漫画原作者やった回顧録~『漫画家が知っておくべき原作者に関する5つの真実』byカルロ・ゼン

真摯な謝罪

まず、最初にお詫びしておくべきでしょう。

漫画家先生、ごめんなさい
これから書くことは知りえる限り全て真実です。

(3月17日追記:ご指摘頂戴して、『一から起こした場合の漫画原作』『コミカライズ化』の二パターンがあるな……という点で定義とより分けが曖昧だったことを確認しました。凡そ、前者は経験が豊富なプロの場合が多く、ここでいう『原作者』のマインドは事前にご存知だったり、視点が異なる場合もあります。※立ち位置等で、どうしても似てくる部分はあるかもしれないけれども……と。過度な一般化がある場合は、ご容赦ください。)


Q:これはなんですか?

最近、トラブルとかも聞くので、原作者-漫画家先生でのあるあるトラブルを調べるつもりで書きました。

立ち位置の違いから生じるミスコミュニケーション、誤解の根元を探るつもりでいたのですが、ちょっと長くなりそうなのでコミカルに『原作者(ネームが書けない)』を戯画的に書いてみた次第です。

『あの原作者、頭がおかしい!』
『原作ガチャはずれじゃね!?』
『こんな嫌な仕事なんて聞いてない!』
『あの糞編集!』
『話が違う!』
等々、原作ありのコミカライズに関わっている先生方が直面したり、耳にされたりするちょっとした『トラブル』の背景にあるあれこれを『理解』する一助となれば幸いです。

かなり自分の独断と偏見が入っているので『自分はああいうダメな連中とは違うから!』という先生におかれましては、カルロの戯言とご容赦ください……( ;∀;)

漫画家が知っておくべき原作者に関する5つの真実

A:ネーム書ける人以外、殆どの原作者は漫画のことを全然知らない!
B:原作者は『原作』について詳しい……はず!
C:原作者は作風に強烈なこだわりを持つ!
D:(原作者は)漫画家だけが鋼鉄の精神だと信じがちである。
E:信じがたいが、悪意はない。(ほとんどの場合)

心当たりはいかがでしょうか?


A:ネーム書ける人以外、殆どの原作者は漫画のことを全然知らない!

ずばり、(『漫画家』のバックグラウンドがない)殆どの原作者(僕みたいなの)は漫画を描いたことさえありません。漫画家先生の常識なんて、知らない。

パースとか、良く知らない。消失点などを知っていたら、めっちゃ褒めてあげてください。そういうレベルかもしれない。

でも、発言権はあるんで怖い|:3ミ

信じられないかもしれないが、本当です。


B:原作者は『原作』について詳しい……はず!

でも、『原作者』なので、『原作』については人一倍知っています。……少なくとも、本人はそう思っています(僕も思っています)。

なので、『面白さはこれだ!』と彼/彼女は自負していることでしょう。

プロットとしては、正しい部分もあります。そうじゃないと、原作者なんていりませんよね。問題は、原作者が知っているのは往々にして『文字ベース』の面白さです。

そう、『小説』や『脚本』という『原作』ベースで詳しいだけ。
(ネームが書ければ、話は全く別です)

しかるに、『その物語を絵におこしたときに、面白いのか?』という点について大半の『原作者』は『知っているつもり』でしかありません。

漫画とした時の『作品としての面白さ』まで意識するベテランと、『そこら辺が曖昧』な人の差は……怖いよね(´・ω・`)

信じられないかもしれないが、本当です。

C:原作者は作風に強烈なこだわりを持つ!

ここまで読み進めたところで、すでにノックダウン寸前の方もいらっしゃるのではないかと心配しているのですが、恐ろしいことに原作者は『漫画家先生は、私の要望へもうちょっと配慮するべき』とか信じがたいことを平然と考えている可能性が否定できません。

彼/彼女は、自分の書いた愛しい作品を『他人に委ねる』ということに『不安』を抱きがちな傾向があるはず。

なので、『ちょっした違い』に対して妙に神経質になることがあるとか、ないとか(僕も微妙に気になることがありました。この辺は、ご相談させていただくことがあります)。

結果、漫画家先生から上がってきた原稿を見たとき、以下のことを思う可能性が大変に濃厚と言わざるを得ません。

・自分なら、こんな言い回しはさせない……
・自分なら、こういうキャラの動かし方はしない……
・自分なら、背景はもっとちゃんと書き込む……
・自分なら、ここの描写をもっとやる……
・自分なら、キャラの表情をもっときれいに……

『自分でやれ』って思った漫画家先生、いらっしゃいませんか? 思い出してください。

漫画のことはさっぱり知らない素人に決定権があるんです。

恐るべきことだ……。

信じられないかもしれないが、本当です。

D:(原作者は)漫画家だけが鋼鉄の精神だと信じがちである。

ここまでくると、もう、『原作者』がモンスターに見えてきますよね。

そんなところに申し訳ないんですが、『原作者』は『漫画家』こそをモンスターだと誤認している可能性すら抱えています。

クリエイターは繊細な方も多くいらっしゃいます。この点では、漫画家も原作者も似たようなものなのですが、『相手が繊細だ』ということをお互いに亡失してしまう場合があります(と聞きました)。

なので、こじれる関係の場合は『あんなひどいやつと、繊細な私を組み合わせるなんて!?』という壮大な被害者感情の応酬になることすらあるそうです。

お互い、人間だってことを忘れてはいけませんし、ちゃんと敬意を欠くことなく話し合うべきですよね?

信じられない? お気持ち、分かります。

信じられないかもしれないが、本当なんです。


E:信じがたいが、悪意はない。(ほとんどの場合)

さて、そろそろ漫画原作者というのが地獄の獄卒、悪意の塊に見えてきたかもしれないところで、最後の(知る限りの)真実を申し上げましょう。

大半の漫画原作者に、『悪意』はありません。

原作者は、原作者なりに『成功』を祈っています(はずです)。

はっきり言えば、『漫画家』の足を引っ張るつもりはありません。

ただ、『自分はより面白くできる』と確信し、『素人が玄人に指示する』という構図に気が付かず、『手塩にかけた作品が漫画になるんだ!』という点で期待感を巨大に膨らませている可能性が濃厚なのではないでしょうか(まとめブログ風に)(;^ω^)。

これ、ホント。

本当に、ホント。

信じられないかもしれませんし、お気持ちはよくわかると言わせてください。

信じられないかもしれない。でも、本当です。

結論


小説は小説。漫画は漫画。アニメはアニメ。

全部、違う技法とやり方があることを前提に考える必要があるというのを改めて痛感する次第です。大いに反省するところもありました。

媒体の違いに対して知見が浅い人間に『巨大な決定権』があるのって良くも悪くも怖いよね……という話になります。

だからこそ、お互いにプロとしてきちんと敬意をもってお仕事する必要があるというのは言うまでもないことです。(根本的には、きちんと段取り・進め方について相談して諒解しておくことがどれだけ大切かとなる感じでもありました)

書き終えてあれですが、僕、たぶん、いくつかやらかしていているかもしれないな……

ごめんなさい|:3ミ

やっぱり、ちゃんとホウレンソウやらんとあかんですね。

たぶん、一番ニーズの少ないノートだけど、こういうのも大切……たぶん。


※3月17日追記

やっぱ、最後は作画の力を大いに頼らせていただく……というマインド、忘れちゃだめだよねって、ある先生が思い出させてくれました(´・ω・)

そうですよね、僕らは漫画家先生に対する感謝の気持ちを忘れてはいけない

忘れているつもりも、軽視するつもりもないんですが、感謝はちゃんと口に出してお伝えするべきでもあります。これは大事なことです。きちんと明記しておくべきでした。やっぱ、僕は迂闊な奴だ……。