガーソングライターがいて、彼が書いた『Back Pocket』は、iPhoneのCMソングにもなっています。そのくらい歌入りの曲も評価されているバンドです。

ここで彼らの人気を確実にした曲『Cory Wong』を、マディソン・スクエア・ガーデンのライブ盤バージョンでオンエアした。

あっこゴリラ:様々な試みをしているVulfpeckの活動ですが、ファンクシッテルーさんが特に関心したものは?
ファンクシッテルー:いろいろありますが、やっぱり彼らが持続可能性、つまりサステナビリティを意識して活動している、という点が素晴らしいと思います。
あっこゴリラ:うんうん。
ファンクシッテルー:ジャックは、“どうすればバンドが解散しないか”ということを最優先に考えてるんです。メンバーの拘束時間を最低限にすること、ギャラを完全に均等にすることが解散を防ぐと考えて、それをずっと実行してるんです。
あっこゴリラ:おお~!
ファンクシッテルー:この拘束時間を最低限にする、っていうのが本当にすごくて、だから基本的にリハーサルをやらないんです。レコーディングもちょっと演奏したらもう終わり。つまり、メンバーには家庭やソロ活動など、バンド以外の時間を大切にしてもらう。そうすれば誰もバンドを辞めないだろう、と。このシステムは世界的にも注目されています。

■最新アルバム『Shvitz』リリース、コンセプトは「サウナ」
ここ日本でも多くのミュージシャンがファンを表明しているVulfpeckだが、そんなファンの一人、PEOPLE1のDeuに話を伺った。

Deu:Vulfpeckを最初に知ったのは、確かYouTubeだったと思います。PEOPLE1では僕が曲を作ってるんですけど、そういうソングライターとしては海外の洋楽特有のコード進行に頼らない感じとか、メロディーラインに頼る感じじゃない曲の構成とか、ファンクなのでリフやグルーヴ、音色とかで聴かせていくっていうのがとても魅力的だなと思います。あのファンキーなグルーヴ、音色はもう最高です! みんな好きでしょ(笑)。

そんなDeuが特に好きな曲は、『Wait for the moment』だという。

Deu:コード進行があまりにもツボって、こういうのがめちゃくちゃ好きなんですよね。その上でマディソン・スクエア・ガーデンのライブ映像を見て、聴いて完全に好きになっちゃいました。とても音楽的なライブなんですけど、とても自由に見えるというか……多幸感を感じましたね。あのライブ映像自体、もう何十回も見てます! DTMでなんでも作れる今、ああいうバンドとして音を鳴らせるのが最高だと思います。

2019年にバンド最大のマディソン・スクエア・ガーデン公演を成功させたVulfpeck。その後、Vulfpeckとしてのライブは去年の7月まで、3年弱の間まったく行われなかった。もともとあまり多くライブをやるバンドではなかったが、その後コロナ禍に入ってライブ活動がストップ、レコーディングもストップし、メンバーのソロ活動、メンバー同士で組んでいる別のバンドの活動が盛んに。

あっこゴリラ:ソロ活動で気になったものは?
ファンクシッテルー:コーリー・ウォン(Gt.)が、コロナ禍で驚異的な枚数をリリースしています。ライブ盤も併せて、3年間で12枚。あははは!
あっこゴリラ:えっ!? どういうこと(笑)。すごいな!
ファンクシッテルー:他には、メンバー同士で組んでいる別のバンド「フィアレス・フライヤーズ」が去年、ニューアルバムをリリースしました。
さらにこのバンドは去年、世界のジャズフェスの頂点とも言われる、「ニューポートジャズフェスティバル」「ノースシージャズフェスティバル」にどちらもヘッドライナー級の扱いで出演しています。
これは、例えばノラ・ジョーンズとか、サンダーキャットとか、そういったアーティストと同じくらいの扱いです。
あっこゴリラ:すごい。これはVulfpeckの影響も大きい?
ファンクシッテルー:もちろんVulfpeckの影響も大きいですが、彼らのグルーヴが本当に素晴らしいということだと思います。
あっこゴリラ:他に気になるソロ活動ありますか?
ファンクシッテルー:リーダーのジャックのソロ作品である「ヴォルフモン」名義のアルバムがとにかく最高。『How Much Do You Love Me? 』という曲は、NHKの星野源さんの番組『おげんさんのサブスク堂』で紹介されました。

そんな中、昨年末、ついに最新アルバム『Shvitz』がリリースされた。

あっこゴリラ:率直に、どんなアルバムだと感じましたか?
ファンクシッテルー:めちゃくちゃ笑いました(笑)。今回のアルバムのタイトルが『Shvitz(シュヴィッツ)』で、サウナという意味なんですけど、ジャケットにもサウナハットとバスローブを着た人物が描かれていて、すごい可愛いんです。
そのまんま「サウナ」っていう曲があるんですけど、おじさん7人が集まって、“サウナに入って整ってます! ”みたいな曲をリリースしていて、これまでのファンキーな曲とのギャップにめっちゃ笑いました。
コンセプトがサウナなので、リラックスできる曲が多く、家で執筆活動をしている自分にはかなり心地いいアルバムでした。

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【番組情報】J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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