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sonrakuが目指す未来

私たちsonrakuは目指す未来があります。それは、ローカル自立による分権社会形成。そのキープレーヤーとしての自治体、民間組織、そして制度としての地域おこし協力隊の存在。これらをまとめてみました。

1. 基本的な考え方

戦後、上がり続けたGDPは1995年に頭うちとなった。
その後、GDPは乱高下している。そんな世界に、「いつかはクラウン」のような目指すべき人生のゴールや正解はない。複雑で、変動していて、曖昧で、不確実な社会。そういう時代に僕たちはどう向き合うのか。
1つ言えるのは、地域レベルで自立していくこと。中央集権なんかじゃ耐えられない。その2つのマインドセットを持つ人々が混在しているのが現代社会。世代間ギャップも多い。そうした不安定な社会だからこそ、インターネットによる意見の先鋭化によって、ポピュリズムが台頭し、分断が進む。
世界で、誰も経験してこなかったこの時代を生きるのが、僕たちの使命だ。

2. どのような社会をつくっていくか。

これから数十年後までを見通せば、経済成長から得られる果実を、個人に、地方に再分配する時代は幕を閉じようとしている。僕たちは、これまでとはある意味で真逆の、一人一人の個人から再スタートをきる時代のスタートラインに、1995年に立ったはずだった。
けれどもそれは、一人だけでやる話でもない。一人で難しければ周りが、地域が、企業が、国家が、国際社会がサポートする。EUの行動原理である「補完性の原則」は、まさにそうした概念であり、この低成長社会を生きる大局観を与えてくれている。国民国家からスタートした明治維新とは真逆の、一人からスタートするという明治維新151年後の再スタートなのである。
では、具体的にどういった社会なのか。欧州における自治体の首長が考える使命の1つとして、「食とエネルギーの自給」と社会学者の宮台真司がネット番組で述べていた記憶がある。これが大きなヒントだ。比較優位の法則によって、あるいは化石燃料が無限に使えるという前提によって、食もエネルギーも自給しなくていい時代が長く続いた。自由貿易は推奨すべきだが、化石燃料は有限だ。地球環境の限界と低成長時代が、いままさに同時に来ている。
地方においては、地方自治体がもっとも大きな存在だ。西粟倉村は33億円の財政規模となっているが、これほどの売上を上げる企業は村内にない。ハードインフラ建設や維持、経済成長の果実の再分配を主な仕事としてきた地方自治体は、やはりこの20年で新たに産業の再創造や食とエネルギーの自給がテーマとなってきた。これは大きな変化である。予算執行を主な業務としてきた自治体職員が、売上や経営を考えるべき時代になったのである。これまで培われたマインドセットを、まるで変えなければならない時代だ。
環境省の地域循環共生圏、地域おこし協力隊、地方創生など、地方の疲弊に対する日本政府による施策は多数ある。こうした施策を、これまでの成長型社会マインドのまま扱うから、うまくいかない。これまでの常識をいったん拭い去り、新しい視座で向き合わなければまるでズレてしまうだろう。

3. 地域おこし協力隊をローカル自立の手段として生かすべき

地方側にもっとも重要なことは、新しいマインドセットを持ち、事業構築に「責任」と「オーナーシップ」を持てる人財の確保である。そのためには、個人としての成長意欲を満たすことのできる強いローカルビジョンと体制が必要となる。
基本的に、ローカルビジョンはこれまで自治体が構想してきたが、民間組織を含めた公民連携による新しい地方都市構想が必要である。「地域経営」という、特に地方自治体が経営感覚を取り入れつつ、ソーシャルイノベーションを起こせるようなパブリックマインドを持つ民間組織と連携、さらに役割分担による実践が非常に重要である。
ここで地域おこし協力隊制度の活用は、これらの構想を着実に実践するための人財確保のチャンスである。逆に、地域おこし協力隊制度を利用する際、最もやってはいけない手法は、地域ビジョンを持たず、単に人手不足を補うための募集である。残念ながらこうしたケースが非常に多く、受け入れる地域住民、協力隊、行政の3者がともに失意のもとに事業が終わっていくことが散見されている。また、起業型協力隊も非常に増えてきているが、行政のビジョンがない中で外の人に起業してほしい、ということのゴールはなんなのか、ということが考えられておらず、行政職員任せになり職員個人の範疇の中でしか動けないような事例も非常に多い。
たとえ、協力隊一人ひとりが小さな事業を創造できたとして、そこにどういう未来があるのか。その1つの起業が、地域内外で他とシナジーを生めなければ、そこに社会的意味はあるのだろうか。そうした大局的な目線で見ることを誰一人せず、小さな起業が生まれては消えていく繰り返しが積み重なっている。そうした構造を変えていきたい。
地域おこし協力隊は手段であって、目的ではない。それが本質だ。しかし、「地方創生が目的で、そのための手段としての協力隊だ」という曖昧なことでは戦略的に活用できない。そもそも目前に横たわる地方自治体の限界を捉えた上で、どのような未来を協力隊制度を使いながら生み出していくのか。そしてその未来に終わりはないし、目標とする未来さえすぐに手に届かない。毎日の営みの中で、そうした未来を淡々とつくるのだ。

4. どのようなケースがあるのか(岡山県西粟倉村を事例として)

ローカル自立に向けての理念があって、そこに手段として協力隊を導入している西粟倉村について紹介する。
西粟倉村は、ローカルベンチャーを1つのキーワードとして、新時代の産業創造を進めている。その手段として、協力隊制度を活用。起業型、企業研修型、行政連携型、ローカルライフラボ(起業準備)というような4つのパターンを展開。2018年度で22人が在籍していたし、現在も同程度の人数がいるであろう。このうち企業研修型が最大の13人であった。非常に戦略的で、かつ毎年のアップデートを激しく行なっている。
この中で、もっとも特徴的で、他の追随を許さないのが企業研修型であり、非常に成果を残している。この企業研修型を一言で言えば、村内企業において、協力隊を事業の中で育ててもらうものである。企業側は、3年後に雇用できるまで法人として成長しなければならないという緊張感を持つ。協力隊は3年後に就職または独立するが、他地域では「協力隊卒業時にどのように地域に残るか問題」があるが、この場合にははじめからクリアされている。
最大のポイントは、採用を企業側が行うことだ。他自治体では、自治体が募集および採用して、企業に割り当てたりするが、それでは企業側は押し付けられた感、自治体もお任せ感があって、責任の所在がはっきりしない。はじめから企業側が責任を持って採用し、3年間で育てるという気持ちを持つことが大切である。これは意外と重要なポイントだ。
たとえば私どもsonrakuには総勢20名以上が働いているが、現在はそのうち1人が協力隊として、企業研修型で関わっている。バイオマスマネージャーである半田守はすでに協力隊制度活用の2年目を迎えており、ミッションは明確化(バイオマス事業の収益改善とマネジメント)され、卒業後には就職を希望してくれている。当然、このミッションはクリアしつつ、次のミッションへと変化していく予定であり、個人の成長意欲にも答えられていると感じている。
こうした協力隊を手段として活用するケースは、西粟倉村だけでなく、たとえばNext Commons Labはポスト資本主義をつくるという理念のもと、遠野(岩手)や奥大和(奈良)をはじめ、各地で理念実現のために協力隊制度を活用している。また、北海道東川町もベンチャーがここ10年で100社近く生まれており、協力隊制度を活用している。
これら、いずれも「地域おこし協力隊」とは特に名乗っておらず、その実現のために、戦略的に活用しているスタイルだ。制度が前面に出すぎず、理念こそが前面に出るべきで、まさにこうした地域では、そうした動きを進めている。

5. まとめ

行政が舞台を用意する。そこで民間が踊る。舞台には信頼が必要で、そこは「根拠なき信頼(西粟倉村行政職員さんの言葉より)」を持つ行政が用意する。
そういう公民連携をやり始めたところこそ、力を発揮できている。トライアルでスタートし、修正を繰り返すこと。どんどん良くなっていくスタイル。それは、民間が入っているからこそ、これまでとは違うやり方ができるのです。誰か一人が、どこか1つのセクターだけでうまくいく時代じゃない。組み合わせることで、得意なところを提供しあう。そうして地域が自立していく。
まずは自分がやってみる。がんばってみる。けれども足りない。だからお互いに頼る。これからは、そうしたいい依存関係が必要なのだと思います。「補助金ください」「行政にお任せしとこ」「国がなんとかしてくれるよ」そういう依存ではなく。これこそが補完性の原則。まさに、ローカル自立の分権社会構築のための、根本的な行動原理なのだと思います。そして、こうした人たちとsonrakuは、成長型社会の次の社会を作っていきたい。そうした思いで営みを紡いでいるのです。

文責:井筒耕平

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