見出し画像

社員が市場で癒されるため会社を転職エージェントにします、なの?

先日は新しい「仕事と私、どっちが大事なの」問題について考えた。その中で、仕事も家族も娯楽も消費も個人から見たら何もかも一緒くたに混じり合っていて、そんな中でこれから会社って何していけばいいんだろうって思った。

(先日の投稿)

会社では、実際にチームを率いるリーダーとしての自分もいて、メンバーとの関わり方について悩むことは多い。個人に依る問題は、個別に見ていくしか無いけど、そもそも環境変化への対応はアップデートしておきたい。
つまり、この娯楽と仕事が差別化できない時代で、職場は何をする場所なんだろうか。社員の中の「市場」に対しての影響をなんとかしなければならなさそうだけど、「市場に癒される」を与える事なんてできるのだろうか。そんな事を考えていきたい。

まずは、改めて現在の職場が置かれている状況について仮説を立てよう。大きな変化としては、従来の日本を代表する大企業は、家族的で親密性を重視する事が多かったが、社員はより自分の「市場」での価値を重視して自由を求める様になってきた※。一方で、人手不足が進んでいることもあり「働き方改革」など社員が人生の長い間を安心して過ごせる様に取り組む職場も増えている。

※背景となる環境はいくつも考えられる。転職市場の拡大やこれまでの大規模倒産の歴史からか1社に勤め続ける信仰が薄れた事や、あるいは長寿化によって単純に会社の寿命よりも人生が長くなった事。インターネットによる個人の影響力の増大や、人口減少も絡んだ人手不足により需要が増して働く条件が選べる様になった事。など。

ここで切り分けて考えたいのは、*「人手を確保すること」と「長く勤めてもらう」は必ずしも両立する必要はない*。人手不足なので、なんとなく両者を併せて考える事が多いが別物だ。
前者は事業が回るのに必要な労働力が欲しいというニーズで、後者は(会社特有の専門的な作業などで)経験を深めて活躍し続けて欲しいというニーズだ。アプローチも異なるために、2軸に分けて考える。

1. 「市場(自由)と親密性」のバランス軸
2. 「個人の人生」に寄りそう時間軸

一点注意は、会社としての良し悪しは議論していない。つまり、本質的に会社が目指している方向性について2軸で分けて考えている。実際には「市場」を重視していても(転職)「市場」から評価が高いわけではない会社もいるが、その会社が「市場」とは逆の「親密性」に注力しているかといえばそういうわけではないという事。

(閑話休題)
余談だが、2軸目は「会社」というもの特有の軸なのかもしれない。「会社」の目的(のひとつ)は“永続性”にあるために、可能な限り長時間の人材確保が必要だ。これが「コミュニティ」であればプロジェクト的に目的が達成されれば解散も起きる。コミュニティの目的は集まる人そのものと言っても良いので、軸も集まる人の多様性の幅や関与度などが軸となるのではないだろうか。また別の機会に考えてみたい。

話を戻して、2つの軸について色々な企業がどこに属すかを考えてみる。もちろん、会社には色々な職種があり会社全体としては務める長さは問わないが一部の部署(例えば管理部門など)は長く務めるのを望むなど社内でも分かれている場合がほとんどと思われる。ここでは、あくまで利益を稼ぐ事業(現場)での人材に対する志向を考えていく。

(図: 市場と親密性 x 人生への関与)

(粗いけど、メモ書きで一旦貼り付けてみた。)

4つのエリアに分けた時、いわゆる第一象限にあたる右上の「市場寄り」で「人生に長く関わる」エリアは、市場価値の高い人間をさらに成長させて事業にかかわらせる。ここは”成長競争型”の企業と名付ける。ここはテクノロジー企業などが当てはまる。例えば、googleやAppleなんか、日本の企業で言うとメルカリなどが当てはまる。
次に右下の「親密性寄り」で「人生に長く関わる」エリアは、家族的な組織で、新卒で入って定年まで過ごす様なモデルの会社だ。こちらは”家族主義型”の企業と名付ける。従来の製造業などの大企業が含まれる。
そして、いわゆる第三象限の左下の「親密性寄り」で「人生への関与度が低い」エリアは、多くのサービス業の様なバイトなどが多く、人の出入りが激しい事を予定している様な会社となる。ここは”システム型”の企業と名付ける。飲食チェーンやコンビニなどが含まれる。
最後に、左上の「市場寄り」で「人生への関与度が低い」エリアは、市場価値の高い人間をリソースとしてサービスなどを顧客に提供するので“エージェント型”の企業と名付ける。多くのプロフェッショナルサービスが属し、筆者の所属する様なコンサルティング会社も含まれる。例えば、同じ市場寄りでもコンサルティング会社とテクノロジー企業の違いなどは、こちらの記事などからも見てとれる。

(参考: コンサルと事業会社の違い)

会社の目的によって実際に企業が用意する「生き方」には違いがあるだろう。さらに「市場に癒される」事は実現できるのだろうか?

まず、”成長競争型”の会社が提供するのは、「徹底的な個人の成長」だと思う。参加した個人は、高い能力を持ったメンバーと、激しい競争にさらされる市場での成功を目指して持てる時間の全てを費やす。うまくいけば、市場で評価されるトラックレコードと、起業など含めて将来の成功をサポートしてくれる人脈が手に入る。事業の成功で、重要なポジションを占めればセミナーでの登壇など評価も受けやすい。
次に、”家族主義型”の企業が提供するのは、「良い出自」だ。大きな目標に向かって、会社の全員で努力をする。結果として、市場でも信頼される会社になり、その一員の自分は評価される。友達や、親戚などから、「あのXXに勤めてるのは安心だ。」など言われて安心できる。会社が苦境に陥った時にも、みんなで手弁当でも解決できるまで頑張る。それも、一体感があって嬉しい。そいういった、生き方だ。
三つ目は、”システム型”の企業では人生の全ての時間をかける事は求めない。むしろ、ある程度のノウハウを習得したらリーダーになり、フランチャイザーとして独立する事も推奨する。もちろん、一部のメンバーは残って管理系の職務につくことは推奨されるが、いつ抜けても良いし、会社も相手の人生に立ち入ることを求めていない。働く人は、職場で仲間やお客さんと出会い、自分の仕事が認められる事で生き生きとする。自分たちを活用して、よりよい人生を実現してほしいと望んでいる。つまり、会社は儲ける手段と運営経験を提供している。
最後の、“エージェント型”の企業でも会社の関わり方は限定的だ。会社は、市場でも評価される、豊富な業務経験を積む機会を与える。メンバーは比較的高めの報酬を得て、自己投資にも余念がない。ある程度経験を積んだメンバーは、管理職になるほか、より長期にわたる人間関係や事業経験を求めて”成長競争型”の企業に転職したり、得たスキルと評判を担保に独立の道を進むなどをする。ここでは、会社は市場価値の高いスキル開発を提供して転職など本人の次のチャンスに備える機会を提供している。

この中で、それぞれのタイプの会社はメンバーの「市場」での価値を上げるためにどうしたら良いだろうか?

ここまで書いたところで、「市場」が何を指すのか曖昧なことに気がついたが、本稿の中では「市場価値が高い」は(会社がいる業種のビジネスモデルで収益性が違うという前提はあるが)給料が比較的高くもらえる事としている。

”成長競争型”と”家族主義型”の企業に関しては、会社自体の市場価値を上げる事がそのままメンバーの「市場」での価値を上げているとも言える。規模の大きさなどでのより高い目標、(グローバルなどでの)激しい競争に勝つ事がそのままメンバーの市場価値につながる。また、”成長競争型”の企業ではメンバーにも市場の評価と繋がった評価がダイレクトに与えられる様にするべきだし、”家族主義型”の企業の場合にはうまく会社の市場評価とメンバーへの貢献の評価をつなげる必要がある。

ところで、多くのメンバーは市場価値を考える場合に”転職のしやすさ”を基準にすることは多いと思う。転職市場での評価について考える場合、求人を出す会社にタイプの偏りがある事に注意が必要だ。例えば、”家族主義型”の企業は求人が少ないと思われる。実際に転職の際に評価軸が偏っているとしたとき、転職市場での評価を気にしてメンバーへの成長環境の提供などをするべきなのだろうか?

個人的な考えでは、特に「人生に長く関わる」タイプの会社は転職市場の評価をあまり気にするべきではないと思う。会社に長くいてもらう事が前提であり、転職していく人(逆に入ってくる人)へのベネフィットは優先度が低いからだ。

一方で、”システム型”や“エージェント型”の企業では、メンバーの市場価値を高めるために何をするべきだろうか?これは、メンバー自身の成長が鍵となると考えられるので、経験を積むためのチャンスを多く与える事が重要になる。多くのメンバーに機会を与えるためには、できるだけ権限委譲をして現場のリーダーを増やし、経営に関する判断を分散する事が必要だ。だとすると、現場のメンバーも経営情報を知っているなど情報共有の仕組みなども大切になってくる。それらの(ごく一部でも)経営への参画経験は、転職市場でも優位に働くと考えられるので社内共有を進める必要あるのではないかと思う。

まとめると、会社がメンバーの「市場に癒される」をサポートするのは重要になってくる中で、何を進めるべきかについて考えた。
しかし、会社にはいくつかタイプがあるので「長く勤めてもらう」事を前提とする場合には会社自身の市場評価を上げる事と、市場評価が人事の評価がリンクする仕組みを作る必要がある。一方で、「人手を確保すること」に注力していて人が出入りしていく事を前提としている会社は、経営判断のチャンスを分散させて、経営情報の共有も進める事が大事なんじゃないかと考えた。

まだまだ生煮えで、固いくて長いけど、一旦は吐き出しておく。


読んでいて幸せになれたら、僕にも教えてください。きっと、僕も飛び上がるほど幸せです。 感謝の気持ちを、あなたの居るほうへ送ります💌