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「ソプラニスタ」ってご存じですか?

自分の声はどんな声?


自分の声種を説明するときに使っている言葉に、「ソプラニスタ」というものがあります。ソプラノの音域で歌う男声歌手、というようにコンサートなどでは簡潔に説明していますが、実は定義がはっきりしてないとも言える用語です。

大学院の論文で、この言葉の定義から歴史など色々調べてみましたが、そもそも文献が少なく、海外から資料を取り寄せたり、カウンターテナーの方々に質問したり、イタリアでお世話になった先生の言葉を思い出したりしながら苦労してまとめました。

恥ずかしながら、20代の頃は、女性のソプラノ歌手の歌と比較して、自分の歌に劣等感を感じ、自分の声種を客観的に見つめることから逃げていました。今思えば、声種など関係なく、歌い手として自分の声を客観的に見つめるべきでしたが、弱かった私はそこから逃げ回っていました。30歳を目前にしていた大学院の2年間は、いよいよ覚悟を決め、自分と向き合う環境を作り、七転八起しながらも有意義に学べたと振り返っています。

ソプラニスタとカストラート

「ソプラニスタ」は男声のソプラノ歌手を女声のソプラノ歌手と区別するために現在では使用されていますが、色々調べた結果、近年に突然現れた言葉ではなく、カストラートとも関連があるようです。

ちなみにカストラートとは、ボーイソプラノの声を成人後も保つため、去勢された男性歌手のことです。カストラートの起源は、教会では女性が歌えなかった時代にさかのぼります。それでも高声部を担う歌手が必要だったという背景のもと生まれたようです。活躍の場はオペラに広がり、17~18世紀には大変な人気を博した歌手もいました。

19世紀後半には人道的見地からカストラートは禁止され、カストラートが衰退し始めました。諸説あるようですが、ソプラノカストラートと女声のソプラノとの区別をつけるために「ソプラニスタ」というようになったようです。

おそらく、カストラートではない男声ソプラノとソプラノカストラートとの区別のためにも「ソプラニスタ」という言葉が使われていたと思いますが、はっきりは分かりません。20世紀初頭に最後のカストラートの声が録音されています。現代ではカストラートは存在せず、技術でソプラノの声を出す成人男性歌手を専ら「ソプラニスタ」と呼ぶようになったようです。
ちなみに、「ソプラニスタ sopranista」はイタリア語、「ソプラニスト sopranist」は英語です。カタカナ表記で両方見かけます。

カウンターテナーとの違い

よく質問として、「カウンターテナーは女声のアルトの音域で歌う男声歌手、ソプラニスタは女声のソプラノの音域で歌う男声歌手と認識してよいですか」と聞かれることがあり、基本的には否定はせず、そうですと答えています。しかし、ソプラニスタとカウンターテナーとは異なる語源を持っているため、便宜上そのように使用されていると言った方がよいかと思います。

また完全に区別するのもどうかと思っています。私がイタリアで師事したカウンターテナーのルイージ・スキファーノ先生は、ソプラニスタもカウンターテナーの一種だとおっしゃっていました。私もその意見に賛同しています。ちなみにカウンターテナーの説明はまた大変な音楽学のお勉強になるため、今回は省略しますが、現代カウンターテナーは世に広く認識され、目覚ましい活躍をしています。是非、いろんなカウンターテナーの歌を聴いてください。

お薦めとして、
大活躍のアンドレアス・ショルを紹介します。

アンドレアス・ショル
https://www.youtube.com/watch?v=CpVonMf8DYM

なかなか、複雑な話になってきましたが、ソプラニスタ=珍しい声、という前提で見られることが多いので、あまりこれにこだわりたくないというのが本音ですが、自分の声を育てていく上で、歴史や定義を学ぶことは必要です。これからも研究していきたいです。ちなみに写真は私が大学院の時にオルガンの伴奏で、ヘンデルヴィヴァルディを歌っている姿です♪

※論文の記憶が薄れていること、今は研究が進んでいるかもしれないため、間違っていたらごめんなさい!

  

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