職業、女。#20 離婚して形成された「ひとりベース思考」

 離婚して変わったことはたいしてないけれど、ひとつ挙げるならば「ひとりで生きる」を前提として物事を考え、決断するようになったことだと思う。しかも、無意識のうちにやっている。

 週末、友人と東銀座で食事する予定があり、店までぷらぷら歩いていると、築地警察署の裏手あたりで、不動産販売会社の若い女子に呼び止められた。「あのぉ、モデルルームを見に来ていただきたいんです」。新卒でノルマ達成に苦労していると聞いて同情した私は、道中だし、5分だけならOKですよ、とついていった。

 早足で歩きながら、私は自営業だから信用がなくてローン組むの難しいですよと話したり、営業が大変だという彼女に営業ができる人はどんな仕事もできますよと励ましたりした。週末は誰かと会う予定がない限り、観葉植物に呼びかける以外、ほぼ口をきかない反動で饒舌になる。

 歌舞伎座の裏路地にあるモデルルームで、3分ほど説明を受け、女子とはさよならした。渡された広告には築地駅にほど近い新築マンションの情報が記載され、価格帯は4000万弱。1LDK、44平米ほどで、設備は最新。はぁ、ほしい。狭くはないが、広くもない。ひとりで暮らすには無難。理想はがんばれば手が届きそうな、3000万弱の中古物件だけれど。

 帰宅後、改めて広告に見入る。電卓を取り出す。どちらが安いか頭の中でざっくり計算すればわかるが、細かく計算せずにはいられなかった。現在のマンションの家賃12.3万円×12ヶ月×15年=2214万円。

 45歳まで生きたい、と考える私は今年で30歳。だから15年を掛け算。引越して家賃が変動する可能性もあるが、とりあえず簡単に計算。やはり賃貸の方が生涯的にはおトクになる。でも、一回くらい自分の不動産を買う経験をしてみるのもいいよなぁ……。

 ここで考えていて、ふと気づく。自分の中で、他人と暮らすという選択肢が、すっかり消えてなくなっていることに。離婚から3ヶ月弱。ごくナチュラルに、この先ひとり身で過ごす気満々であることがわかり、すこしだけ複雑なきもちになったのである。

 結論=がんばって稼ぐ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?