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リーマンロック(2) - 歌詞の危険性

歌詞が安全保障に反する。

歌詞の輸出が禁止される。

意味がわからない。どう考えても後づけの理由に過ぎなかった。兵器に流用されることを危惧して規制するなら分かるが、歌詞が武器になるわけでもない。まぁ確かに誰かの心を傷つけて心を追い込むことや、もしかしたら歌詞でテロリストになるように洗脳できることもあるかもしれない。

歌詞は単独で多くの人に届くことは少ない。作詞家は他の作詞家の歌詞を読むこともあるだろうし、歌詞を読むことそのものが好きな人もいるだろうがそんなに多くはいないだろう。知らない人の歌詞を読んで、何かを感じることがあるなんて相当のことだ。たいていは好きなミュージシャンがいて、曲にのっている歌詞と合わせてはじめて大きく心が揺さぶられる瞬間が生まれるのだと思う。僕もそうだった。もしボブディランが無名だったとして、歌詞だけがSNSに流れてきたとして、どれだけの人がそれに目をとめて、ノーベル文学賞を取るレベルのものであることに気づくことができるのだろうか。きっと僕は気づかない。気づけない。ボブディランという神格化されたブランドがあってこそ、はじめて音楽を聴く機会を持ち、音楽を聴いてはじめて歌詞を理解し、はじめてその曲のメッセージを知り、繰り返し聴くことで楽曲とのコミュニケーションが成立し、心に刻み込まれていく。歌詞はそう言った過程で届くものだと思う。

歌詞が安全保障に反する。

歌詞の輸出が禁止される。

それはどういうことなのか。

数日後、自称ハッカーの友人が国防の極秘文書を入手した。自称ハッカーなのでどれだけ信憑性があることを言っているか分からないが、やけに興奮していたのでとりあえず話は聞いてみることにした。機械翻訳の結果、驚くべきことが書かれていたという。英語で書かれたその文書は長く、やけに整った構成であるのはわかった。そのため偽物の文章である気はしなかった。そして見せてくれた機会翻訳文書にはこう書かれていた。

「歌詞の兵器利用に関する記録」
「近年の爆破テロのいくつかで使用された可能性あり」

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