見出し画像

不思議な癒しの物語 Vol.4 蒼の歌

オリジナルの即興サウンド「エッセンシャルサウンド」を聴きながら
空間から届いたコトバの連なりたちを紡いだ作品シリーズです。

* * * * * * * * * * * * * * * * *

【蒼の歌】

いつの間にか たたずんでいたのは
昔見た 古い映画のポスターの
端の方に描かれていた
四角い階段の上・・・

風の音が
かすかに流れて・・・

そういえばたしか
この先のトウモロコシ畑のわきに
大きなけやきの樹と
小さな小川があって・・・

どこへ行こうとしていたんだろう

わかっていることは
胸の奥が あたたかくなる
その調べの
示す方へ・・・


空が廻り始めて
笛の音が聴こえてきて

夏祭りのお囃子のような
懐かしい音色に混じって

朱色をした便りが
ふいに 届く


何度も何度も
繰り返し重ねてきた
心の旅の記録は

知らぬ間に降り出した
霧雨のしぶきにのって

新たな便りとなって
誰かのもとへと
届くだろう


何回目かの瞬きの後
子供の頃に好きだった
名前も知らない歌を
思い出した

調子はずれの
意味のない
ことば遊び

なぜ好きなのかもわからない
その歌のふちどりが

僕の心を
まあるく
とかしてくれて


気が付くとまた
歩き出している


雨はまだ続く

しずくの間をくぐり
透明なトンネルを抜けて
けやきの樹の前に来ると

ふんわりとした
甘い花の香りがして
やさしくささやいているようで・・・


そそり立つ柱や
かたくて重い鉄の扉は

やわらかな香りに
とけてゆく

広々とした芝生の丘が
瑞々しい緑色の光で
出迎えてくれる


また
あの歌を歌おう

はじまりを思い出す
名前も知らない
あの歌

きっと
どこへでも行ける


笛の音が聴こえてきた

そろそろ

はじめようか


* * * * * * * * * * * * * * * * *

youtubeにて本作品の朗読もしています。
もしよろしければこちらもご覧ください。
https://youtu.be/UkxAT0hsQjo

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?