【小説】騒音の神様 17 盛山大暴れの夜

勢いのある男がスコップを片手に突っ込んで来る。スコップを振り上げ、切り掛かるような動きだ。盛山は突進するように近づき、スコップが振り下ろされる前にヒジ討ちを喰らわせた。男は勢い良くひっくり帰った。スコップが地面を跳ねる。工事音の鳴り響く中、怒号が飛び交う。「なんやあいつ」「やってまえ、なめやがって」。盛山は後ろから近づいて来る男の方向を向いた。素手で殴りかかってくる動作だ。盛山がヒジ討ちをくらわそうとした瞬間、盛山は頭に強い衝撃を感じた。「ドガッ」。何かが盛山のヘルメットに直撃したが、盛山はそれが何か分からなかった。次の瞬間、拳が盛山の顔にぶち当たった。「よっしゃ、いったれ」と言う声が周りから聞こえて来る。パンチを繰り出した男は、次のパンチを繰り出そうとしていたが、盛山がすぐにヒジ討ちをくらわせた。一発、二発、パンチの男は尻から地面に落ちていった。同時に盛山の背中にまた衝撃が走った、「ガスッ」。直後に足元に何かが転がった。半分に割ったブロックだった。盛山がブロックを気にしている暇はなかった。別の作業員が竹ボウキを振り回してくる。その横からは鉄の脚立を持った男が突っ込んでくる。盛山は竹ボウキを無視して男に突進し、男を捕まえると力ずくで脚立を持った男にぶつけた。二人とも「ぐわっ」と言ってひっくり返り、鉄の脚立がガシャンと音を立てた。盛山のふくらはぎに何かがまた当たった。盛山は、誰かが何かを投げ続けていることはわかった。投げている方向に目星をつけて歩き出す。軽トラックの影から一人の男が次々に何かを投げて来る。盛山がその男を見つけた瞬間、軽トラックが急発進し盛山にバックでぶつかってきた。盛山は必死で跳びのき、地面を転がった。盛山を通り過ぎた軽トラが、今度は前から突っ込んでくる。躊躇なくに盛山にぶち当てる勢いだ。軽トラックのエンジン音が「ウィーーン」とけたたましく鳴る。盛山は軽トラをギリギリで避けると、通り過ぎた軽トラの荷台に飛び込んだ。運転席に手を突っ込み、髪の毛を掴み窓の外に引っ張る。軽トラの男は急ブレーキを踏んだ。盛山は体に衝撃を受けながら荷台から落ちた。掴んだ髪の毛は掴んだままだ。髪の毛を掴まれた男は、ドアで胸を強打。盛山は地面から立ち上がり、軽トラの後ろへ歩いて行き他の作業員達から見えやすい場所へ堂々と歩いて行く。ブロックを盛山に投げつけていた男はもう何も投げなかった。盛山が工事用のライトに照らされ作業員達から見えやすい場所まで来たとき、拡声器の合図音が「ピー、ビー」とうるさく鳴り響いた。「静かにするんや、静かにするんや。子供の音を町に響かせるんや。」拡声器のどでかい音が鳴り響いた。

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