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阿武咲に夢中な日々。あなたは私の保湿クリーム

本コラムは「マヨ」さんに寄稿いただいたものです。

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「阿武咲が好きすぎてどうしたらいいか」

これが私のLINEプロフィールである。
今や会社でもLINEで業務連絡をする時代。
上司とも繋がっている中で、これだ。
一種の病気である。

そもそも相撲自体にハマったのもつい1年半ほど前で、相撲ファン歴=阿武咲ファン歴と短い。つまり阿武咲の存在が、私を相撲にどハマりさせた一番の要因なのである。

元々祖父母、両親皆相撲好きであったため、子どもの頃から相撲中継は見ていた。千代の富士や若貴ブームのときには子どもながらにはしゃいで見ていたし、新年の集まりでは土俵入りの真似をして親族を笑わせていたほどだった。
しかし、なかなか実際に見に行く機会はなく、ハマるというレベルではなかった。

「相撲健康体操」が引き金に

そんな中、人生の転機が訪れた。

2017年8月。相撲マニアの友達から、「相撲健康体操に行こう!」と半ば無理やり誘われたのである。
相撲ファンならご存知だと思うが、相撲健康体操は毎年夏休みの時期に国技館で開催されており、親方や現役力士さんが蹲踞や四股を中心とした相撲の動きを教えてくれる、大人から子どもまで楽しめるイベントである。
しかしそのときは「暑い中四股を踏むなんて、正気の沙汰じゃない……」と思いながら、しぶしぶ着いていっただけだった。

しかし、これがすべての始まりになるとは――。
人生で初めて間近で見る力士の大きさや迫力、鬢付け油の香り、四股を踏むことの気持ちよさ……いろいろな要素が私の心に深く響いてしまった。
その後、遠方に住んでいる友達を差し置いて、ほぼ毎日国技館で四股を踏んでから出社する日々が続いた。

ここまで来ると思いはただひとつ。

「生で相撲が見てみたい!!!!!」

相撲マニアの友達に告げたところ、思惑通りとばかりにニヤリと笑い、九月場所を一緒に見に行くことになった。どうやら私には相撲にハマる素質があると、薄々感づいていたらしい。元々ジャニーズや宝塚、ビジュアル系といった線の細い人が多い世界にハマってきた私が、それとは対照的な世界にのめり込む素質があると見抜くとは……相撲ファンのレーダーは恐ろしい。

九月場所を生観戦。昼前には相撲の虜に

そして待ちに待った9月。深夜3時頃から国技館に並び、当日券で相撲観戦をすることになった。相撲マニアの友達のプランは素晴らしく、当日券2,200円で1日中楽しめる方法を伝授してくれた。

朝一番で入る誰もいない静寂に包まれた国技館、力士の体と体がぶつかり合う音、響き渡る相撲ファンの歓声、呼出しさん・行司さんの美しい所作、入り待ち・出待ちでの交流、各部屋特製のちゃんこ販売等々。

テレビ観戦では味わえない、当日ならではの楽しみをたくさん見せ付けられた。
午前中で私はすでに、相撲の虜になっていた。

ふと友達にお気に入り力士は誰かと聞くと、同郷の稀勢の里・高安の他に、気になっている若手力士がいる、とのことだった。

そう、それが阿武咲である。

それはぜひ見てみたい! と思い、入り待ちで「おうのしょう」を探した。
しかしながら、「おうのしょう」=「阿武咲」と脳内変換できるわけもなく、浴衣に「大栄翔」の文字があった力士を見るなり、「おうのしょうだ!」と叫んでしまったことは今では良い思い出である。

阿武咲の第一印象は「怖い……」だったけど

そしてようやく現れた阿武咲。
初めて見た感想は

「怖い……」

であった。
勝負前の気合の入ったそのものの顔であることは間違いないのだが、他の力士と比べても圧倒的に怖かった(ごめんなさい)。
その前に当時三段目であった可愛らしい笑顔の炎鵬と話をした後だったから余計に、だったのかもしれない。

どちらかと言うと、そんなマイナスの感想を抱きながら、初めて阿武咲の取り組みを見たのである。

するとどうだろうか。

鳥肌が立った。

力士の中では背も低く小兵の部類だと言われているが、そんなことを微塵も感じさせない力強さで、自分よりも大きい相手に真正面からぶつかっていた。
取り組み前後の、勝気で若いパワーがあふれ出る姿、相手を睨み付けるような表情、すべて私には魅力的に映った。
子どもの頃は、舞の海のようなさまざまな技を繰り出す力士を面白いと思っていたため、そういうタイプを好きになると思っていたが、まさかこんなに真正面にぶつかっていく力士が気になるとは……! 衝撃であった。

知れば知るほど、見れば見るほど夢中になる力士

そんな夢うつつ状態な初観戦を終えて、強い印象を残した阿武咲のことを調べ始めた。

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高校に入ったが、プロでやっていけるという自信を持ち、中退して角界入りしたこと。

多くの部屋から声がかかっていたが、短い力士人生を濃いものにしたいと、厳しいことで知られる阿武松部屋をあえて選んだこと。

負けん気が強いが涙もろく、家族のことをとても大切に思っていること。
※年の離れた弟さんがいるためか、イベントで小さいお子さんとの触れ合いがあると、普段なかなか見せない優しすぎる笑顔が見られるので必見!

乾燥肌のため、保湿クリームを使って肌を守っていること(可愛らしい……)。
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阿武咲の取り組みとエピソードを知れば知るほど、その相撲スタイルと人間性に惹かれ、あっという間に虜になった。

バラ色のファン人生。このまま勝ち続けて上へいく、と信じていた

阿武咲にハマってからは、ほぼ相撲と阿武咲(と酒)の人生である。

両国では場所中2~3回は観戦、巡業にも参加、入り待ち・出待ちだけする日もある。
阿武咲が出演するイベントはネットを使い調べ尽くし、増上寺の餅まき大会や各種募金活動、部屋の地元スーパーでのイベント、トークショー等々、天候・場所に関わらず行けるところには足を運んだ。

会社のデスクは阿武咲グッズで溢れ、持ち回りの社内スピーチでは阿武咲の魅力を語り、飲み会では阿武咲のタオルを振った。

私が阿武咲にハマってからのファン人生はバラ色だった。
見る場所見る場所すべて勝ち越しし、新入幕から3場所連続の二桁白星という素晴らしい成績で、あれよあれよと番付を上げ小結へ昇進した。
小結として初めての11月場所では、苦しい連敗があったものの、持ち味の前に突き進む力強い相撲で、勝ち越しを決めた。

「私が応援している力士がこんなにも活躍している……!」

それがどれだけ誇らしいことか!
相撲を知らない友人にも阿武咲の名前を散々伝えていたため、結果を気にしてくれる人が増えており、鼻高々であった。
私が応援している限り、阿武咲は永久に勝ち続けるとさえ感じていた。

怪我で2場所休場。本人の内心を思うと辛すぎた

そんな幸せ絶頂の中、あまりに辛いニュースが飛び込んできた。
2018年一月場所10日目、怪我による休場が伝えられたのである。

1月は両国での開催に加え、場所中に自分が誕生日を迎えるため、意気揚々と誕生日当日に桝席のチケットを用意していた。しかしその日、土俵に阿武咲の姿はなかった。
短い相撲ファン人生だが、こんなに落ち込んだことは初めてだった。

次の三月場所も全日休場を余儀なくされ、三役まで上り詰めたにも関わらず、あっという間に十両へ陥落した。
実力世界の厳しさをまざまざと見せ付けられた。

この頃の私の心は鉛のようであった。
もちろん相撲自体が好きなので、毎日相撲は楽しく見ていたし、巡業やイベントも欠かさずチェックしていた。
しかし、今この瞬間も、土俵に上がれないことを悔しがり、苦しい思いをしている阿武咲がいると思うと、いても立ってもいられず、心が押し潰されそうだった。

そんな苦しい時間を過ごしながら、2場所の休場期間を経て阿武咲は戻ってきた。
阿武咲に会いたい気持ちが爆発してしまい、観戦はもちろん、時間が少しでもあれば入り待ち・出待ちをして、声をかけた。
ずっと応援していることを伝えたかった。
勝っても負けてもいい、土俵の上で姿を見せてくれるだけでいい、そう思ってさえいた。

力強さや真っ向勝負だけじゃない。危うさすらも魅力

そんな思いとは裏腹に、苦しい中で稽古に励んだ阿武咲は、復帰戦で見事十両優勝を果たしてくれた。
優勝した瞬間、涙が溢れ、嗚咽が漏れるほど号泣した。
喜びと安堵と、応援させてくれてありがとう、という感謝の気持ちでいっぱいだった。

結果を残し、見事再入幕を果たした阿武咲。
低く強い立ち合いからの突き押し相撲で、気持ちの良い白星を見せてくれると同時に、引いて落とされてしまうことも多い。
ライバルである大関・貴景勝の躍進を横目に、「私の阿武咲だってもっとがんばれるはずだ!」と鼻息を荒くすることもしばしばある。
しかし、この危うさすら私を虜にする魅力なのだ。

どんなスポ根漫画でもそうだろう。
良いときもあれば悪いときもある。
だからこそファンを魅了してならないのだと思う。

良いときは心から歓喜し、悪いときは落ち込み、さらに応援する。
苦しいときがあるからこそ、勝利の喜びをより感じることができる。

いつかは負け知らずの最強横綱になってほしい。
今はその場所に辿り着くために、悔しい思いや辛い思いをたくさんしてほしい。
そして人間的にも、力士としても、高みに上っていってほしい。

こっそりプレゼントした保湿クリームの話を最後に

長くなったが、最後にひとつだけ自慢をさせてほしい。
休場中いても立ってもいられず、初めてのファンレターと共に、乾燥肌の阿武咲へ保湿クリームをプレゼントした。恥ずかしすぎるため誰にも言わずに。
しかし、相撲マニアの友達と阿武咲のトークショーに参加した際、「ファンからもらったプレゼントで印象に残っているものは?」との問いに、なんと阿武咲は「保湿クリーム」と答えてくれたのだ!
友達含めて会場は笑顔に包まれていたが、私は感動で泣いてしまった。
その瞬間、友達はすべてを察した。
保湿クリームは阿武咲の肌だけでなく、私の心をも潤してくれた。

阿武咲は決して愛想が良いタイプではないと思う。
いつもニコニコし、冗談を言って周りを笑わせるような力士を好きになったらどんなに楽だろうか、と思うこともある。
しかし、だからこそ直接話しかけたときや、オフのときに見せてくれる笑顔や優しさがたまらなく愛おしく、もっともっと応援したいと思ってしまう。
すべて計算なのではないか? と思うくらい、私の心を鷲掴みにしてくるのだ。

これからも愚直なまでに自分の相撲道を突き進む姿、土俵上のふてぶてしさ、そしてたまに見せる優しい笑顔で、私を「阿武咲が好きすぎてどうしたらいいか」状態にし続けてほしい。

Text/マヨ
相撲とお酒をこよなく愛するサラリーマン。阿武咲関を愛する者として、自らを「阿武嬢(おうのじょう)」と呼ぶ。

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