徳島地域エネルギー2

視察報告:徳島地域エネルギーの視察を通じて感じたこと

去る8/9、いつもお世話になっている一般社団法人徳島地域エネルギーさんを訪問し、最新の動向や今後の展望を伺ってきたので、その話を踏まえて考えをまとめたいと思います。

一般社団法人徳島地域エネルギーウェブサイト
http://www.tene.jp/

徳島地域エネルギーさんは地域の自然エネルギーや再生可能エネルギーを利用し、地域の人々が利益を享受できることを目的に再生可能エネルギーの導入支援を行う一般社団法人です。

今回は、地域熱供給やシュタットベルケ、洋上風力や地域循環共生圏についてお話を伺いました。

1.地域熱供給に関する考え方

まず、地域熱供給とは、温水を一ヶ所でまとめて製造し、それをパイプラインで周辺の施設や住宅に供給し、暖房や給湯に利用するシステムです。一ヶ所でまとめて温水を製造することで効率的に熱を利用することが可能です。sonrakuのある西粟倉村でも2018年から地域熱供給(村内6施設に供給予定)が一部始まりました。現在、日本で導入されているバイオマス由来の地域熱供給は北海道下川町、山形県最上町、山形県小国町、山口県安岡町などに導入されています。

ただ、これらの地域熱供給に関して、全ての地域が上手くいっているわけではなく、燃料の供給問題や燃料の乾燥問題など、解決すべき課題は山積みです。それを、上手くいった部分だけを見て真似をして導入を検討する自治体も多くありますが、それでは今後の地域熱供給は上手く機能しません。

地域熱供給ありきではなく、自治体の大きなビジョンがあり、その中の一つとして地域熱供給を検討すべきです。

また、地域熱供給とは少し異なりますが、バイオマス熱利用に関しては、現在、徳島県内で第3セクターの運営により、赤字事業となっている椎茸の栽培施設にバイオマスボイラーをヒートポンプに代わり導入し事業性を上げる取り組みもされているそうです。


2.民間主導であるべき「シュタットベルケ」

シュタットベルケとは地域の自然エネルギーを生かした電力事業をはじめとする公益事業と、高齢者健康支援・見守りサービス、地域の交通維持や商店街の活性化などの地域課題を組み合わせ、解決していく取り組みです。

一般的には自治体と民間、金融機関などが共同出資をして作られます。

 日本では福岡県みやま市が日本初のシュタットベルケとして「みやまスマートエネルギー」を立ち上げました。しかし、構想は良かったものの2年連続赤字になってしまったり、経営の不透明感など、数々の問題が発生していおり上手くいっているとは言えません。今は他の地域で、福島県二本松市や徳島県鳴門市、静岡県掛川市、徳島県小松島市などでシュタットベルケ構築の動きが出てきているとのことです。

日本のシュタットべルケの場合、行政が主導になってはいけない、民間主導で動かなければならないというのがすごく印象に残っています。

民間主導になることで、スピーディーに判断をすることができ、また事業性に関してもシビアに見ることができるからです。

3.生態系や社会環境と共生すべき洋上風力発電

洋上風力発電に関しても面白い話を聞くことができました。

洋上風力発電は、近年、導入量が年に1,000~3,000MWという規模で増えるなど、ヨーロッパにおいて急激に拡大しています。(2017年の累計導入量15,780MW)ヨーロッパでの普及により、導入コストも格段に下がってきています。

現在、日本における洋上風力発電の導入量は約2万kW(20MW)で、すべて国による実証事業です。2018年に日本でも再エネ海域利用法という法律が可決され、今後は日本においても本格的な普及が見込まれます。

海洋上に設置する風力発電に関しては、今まで海洋生物の生息場所を減らすのではないかと言われてきました。しかし、五島列島における最近の研究で、海洋上に風力発電を設置することで新たな漁礁として活用できることが分かってきました。

風車の海中部分に海藻が付着し、そこが魚の餌場になったり、出産・子育ての場となり魚の数が増えたそうです。

洋上風力発電に関しては、景観の問題やバードストライクなどの懸念も指摘されがちではあるが、小さな島にも設置できる再生可能エネルギーとして有効なのではと思います。島国における、風力発電による発電と漁礁の増加による漁業の活性化、その地域の特性を生かした再生可能エネルギーの活用法の一つだと思います。

4.地域循環共生圏の構築も民間が先導すべき

そして、今後日本の地方が目指していく方向が環境省の提示した、「地域循環共生圏の構築」です。

これは各地域の抱える課題を一つの地域だけで考えるのではなく、複数の地域で共生圏を形成し、各地域がその特性を活かした強みを発揮し、地域資源を活かした自立・分散型の社会を形成していこうという考え方です。

地域の特性に応じて補完し、支え合うことで新たな可能性を切り開くことができます。この共生圏の構築に関して、現在環境省の方針では、自治体主導という考え方であるが、これも民間が主導になり進め、自治体にも参加してもらうという方法が有効なのではと思います。

また、この地域循環共生圏とシュタットベルケの相性もいいのではと考えています。再生可能エネルギーによる地域電力を複数の地域にまたがり実施し、地方における交通問題や福祉の問題も周辺地域ととも解決に取り組む。

これも一つの地域循環共生圏なのではないかと思います。

5.まとめ

今回の徳島地域エネルギーの視察を通じて、民間主導が大きなテーマだなと感じました。民間が主導になって動き、流れを作り、そこに行政に参加してもらう。この流れがいいのではと思います。

現在、地域で抱えている問題は一つの地域だけで解決していこうとすると難しく、広範囲に視野を広げ、考え協同することで解決しやすものが多い。

行政主導になるとどうしても自分の地域のことばかり考えてしまう(いいことではあるが)。そこで民間が主導することでスピード感と広い視野で取り組めるのではないかと思います。

その民間が動くためにも行政には自エリアの大きなビジョンを明確に掲げてもらいたいです。この街をどうしていきたいかという大きなビジョンがあることで、民間側も動きやすくなるし、提案しやすくなります。

今後、我々としても複数の地域を繋げていくような動きも出来たらなと考えています。

文責:神崎拓也





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