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がんなどの新治療法「細胞免疫治療」への貢献をめざして

広報部のNNです。
今年1月に、ソニーは最先端医療の研究に貢献するライフサイエンス事業の新製品、セルアイソレーションシステム『CGX10』を発表しました。
4月9日には日本テレビの「有働由美子とフカボリ記者」という番組でご紹介
いただく予定ですので、宜しければぜひご覧ください。

セルアイソレーションシステムとは、何億個もの人間の細胞の中から狙った細胞を滅菌状態を維持しながら選び取る(分取する)装置です。がんの新たな治療法として注目を集める「細胞免疫治療法」の中で活用されます。
これまでのソニーのライフサイエンス商品は主に大学や研究機関向けでしたが、『CGX10』は研究用途だけでなく、新たに細胞薬の製造や細胞治療をサポートする細胞分析装置として開発されました。

今回は、細胞免疫治療とは何か、その課題、そして『CGX10』がどんな貢献ができるのかをプロジェクトメンバーの声と共にご紹介したいと思います。

細胞免疫治療とは?

現在、がんの治療方法では手術療法、放射線療法、抗がん剤治療が中心です。そして近年、完治率の高さや副作用が少ないことから、第四の治療方法として、「細胞免疫治療法」が注目を集めています。
細胞免疫療法とは、患者の体内にある免疫細胞を取り出し、その免疫細胞にがん細胞を攻撃(不活化)するような遺伝子改変を加えて、再び患者の体内に戻す治療法です。がん以外にも、リウマチなどの自己免疫疾患の治療において採用が進んでいます。

患者の体内にある免疫細胞を取り出し、がんを不活化する遺伝子改変を行い、
再びその体内に戻す治療法です

一回の注射でがん消滅も期待できる!ただし・・・

言い換えると、免疫細胞治療では、イキイキした元気な細胞を狙って分取し、がん細胞を不活化させる遺伝子を付加して患者の体内に戻します。(これを自家細胞治療と言います。)いわば一人一人の病状に合わせた完全オーダーメイドの治療です。
そのため細胞薬が症状に合った場合は、たった一回の細胞注射でがんを消滅させる効果も見えてきています。一方で、完全オーダーメイドという性質上、一般的に注射1本で3000万円~5000万円と、細胞薬としての治療コストが非常に高価である点は、今後の普及に向けた課題となっています。

現在は全世界で計6種類の免疫細胞治療方法がFDAに承認されていますが、
製造される細胞薬はいずれも、若いものや鮮度の悪いものなど、様々な種類のT細胞※が混ざった状態になります。そのため、効果を維持するためには大量の細胞を輸注する必要があり、患者の体内に戻した際の副作用のリスクが高くなると言われています。

この課題を解決するには、強いT細胞を、滅菌状態で高純度かつ高速に選ぶことが非常に大切ですが、既存の細胞分析装置では条件を満たすことが難しい状況でした。『CGX10』は、この点を克服することをめざして開発されました。

※補足:T細胞とは、血中リンパ球の一種で、その60~80%を占めます。血液リンパ球とは白血球の一種です。最近では新型コロナウイルスへの免疫効果が報道されるなど、注目が高まっています。

セルアイソレーションシステム『CGX10』開発

『CGX10』ではソニー独自のブルーレイディスクの光検出技術と微細加工技術を応用し、10個のパラメーター(特徴)に基づいて、様々な種類の細胞を高速に分析し、狙った細胞を正確に選び取ることができます。
さらに、開かれた空間で細胞を分取する従来の方法とは異なり、外気に触れない閉ざされた空間内で行う閉鎖型構造を採用しているため、滅菌状態を維持できます。これにより、副作用の軽減などにも繋がります。

レーザー光を照射し、細胞を解析し、分取する工程イメージ

他にもタッチパネルによる直感的な操作や、検体間の混入を防ぐために1回ずつ使い捨てが可能なキットの採用など、使いやすさにも工夫を凝らしています。
また、細胞薬製造に関するドキュメントを提供しており、お客さまが『CGX10』を細胞薬の量産製造に使いたい場合の認証サポートにも対応しています。

タッチパネルで直感的な操作が可能

プロジェクトメンバーの想い

こうして生み出された『CGX10』、最後にプロジェクトメンバーの声を伺いました。

プロジェクトマネージャー:Brun Marcaurele(通称:マルコ) さん

『CGX10』の開発では、滅菌プロセス構造の開発に始まり、マイクロ流路のチップや消耗品全般の開発まで、多岐にわたって新しい技術開発を進める必要があり、苦労しました。
試作機をお客さまに試していただくなど、トライアンドエラーを繰り返しながら、ようやく製品化に結びつけられたことを大変嬉しく思います。
ソニーの細胞免疫治療ビジネスは、治療中の方々を支え、その人生を変えうる長期的な取り組みと考えています。今後もライフサイエンス事業を通じて、社会に貢献していきたいと思います。

プロジェクトリーダー:栗山 健太朗さん

ソニーの技術で、細胞治療分野の発展と、病気で苦しむ人を一人でも多く
救うことに貢献したいです。研究用途に加えて、細胞薬の製造や細胞治療分野においても使っていただけるように、今後もお客さまと連携しながらプロジェクトを進めていきたいと思います。


執筆 広報部NN


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