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ダンスの話〜"かわいい"踊りって何だろう?どうすれば生まれるのだろう?〜

みなさん、こんにちは。
久しぶりの投稿になってしまいました。
今回は"かわいい"踊りってなんだろうという事について。

先日、パリオペラ座バレエのミリアムウルドブラームが引退しました。
何を踊っても可愛らしいという評がついてまわる彼女。40代だったなんて。

ミリアム・ウルド・ブラームス『マノン』
フィガロジャパンhttps://madamefigaro.jp/series/ballet/240203-myriam-ould-braham.html

今回は踊りにおける"かわいい"ってなんだろうという話です。
どうすれば"かわいい"踊りになるのでしょうか。
"かわいい"踊りってなんなんでしょうか。

先日、京都ロームシアターで公演していたノエ・スーリエ振り付けコンテンポラリーダンス『The Waves』を観に行きました。
数人の男女がアイコンタクトや息遣いといったコンタクトをとりながら動きをこなしてゆく、そんな作品。
作品としてはテーマや題材があったようですが、ここでは動きの話だけをします。
もちろん明確な役柄やストーリーはありませんでした。

『The w Waves』ポスター

この作品で感じたことは、1人のダンサーのかわいらしさ。
麻黒い健康的な肌と弾けるように瞬発力のある動き、コンタクトを取る時の目線、何をとっても「かわいい」という言葉につながるようでした。
『The Waves』の振り付け自体には、かわいい仕草は含まれていません。
例えば、バレエに出てくるクララやジュリエットといった少女がやるような仕草。口に手を当てたり、スカートを持ったり、そんな仕草はありません。

それでも指をめいいっぱい開いて、四肢を振り回す彼女がかわいいと思えました。
拳を空間にヒットさせる動きでさえ、手首のしなやかさ、細さ、指の軽さが、何か重たくない扉をノックしているように見えて、ずいぶんかわいらしい。

コンテンポラリーダンスの感想が"かわいい"ってどうなのでしょう。
相入れないようにも思えます。

でも、私は、
"かわいい"ってそんなもん。という気もします。
"かわいい"はやってみせるものではないのです。
観客が思うものなのです。
観客が"かわいい"と思った時、"かわいい踊り"、"かわいいダンサー"は生まれます。
ということは、"かわいい"誕生の瞬間は、どこにでも生まれる可能性が転がっているということです。


バレエダンサーは役になりきらなければならない時があります。顔の表情を作りすぎるいわゆる「顔芸」は避けるべきと思います。そういう考えの批評家や観客は多いのではないでしょうか。

誰もがその美少女ぶりに驚く、オシポワのジゼルやコジョカルのチャイコフスキー・パドドゥはよく見ると表情は大きく変化していません。

オシポワ『ジゼル』


この時の彼女たちの身振りはかなり大振りです。
これを観て、技術的に凄いと思う人もいれば、かわいいと思う人もいるでしょう。

かわいいは苦心して作ったものを届けるというものではなく、
観客の中に勝手に生み出されたものだと思ったりしています。

だから、どうすれば生まれるとか、こうしたらかわいいと思ってもらえるとかそういう話ではないような…
でも、個人的にはかわいいと思ってもらえる踊りが踊りたいという希望はとてもあったりします。

ではまた。



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