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親の老いに向き合う- 娘が裸で運動していたので

 独居老人の母を、それとなく気遣ってくれるご近所の方々がいるので助かっている。
その一人Kさんは、定年退職後時間が有り余っているからと、時々家の庭の掃除をして下さる。
たいてい母がプールに出かけている午前中に、庭の木戸から入ってきて、草むしりや掃き掃除、水やりなどして帰って行く。
帰省する度に、お世話になっているご近所さんには私も一応挨拶に行くのだが、先週Kさんのお宅にもお菓子を持って「お世話になっています。またしばらく母の様子見に来ています」と挨拶していた。

しばらく雨の日が続きやっと晴れた先日、母がプールに行っている時に庭の方からホウキで掃く音が聞こえ、ああ、Kさんだなと思いつつ私は部屋でクロストレーニングを続けていた。


 お昼前に帰宅した母に「今日Kさん庭掃除してくれてた。私トレーニングしてたからご挨拶しなかったよ」と報告。
「いつも私がプールに行ってて留守って知ってるからいいよ」と母。

 翌日の夕方、Kさんがサツマイモとシソのお裾分けにやって来た。私は玄関横の仏間の片付け中で、母が応対。
「まぁ、Kさん、昨日お掃除来て下さった時ね、娘は家にいたのにご挨拶もしないで失礼しました」
と、よそ行きの声で話している。

は?と思って聞き耳をたてる。

Kさんは「いや、私いつも黙って来て黙って帰るから。そんな挨拶なんてよかですよー」と言っている。

次の母の言葉に、片付けの手が止まる。
「まぁ〜、それが娘はね、オホホ、裸で運動してたものだから」

Kさん、短い沈黙の後
「暑いですからねー」
・・・・・・
Kさんが帰って母に猛抗議。
「裸って何?私ちゃんと服着てたよ!」
「あの格好は裸みたいなものでしょうが」

母が言う裸みたいな格好とは普通のヨガウェア。
レーサーバックのタンクトップに七分丈のタイツで、肌の露出は肩から先と、ふくらはぎから下だけだ。蛇足だがもちろんスポーツブラも着用。

 私だってそれなりに常識や立場は考えるので、ヨガウェアでご挨拶に出てはいかない。
走る時、夏場はタンクトップにランショーツだけれど、故郷の実家周辺のジョグは肩や脚の露出は控えめのウェアにしている。でも、昭和一桁世代にとっては身体に密着するスポーツウェアは「裸同然」なのだなあ。
にしても、ほんと余計なこと言ってくれるわ。

 一番上のタイトル画像は、映画「はい、泳げません」フライヤーより。高橋秀実の同名原作を母もずっと前に読んでいて、それがとてもおもしろかったので、駅ビルのシネコンで予約し一緒に期待して観に行った。

1995年出版の原作
筆者の実体験に基づくエッセイ
読むととにかく泳ぎに行きたくなる


はい、泳げません (新潮文庫) https://amzn.asia/d/9u4z7Fy


フライヤーの100%ORANGEのイラストも楽しげでキュート、映画も原作みたいな感じなんだろうな、母も私も泳ぐのは大好きだし、ワクワク♪
だったのだが…。
 映画は原作とは全くの別物だった。

見終わった後の母の唯一の感想は、
「映画館で映画観たの久しぶりだった」
以上。
そして、観たこと自体既に忘れている。

私もこの映画についてはもう忘れたい。

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