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親の老いに向き合う - 母の緊急搬送と『ボーはおそれている』

帰省中の先週土曜日、母が夜中に大量に鼻血が出て止まらなくなり救急車で救命センターに搬送された。
母は普段は血圧は正常で、血流をサラサラにする薬も服用しておらず、本人曰く「鼻血が出たのは子どもの時以来」。

宵っぱりの母、その日も12時前に入浴。先に入った私はもう寝ようとしていた。浴室から呼ばれて行ってみると母も辺りも血まみれで、転んでどこかを切ったのかと思った。
鼻からはほんとに「ドクドク」という感じで尋常ではない量の血が吹き出している。
でもその割にはしっかり意識はあり、「なんか急に鼻血出てきた。タオルが汚れる」と、タオルの方を心配している。
まず#7119に電話して救急安心センターに状況を話し、やはり救急車呼んだ方がいいと言われて改めて119。

普段は私一人の帰省だが、今回1年ぶりに娘も一緒に帰っていたので二人がかりで母の身体を拭いて服を着せる。
救急車待つ間も「お風呂がすごく血で汚れてる!きれいにしなきゃ」と何度も言う母に、娘が「どうせおばあちゃんの次に私が最後にお風呂入ることになってたんだから、洗って拭いとくから大丈夫」となだめる。

救命センターへの道中も、流れ続ける鼻血をビニール袋で受け止めながら「ビニールから鼻血漏れてない?セーターに血ついてない?明日ダンス教室なんだけど休みたくない。」と救命士や私にしつこく聞いて「おしゃべりしないでじっとしてましょうか」と注意され、年齢聞かれると「89歳です!」と2才サバ読み。

処置室に入って40分ほどで、元気に歩いて出てきた。
紹介状書いてもらった耳鼻科を受診するよう言われて帰宅したのが午前2時過ぎ。
その後も出血はなく、耳鼻科で改めて内視鏡で見てもらうと中鼻腔の細い血管が切れていたそうで、レーザー治療してもらった。
一時的に血圧が上がったことが原因らしく重篤な病気ではなくてよかった。
確かに鼻血が出た日の日中、母はちょっと気持ちが昂ぶる出来事があったり高カロリーの食事を爆食したり、孫娘に1年ぶりに会いハイテンションというか普段より血圧が上がる状況にはあった。
たまたま娘や私がいた時だったからよかったけれど、一人でいる時、しかも夜中で入浴中にこんな事態になったらどうすればいいのだろうと、今後のことがますます不安になる。

話は変わるが帰省中、娘と『ボーはおそれている』を観に行った。
前評判ではけっこうこき下ろされていて、苦行の3時間だとか言われていたけれど、私は楽しめたし、ところどころ笑えて荒唐無稽なホラーコメディとしてよくできているなと思った。
冗長と言われている森の中の劇場面も、全然余計なシークエンスとは感じず、物語も美術もいいなーと見ていた(その後に起きるであろう大惨事を予感しつつ)。

主人公を演じるホアキン・フェニックスが終始ずーっおどおどびくびくしていて、神さま彼になんとか救いを!という祈りも虚しく、こうくるんじゃないかと思った通りの不運の波状攻撃を受けるボー。

おもしろい映画ではあったのだが、帰省中で毎日母と接している最中だったこともあり、どうしても映画のテーマの一つである母親との確執を我が身に引き寄せて考えずにはいられず、ちょっと心が痛かった。
何事にも完璧主義の私の母が子どもの頃から重くて重くて、大学で親元を離れたときにはものすごい解放感だった。
離れていれば大丈夫だけれど、帰省すると滞在中は必ず母から怒られる事態が発生する。
認知機能障害になってもそれは変わらず。
これは母が生きている限り続くのだろう。

翻って娘に対する母としての自分だって、充分毒親で反抗期の仲は険悪だった。
映画見終わって娘に「いや〜、ボーにしても外科医一家にしても、あの親子関係見せられるの辛かったね。」と言ったら、「まぁ親と子なんてどの家でも何かしら問題抱えてるでしょ。なんも無い方がおかしいよ」と淡々としていた。
でも親子で鑑賞するのは結構きつい映画かも。
そういう意味ではアリ・アスター監督、観る人にグサグサくるホラー作品としては目論見通りだった?

おまけ。
母のごちゃごちゃスケジュール帳に「夜ブレイキン」の記入。

NHKの番宣を見て興味を持ってスケジュール帳に書き込んだよう。
好奇心はまだ顕在でよかったと言うべきか。

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