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雪原で犬に感謝

北海道での目的その二は犬ぞりに乗ることだった。
植村直己や角幡唯介みたいな冒険野郎が乗るもので自分とは無縁の世界だと思っていたが、10年くらい前に新聞でこの人の記事を読み、がぜん犬ぞりというものに興味が湧いた。

カナダに一人住み、犬ぞりをやっている本多有香さん。

『犬と、走る』本多有香
2014 集英社インターナショナル

一人で森を拓き、小屋を建て、20数頭もの犬を飼って訓練し、犬ぞりレースに出る。一人前のマッシャー(犬ぞり師)になるまでの苦労は並大抵ではなく、独り立ちしてからも悠々自適とは程遠い。犬たちの日々の世話やレースエントリー費の他出場経費を捻出するために、マッシャーだけに専念することはできず様々な仕事もする。
著作の他にもユーコンクエストというアラスカ-カナダの1600kmレースを彼女が完走するまでのNHKのドキュメンタリーを見て、なんて過酷なんだろうと思うと同時に、そんな苦労をしてでも魅せられるという犬ぞり、いつか体験してみたい!とずっと思っていた。

犬は大好きだ。特に人間と一緒に働く犬 - 盲導犬・聴導犬・補助介助犬・警察犬・災害救助犬・違法物捜査犬・猟犬・セラピー犬、子どもが読み聞かせをするのを傾聴する図書館犬というのも最近知ったが、そういう犬たちに惹かれる。
犬に働かせるのはかわいそうだとか人間のエゴだと言う人もいるけれど、前世は牧羊犬だったらしい身としては働く犬にはシンパシーを感じる。

帯広の近くで犬ぞり体験ができる所があるよと夫が見つけてきた。
本多有香や植村直己みたいにガチで過酷な自然と向き合うわけではなく、あくまでも体験だけれど犬ぞりは犬ぞり。
12kmのコースを8頭の犬が引くそりで周る。

鹿追町瓜幕のマッシングワークス
アラスカンハスキー達がワウワウ出迎え

運営代表の滝田さんからソリの乗り方、体重移動やブレーキのかけ方、途中で犬の列が乱れた時(走りながらウンチしたりとか)の対処などのレクチャーをまず受ける。
今日の担当メンバーが繋がれると、選抜からはずれた他の犬達が大興奮でジャンプして吠える。

みんな走りたくて走りたくて、オレも、あたしも走らせろー!と騒ぐそう。
出走前のメンバーたちもテンション上がりまくっている。
マラソンのスタート待ちでアドレナリン大放出するのと同じ感じ?わかるわ〜。
スタートの合図で犬たちはそれは嬉しそうに走る走る走る。

滝田さんがたくさん撮影してくれる

何もない雪原に、耳をヒラヒラさせて走る犬たちのハッハッという息遣いとそりの音だけ。

途中何度か休憩を入れると、暑くなった犬は雪に転げてクールダウンしたり、滝田さんに甘えたり。
休憩はいいから早く走ろうと、すぐにスタンバイする犬も。

そりは二人乗りで前が座り、後ろが立つ。夫と途中休憩で前後入れ替わったが、座高の高い夫が前だと犬が見えない💢!

当日引いてくれたメンバーたち。

上から先頭、2番手3番手4番手。先頭は経験を積んでコースを把握していたり、ちゃんと指示を聞いたりできる犬がつくが、隣りとの相性や状況によって配置は変わることもある。
でも、中には絶対に先頭しかやりたくない犬もいるそう。

今日の選抜以外にも、まだたくさんいる。
顔も名前もみんな個性的

先頭の2頭、リードのジャンボとジュニアは落ち着いて堂々としていたが、3番手チームのヴィタとエミリーはしょっちゅう頭を上げてキョロキョロよそ見していて、滝田さんからも「エミリーちゃんは相変わらず集中力がないね〜」と言われていた。エミリーはまだ3歳、メンバー中最年少。
いつか、立派に先頭でリードして下さい。

向こうには大雪山

そりにも慣れて、犬たちの走るスタイルや個性が徐々にわかり、周りの景色を見たり上り坂では自分も片足で地面を蹴ってみたりする余裕も出てきたところで終わりの時間。

お疲れ様。ありがとうね。

滝田さんの一頭一頭に注ぐ愛情と、それに応える犬たちの歓びがこちらにも伝わってきた。

楽しかった。またね。

滝田さんも犬たちも、本当にどうもありがとう。

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