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初めての原初舞踏ワークショップが凄かった

7月7日日曜日に ドーム映像作品『HIRUKO』のワークショップに行ってきました。ワークショップって初参加だったんですけど、自分で体験することで得るものは桁違いだなと感じた次第。以下感想です。


まず映像ドーム作品『HIRUKO』って何?

「プラネタリウムで観るアート映像作品」です。アート作品だから映画館で観る映画というより美術館で流れている映像作品という感覚で行ったほうがいいかも。↓公式HPより。

映像作家 飯田将茂と、舞踏家 最上和子によるドーム映像作品『HIRUKO』の制作・発表プロジェクト。
ダンサーを撮影する独自のアプローチにより国内外のプラネタリウムでドーム映像作品を発表してきた飯田が、原初舞踏を提唱し身体の探究を続ける舞踏家の最上和子と出会い、舞台や映画のフレームを超えた全く新しい視点で身体映像表現に挑みます。

今回のワークショップは主演の原初舞踏家最上和子さんによる原初舞踏の体験です。
9時半から1時過ぎまで3時間半。はじめに声を出して身体をほぐし、その後3つのワークを体験しました。

丁寧に優しく柔らかく、そして丁寧に、もっと丁寧に

最上さんが最初におっしゃったのは、ひたすら丁寧に行ってほしいということだった。優しく、柔らかくを意識して、いちばん重要なのは丁寧に行うこと。雑にならないように身体が気持ちいいことを優先していく。
最上さんが行う稽古は一般で言うダンスというより瞑想に近いとのこと。
聞いただけじゃ気持ちいいってどういう状況かわからなかったけど体験したらわかる不思議。ほんとに気持ちいい。

■声出し
皆で円になり「おー」と声を出す。「お」は下に向かう言葉、「あ」は上に広がる言葉。地面に沈み込むように10分間声を出していく。無理をせず怒鳴らず息を吐くように「おー」と声を出し、吐ききったらまた声を出す。

目をつぶり声を出していると自分の声じゃないみたいに音が響く。
とても機械的で筒の中から聞こえてくる音の様に感じる。途中で自分の音程が変わったのが面白かった。
みんなの声と反響して暗い洞窟の中にいる様に感じた。

■ワーク1:床稽古

①床に寝て身体の力を抜く 10分
②10分かけてゆっくり立ち上がる
③ゆっくり歩く。これも10分
これを2チームに分けて行う。1チームがワーク中他チームは見学。

①床に寝て身体の力を抜く

重力を感じるように力を抜く。地面と身体の境がなくなり、床からの抵抗を感じなくなるように。重力を感じて脱力すると自我がなくなるという言葉が印象的だった。自我がなくなったら楽だろうな。
抵抗を感じたらその部分に「力を抜いて」と心の中で声をかけてあげる。命令したらだめ。優しく声をかける。そうしたら不思議と力が抜けてくるとのこと。ボディービルダーが筋肉に語りかける話を思い出した。きっと同じ事だよね。

さて、実際の感想だけど重力を感じて重くなったなーと実感できたのは下半身だけだった。つま先あたりからだんだん重くなって、腰辺りまで重くなる。でも頭と肩はしっかり床を感じて固い。「固いな〜あ、でも足は重いわー」と思っていたら10分経っていた。私には時間が足りなかったのかも。

うまく脱力できたら床との境がなくなり、広がっていく感覚だという。凄い世界。ここでちょっとまた思い出したのが、前にバイリンガルニュースでマミさんが紹介していた「アイソレーションタンク」。自分の体温と同じくらいの温海水タンクに横になって浮かび感覚を遮断するタンクがあり、それに入ったら自分が溶けて世界中に広がっていく感じがしたとおっしゃっていた。同じ感覚なんだろうか。あれ、待ってそういえば新世紀エヴァンゲリオンの人類補完計画ってそんな話じゃなかったっけ。

②10分かけてゆっくり立ち上がる

脱力したらそのまま筋力の反動でなく力を入れずにゆっくり起き上がる。
これがなぜかとても難しい。力が抜けきってるからどうやって立つかわからない。まず足を立てて、横向きになって、四つん這いになって…とゆっくりゆっくり進めていく。身体はぐにゃぐにゃで重くて床に当たるところはとても固いしで、難しいな〜と思いながら身体を起こしていく。
でも四つん這いからゆっくり身体を起こしていく間に物凄い気持ちよさを感じた。腕がブラブラして足は少ししびれてビリビリしているのけれどゆっくりゆっくり自分が起き上がって行くのがわかる。ほんとに少しずつだけど、背骨や背中の筋肉が動いているのがわかって、そこに突然バーンとジョージ・ウィンストンの美しい音楽が流れ始め、「あーすごく気持ちいい、このまま最後まで起き上がりたい」と思っていたらあっという間に制限時間が来て気づいたら20分経っていた。つまり最後の歩くワークまでたどり着けなかった。
周りをみても歩けるまでいった人は少なかったと思う。初めてだと時間がかかるのも珍しくないらしい。いちばん大切なのは身体が気持ちいいことを優先すること。初めての体験で、その感覚を経験できたのはとても貴重だった。貴重な経験ができましたってよく聞くけどこういうことなんだな。

床稽古の見学
他のグループがワークしているのを見る。30分座りっぱなしだけどあっという間。皆それぞれ動き出すタイミングや速さ、形が違っていて見入ってしまう。人がゆっくり立ち上がる様子は見ていて本当に感動した。ここに音楽が合わさると本当に舞っている様で、人間の原初的で柔らかく無防備な美しさを垣間見ている感じがした。とても澄んだ美しさに満ちた空間だった。でもこう感じることができたのは自分も体験したからだと思う。見る側にも受け取る用意が必要なんですね。

■ワーク2:茶碗で飲む

普段の動作を10分かけて行うワーク。楽に座り、目の前に茶碗を置き、両手で抱えて飲み、茶碗を置く動作。
まず座り、茶碗と自分の空間を作る。背後にも感覚を広げることが大切。
この、背後を意識するというのがとても大切。背後を意識できているかどうかで、例えば舞台役者だったら舞台での存在感が全く違ったものになってくるという。ただ立っているだけでも、背後を意識できているかどうかで明らかに違うという話がとても興味深かった。

ワークの前にまず触覚の肌理を整え手のひらの感覚を高めていく。床に手を置き、床の感覚を覚える。次に手のひらを合わせ、こすり合わせる。触覚の肌理が整うとまるで吸い付くように手のひら同士が感じられる。次に優しく頬を触り、ゆっくり首、胸、腹と手を滑らせていく。最後に床を触る。床と身体の表面が一枚に繋がっているように優しく触っていく。すると、最後に床を触ったらはじめに触ったときと感覚が変わる。まるで吸い付くように感じられる
実際やってみるとちょっと変わったように感じたけれど劇的に変わった感じはしなかった。それより、落ち着いて自分の身体に優しく触った時の感じがとても気持ち良かったのが印象深かった。

これでまた思い出したんだけども、老人ホームで入居者の女性にお化粧をするサービスがあって、それを経験した方はとても笑顔になり、見た目にも若返り、いい影響があったというニュースがあった。化粧水やファンデーションを塗る時に、他人に丁寧に肌を触られたり、自分で優しく自分の肌に触れる。その経験がいい影響を与えるという。昔から病気や怪我の治療を手当てというし、触れる事はそれだけで力になるんだろうな。

茶碗を持つ動作は結局、茶碗に触って持ち上げるところまでで10分経ってしまったんだけど、茶碗に触れた瞬間、「あ!触っちゃった!!」「嬉しい!」と謎の喜びがあって不思議だった。もっと触りたい!と思って右手と左手で包み込むように茶碗に触れる。いつも触っているのにその質感がはっきり感じられて触れていてとても気持ち良かった。
ただ触るだけでこんなに気持ちいいのだから、唇に触れ、水を飲んだらどんなに気持ちいいだろう!と思う。

■ワーク3:踊り

皆で円になってゆっくり歩きながら踊る。好きなように手を動かして気持ちよさに身を任せて美しい音楽に合わせて踊る。

踊る前に腕を上下に動かす。動かす際は腕の表側ではなく裏側を意識する。そうすると驚くほど腕が上げやすくなる。横に開くように上げるのではなく身体の前を縦に上げて、下げる。最上さんの動きが美しい。ダンスや演劇でもこれを知っているのといないとでは全く動きが変わってくるという。

実際にゆっくり歩きながら腕を好きに上げ、下げているととても気持ちいい。腕を上げるだけで踊りになるんだなと驚いた。実際どう見えていたのか外から見てみたい気もする。

感想

最後に感想などを話し合ってワークショップは終了した。
参加者それぞれとても満足そうで、初めてのワークショップはとてもいい雰囲気だった。
終わってみて、初めて感じた感覚を味わえたことがとても嬉しかった。
普段から動作を丁寧に行ったり、一つのことに集中するということを意識してみようと思った。思い出した時に。気づけば何かする時必ず2つ同時に行っている。ラジオを聴きながら仕事をしたり、テレビをつけながら食事をしたり、私の場合、常に音がなっている。これが普通で、音がないと寂しく感じるけれど、無音で一つの動作に集中してみると普段と違う感覚が蘇ってくるだろう。
そういえば大学の哲学の授業で、教授が「最近何もしない時間に耐えられない人が多い。例えば10分、20分何もしない時間を普段から持つことができるか。何もせず自分と向き合う時間を持つことが大切」と言っていた事を思い出す。それが難しいんだよーと思うけど自分の身体と向き合うことから始めてみようかな。

自分の身体に出会うって楽しい。

きっとはじめての感覚を味わえるので、「原初舞踏ワークショップ」おすすめです。

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