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結婚式が嫌い

結婚式が嫌いだ。
フェミニストなのに、家父長制!家族賛美!ジェンダーロール!資本主義!装飾義務!#KuToo!が、これでもかと全部盛りのあんなイベントが好きなわけがない。

それに「神聖な誓い・二人がこれからパートナーとして生きていく意思表明」のはずなのに建前と虚飾だらけの日本の結婚式はかなり奇妙な風習だ。「なぜキリスト教徒でもないのにチャペルで(バイトの)神父だか牧師役の前で誓いを立てるという茶番に付き合わなければならないのか」とか、「ゲストを楽しませたいっていうなら新郎の上司のスピーチのような権威主義かつ絶対退屈なコーナーをなくしてほしい」とか、「友達のカラオケとか出し物も大抵は見るに堪えない、プロに余興頼めばいいのに」など不可解な点が尽きない。

昔からそういう思いを抱えていたものの、数年前に友達の結婚式というものが初めてだったのもあってうっかり出席して「堪え難い、自分は結婚してもこんなこと絶対しない」という思いを新たにした。ちなみに新婦とはその時以来友達付き合いをやめたので式に行ったこと自体が無意味になった。
以降、友人が結婚する時は「式には呼ばないでほしい」と頼むようにしている。いとこは全員結婚したが誰の式にも出なかった。

北海道など地域によっては会費制が一般的だということは知っているけれど、私は本州在住なので本州のスタンダードな結婚式を基に、かつ新婦友人として出席する女性視点をメインに話を進めたい。

日本のヤバい結婚式について思うところを以下に挙げる。

・ご祝儀3万円、+αの重責
バブルの頃に友人・同僚の関係からのご祝儀の額は3万円が定着して現在に至るというのは周知のところだろうし、「いまの(新郎新婦と同世代であることが多い)20〜30代にとって3万は痛い」というのは多くの同意を得られるのではないかと思う。非正規率が高く賃金が低いことが多い女性はなおさらだ。
さらに交通費や宿泊費がかかる場合もあるし、女性は衣装や美容代の負担もある。こうなるともはや災難レベルの出費。「ご祝儀にはゲスト自身の食事代も含まれる」という説もあるが、たとえどんなごちそうが出ても、カツカツの生活からなんとか捻出した数万円のことを思いながら食べる料理は味がしない。

・主催する方も金がかかる
新婦が式から披露宴会場へ移動する前に、ヴェールを外してちょいちょいっと髪を整えてもらうだけで「ヴェール外し代」という名目でオプション料金1万円を取られたという話も聞く。
『みんなのウエディング』によると結婚式にかかる費用の平均相場は316万円だ。
https://www.mwed.jp/articles/7017/
この金額を見て「自分の年収よりずっと高い」と思う人もいるのではないだろうか。
やる方も「ご祝儀で何割か回収できる」ことを当て込んで予算を組む。バブルが弾けて所得が下がり、3万は厳しいと言われているのにご祝儀の相場が下がらないのはこのせいだろうが、ウエディング業界いい加減にしてくんない?

・結婚=幸せ?
身もふたもない話だが夫婦のうち1/3は離婚すると言われている。
入学祝いに「退学するかもしれないし…」とか、出産祝いに「どうせいつか死ぬし…」なんて言うつもりはない。だが結婚は数年以内にダメになる(そして2回目3回目がある)確率があまりに高い。
離婚したり不仲の両親や身近な大人を見てきた人は結婚が必ずしも幸せになれるものではないことを実感としてもよく知っている。
また大学へ進学できなかったり非正規労働に就いていて所得が低い人の割合も「両親揃った円満家庭に育ったグループ」より多いだろう。
月収30万から出す3万と月収15万から出す3万では痛みが違う。無駄になるかもしれないことを実感として知っているだけに身銭を切ることのダメージも強い。
それでも(少なくとも式を挙げようと思えるくらいには経済的余裕がある人へ)等しくご祝儀を出さなければならないのはもはや持つ者から持たざる者への搾取とすら思うが、「お互い様だから」と有耶無耶にされる。結婚自体をしない人も式を挙げない人も増えているし、「自分はご祝儀をもらう機会がないから人にも払わない」というわけにはいかないのに。
こうして低所得で結婚も信じてない層は「素直に祝福できる人」との間に深い溝を感じることになる。

・家父長制やジェンダーロール要素
<ウエディングロード>
新婦は父親から新郎に「渡される」。所有物じゃないんだけどね。すんごい家父長制的。
<ファーストバイト>
入刀が無事済んで切り分けられたケーキを、新郎新婦がお互いに「あ〜ん♡」して食べさせ合うやつのこと。いちゃついているだけかと思いきや「男は外で働いて稼ぎ、女は家で料理を作って食べさせる」の暗喩というジェンダーロールど真ん中の演出。
余談だが、今は「新婦が新郎に食べさせるスプーンがだんだん大きいものに変わる」という余興が定番かと思う。私が出席した披露宴でもそうで、最後は口に入りきらずに食べこぼしていて「見苦しいな…」と思った。
<ブーケトス>
「新婦が後ろを向いて投げたブーケを取った女性が次に結婚出来る」というアレ。落としてはならない緊張感があり、また「参加させられて『未婚女性』として晒し者にされたようで嫌だった」という被害者も。しつこいようだがいまどきみんながみんな結婚したいわけでもない。

・厳しすぎるドレスコード
「フォーマルで白以外で清潔感があればOK」ということになっている男性ゲストに対し、特に新婦友人として出席する若い女性は肌を出し過ぎちゃだめ、薄暗い室内では白に見えなくもない色の服はだめ、ヒールのある靴じゃなきゃだめ(#KuToo)、そして求められるコンセプトが「新婦より目立ちすぎてはいけないが華やかに着飾らなくてはならない」!
自分の楽しみではなく人の引き立て役になるためにお金と手間をかけて装って来いというのだ。
ただでさえご祝儀、交通費や宿泊費に加えて衣装代と美容代までとなると若い女性にとって莫大な負担になるというのは前述した通り。
以前「友達の式に出たら、他の子が自分で結った髪型で来てた。信じられない、新婦のために髪も美容室でセットして精一杯のおしゃれして来るものじゃないの」という旨のツイートをした人がいてまあ反感買ってましたが、そう思う人がみんなの支度代奢ればいいんじゃないかな。
とはいえ費用だけでなくスケジュールの都合もあるわけで「結婚式当日の朝は時間がないので、前日の夜に美容室に行ってセットして、その晩は髪を崩さないように机に突っ伏して寝た」という話も聞いたことがある。私なら友達にそんなことをさせたくない。

・セクハラ
新郎新婦が子作りに言及されているのも見たくないものだが、特に未婚のゲストや新郎新婦のきょうだい・いとこ等は「あなたも早く結婚しないと」と言われがちだ。余計なお世話以外の何物でもない。
もう職場ではそういうことを言っちゃいけないというのは定着しているはずなのに、なぜ結婚式だと言っていいと思ってしまう人が出てくるのか。
幸せのお裾分けどころではない。本当に嫌な気持ちになる。
ちなみに私は二次会には呼ばれたことがないが、「どんどん下品なノリになっていった」「新郎新婦がキスをするように迫る流れが定番」など地獄み溢れる話しか聞かないので絶対に行くことなく一生を終えたい。

・半強制参加
招待状を受け取ったら、介護や育児・外せない仕事や試験・重篤な体調不良など、よほどのっぴきならない事情でないと欠席してはならないことになっている。
また職場や親戚や友人の付き合い上、断るわけにいかないというケースも多々あるだろう。
そこをどちらかというと行きたくないか金銭的に苦しければサクッと断っていいようになってほしいというのが私の願いである。
もちろん断ったからといって社会人としての常識とか友情を測られたりしないという前提で。
だいたい実質強制だったら、中には「祝う気持ちなんか全然ないけど行かなきゃいけないからにはどんだけだっせえ式か見てきてやろう」ぐらいのメンタリティで来る人もいるでしょ。
お互いのためにならない。

・誰のためのものなのか
「本当はやりたくないけど親戚や仕事付き合いの手前、やらないわけにいかなかった」というのもよく聞く話。しかし新郎新婦がやりたいことを前面に押し出すと今度は「誰のためなのか」と叩かれる。もう結婚式なんかやらないのが最適解じゃないか?

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仲の良い家族に愛されて育った人、四大を出て新卒で就職して堅実に勤めている人、新郎新婦は幸せになれると信じて祝福できる人。
そうでない人が「自分はそっち側じゃない」ことを突き付けられるのはしんどい。それがどうにもならないことは受け入れるので、せめて「自分は結婚式をしないし、人の式にも出たくない」という気持ちを尊重してほしい。

「女の子は結婚式したいものじゃないの?」「親御さんは晴れ姿見たいもんだよ」「友達ならお祝いしたいしこっちも幸せな気持ちになるものでしょ」って言われるのにはうんざりしている。
そういう暗に「素直にそう思えないお前はおかしい」と責めるニュアンスのことを言ってくる人がいるから余計に嫌いなんだよ。

長々と書いてきたが、どうか結婚式費用の相場が下がってご祝儀でなく会費制が定着してほしい、心からお祝いしたい人だけ出席すれば良くて、行きたくない人が社会的ペナルティを課せられることなく断れるようになってほしい、ジェンダーロールの再生産やめてほしい、女性だけ装飾義務がきつすぎるので緩和してほしい、そして結婚する夫婦が式を挙げたいと思っていないのに第三者が圧をかけることがなくなってほしいと望んでいる。

そしたら今ほど嫌いじゃなくなると思う。

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