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【ライブレポ】IO four tour

2024/1/25 IOワンマン@Zepp Diver City参戦
今回は比較的後方から見た。

で、まあ、すごかった。まあああ、すごかった。
ここまで世界観を研ぎ澄ましたライブはそうそうないんじゃないかな。
圧倒的個性。他のラッパーのステージでは早々見ないこだわり。
作り込み方が結構オタクっぽくて、あんなにスタイリッシュなIOがこんな作り込み方をするんだっていうのは結構意外だった。PUNPEE的な気づくことを求めてない感じの作り込み方というか。

ライブレポとかで比喩的な表現をあんまりするのは好きじゃないが、今回のIOのライブは「研ぎ澄ましきった刀」みたいなイメージがずっとこびり着いてる。
派手じゃないんだけど、確実に切れ味があって、けどその切れ味を実際切って見せつけるんじゃなく、鈍く光る佇まいだけで伝えて来る感じ。
そしてIOのその佇まいを最大限に際立たせる演出。
そう、演出で魅せるのではなく、その刀を最も美しく魅せるような演出の仕方というか。マジで凄い世界観だった。
いつもみたいに最前付近にいたら「IO~~~ぎゃ~、視野狭窄~~」という感じだっただろうか、後方で落ち着いて見れてよかったと思う。

何を足しても引いてもダメ

舞台も演出も構成もIO自身すらも、全てがIOの表現したい世界観のために作られている感じ。構成要素のうち、何かが失われたら世界観が弱まるだろうし、何かを足したらその要素の主張が激しすぎてノイズになる、そのバランスを絶妙なところで保ってる。

舞台全体は雑然とした路地、たぶんアメリカのどっかをモチーフにしたんであろう、寂れ気味の街頭、フェンス、ガードレール、電話BOX、金かけてなさそうな街頭看板、転がるタイヤ、そこに雑然と置かれたソファーとローテーブル、そのなかに配置されたDJブース、ドラム、キーボード。
後々分かったけど電線に引っかかるコルテッツ、つまりこの舞台はLA。

一個一個は寂れてるんだけど、統一感があるからそれが完成度の高い世界観として出来上がってた。そこに車が走り抜ける音や、雨音みたいな街中の環境音が加わり、会場全体が街の中になっていく感じ。
治安はそこまで良くない街の路地裏を住処にするイカした奴等が作る物語の雰囲気って感じ。

で、まだまだ研ぎ澄まされます。
まずMCなし、たぶんだけど客煽りもなし、舞台上の演者も客もその世界を共有しているって感じ。IOから客に言葉をかけないことで、そこでの壁がない感じ。確かにあの世界で「今日は来てくれてありがとうございます。上がれお台場!」とか言われてもガン冷めする。ああ、確かにここお台場だったわってなる。

そんでIOも含めて演者がぬるって出てくるんだよね。
そもそもステージに不定期に人が出たり入ったりする、ラップするしないは関係なく、普通に後ろの方歩いてる、あくまで街中だから。
で、ラップする時も元々ステージ上にいた$MOKE OGがいきなりラップし始めたり、電話ボックスからJAKE出てきたり、普通に裏から登場したりで、ぬるっと入ってくる。偶に舞台上のソファーにRAYDBACKしたりして、元々その世界の住人だった人がラップをしているという雰囲気。

で、ラストもラスト、IOが去る時も無言。
タバコに火つけて、そのまま舞台裏に消えていった。え、終わり?それともまだやるの?アンコール言った方がいい?とか思ってる間に明転してって、あ、終わったんだと徐々に現実世界を取り戻していく感じ。いや超綺麗な終わり方だった。ライブの完璧な世界観からシームレスに現実に戻っていく感覚。

うーん、曲の話全くしてないな笑
けどそういう世界観が異次元だったのでその話は絶対にしたかった。

実力

はい、俺が大好き、実力です。
ここまでかっこいい世界観を作り込んでも、曲がゴミだったり、声が出てなかったり、ラップ下手だったりしたら話にならない。けどもうそれも完璧。
KANDYTOWN自体がそうだけど、何でバイブス全開って感じでもないのにこんなライブ聞きやすいの?
そして客演も実力者揃い。IOとステージ並んでも成立する奴ら。若手チョイスでWatsonは流石です。

曲の話したいけど全部良かったんだよな。盛り上がりとは別に全曲その時その時で生まれる感情があって、「あーこの曲暇だな、早く盛り上がる曲やれよ」タイムがなかった。
まずライブの始まりの今作アルバム『four』の表題クラスの曲タイム、『Sequence』『Honto』『左利きのBenz』で曲の雰囲気とステージが相まって、今回のライブにのめり込んでいく感じね。『four』自体の完成度も凄いから、世界観にどんどん沈んでいった。
いやー省きたくないけどきりないから省いて、『Your Breeze』『Sunset』で客演あり、名曲タイム。ブチ上がり。

それで、サックス出てきて、ドラム叩いてのこの時間。これやばい。今回のライブのハイライトここ。
『Mood Blue』始まって、サックスの超太い存在感の音が響き渡って、そこにIOのラップが乗ってくる。超イカす。さっき言った治安悪目の街でカッコよく生きてる奴等の映画で渋いムーディーなシーンが眼の前で起こってるかのような雰囲気。
バンドセットってこれくらいシンプルで良いよな。フルバンドとかにすると音が重なりすぎて全体としては汚く聴こえること多い。で、また省きたくないけど省略して。

『TOKYO KIDS』いきなりが流れてブチ上がり。「swing like 長嶋」。
さらに、CHARI、モニホとの新曲。コレも良かった。リリース楽しみすぎる。『TOKYO, TOKYO』みたいなタイトルになるのかな。安易すぎるか。
それで『R.T.N』でKANDYの面々出てきて、『You Came Back』でHollyQとGottz出てきて、もう『TOKYO KIDS』以降はブチ上がり続けてた。
んでラストIOくんがしっとりやって。タバコに火つけて退場して、明転。

世界観がとか言ってたのにブチ上がりばかり書いてしまった。
けどそこらへん情報として外すわけにはいかないでしょ。しゃーなし。
ブチ上がりタイムは作りつつも、ちゃんと世界観に戻す所は丁寧に戻して、一体感は損ねない。しっとり目の曲もその戻した世界観で渋くちゃんと聴かせる。

超ハイリスク

世界観を研ぎ澄ますってのは超ハイリスクだと思う。
演出ガンガン、盛り上がっていきましょーみたいなライブであれば多少何かをとちったり、どこかが微妙でもそこまで気にならない。基本足し算で成り立ってるから、その分がちょっと冷めるだけ。

けど世界観を研ぎ澄ましきった今回のライブではちょっとでも異物感があるだけで異常にそこがクローズアップされてしまう。世界観にどっぷり浸かってたのにいきなり現実に引き戻される。
そうなると成功も失敗も明らか、めちゃめちゃハイリスク。

そういった意味では今回も現実に引き戻されるような瞬間が多少あった。
まずはKEIJUのリリック飛ばしね。KEIJUは最近色んなライブで見る機会多いけど、珍しいレベルで歌詞飛ばしてた。
BAD HOPだったっけお前?ってくらい飛ばしてた。
いやーあれは一気に冷めたね、IOも放置せずにぶん殴るか、Hold on, hold onで一回止めて、KEIJUに水ぶっかけて、ビンタでもして冷静にさせてからやり直せ。

あとはこれは人によって感想分かれると思うけど『Curtain Call』のIOバースを入れたこと。やっぱり『Curtain Call』はあの武道館だけのものであった方が美しいと思うんだよな。特にIOのバースはKANDYのラストを物語るフレーズも多いわけで、ワンマンでそれをやるのは違うんじゃないと。
聴けたことは嬉しいけど、うーん、それは安易ではという感じ。

TOKYO KIDS→新曲→KANDY数曲の流れは超難しい。どうなんだろう。
盛り上がりって意味では途轍もなく良かった。マジでクライマックス、超大盛り上がり。
けど世界観に合っているのかというと微妙な気も、特に『R.T.N』。
けどライブの満足度という意味ではあのブチ上がりはあって欲しい。
継ぎ目も自然だったしまあいいのか。

これはヤバい

うだうだ言ったけど、トータル超絶良かった。
これを見ちゃうと安易な盛り上がりの足し算ライブとかお話にならない。
あー、リスク負ってでも表現追求してないなと感じられちゃう。

見せびらかすことはないから、気付きづらいけど本当に途轍もないライブだった。ここまで徹底的にノイズを排除して(=盛り上げ要素を削って)ちゃんと素晴らしいライブを成立させるのは並大抵の覚悟じゃない。

IOはもちろんヘッズなら誰でも知ってる存在だけど、ちょっとまだ真価が気付かれてないかもしれない。これは全ライブ行きたい。行きたいし、行く必要がある。

これでイケメンでスタイルいいのなんなんだ?なんか書いてたら最終的にムカついてきたわ。
今後もこういう研ぎ澄ましきったライブをするのかはわからないけど、一回はライブ見たほうが良いラッパーだと思いました。
超食らった。

ライブレポとしては以上。

オフィシャルレポートってなんだよ

で、ここからはライブレポじゃない。読むかは任せる。
オフィシャルレポートなるものがクソって話し。記事はこれな。

いや、こんなんがあのライブのレポートか?
KEIJUがリリック飛ばして世界観崩れまくってたこと書けよ。
どう考えても書くべき事実だろ。あれのどこで客席の一体感高まってたんだ。

で、明らかにステージ横とかから撮った写真ね。
会場にいたヘッズは誰もそんな光景見てませんよ?
てか書いたあなたもその光景見てませんよね?
まあシンプルに読みづらいとか、全然熱が伝わってこないとかあるとして、会場にいたヘッズが見ていたものをシンプルに共有できないってのはクソでしょ。何がオフィシャルなの?俺が見てた光景と全然違うけど。

情報詰めて文字数埋めることやとりあえずかっこよさげな写真適当に選ぶことがレポート書くことだと思ってんじゃねえの。
しょーもな。
ライブ中、曲、演者、演出、客の盛り上がりみたいな項目のエクセルでも埋めてんの?ならそのエクセルアップしてくれればそっちのが見やすいからそうしてくれ。

写真に関してはこれを撮ったチルウィルが悪いわけじゃないよ。写真単体で見ればめちゃめちゃカッコいいです。
レポートだっつって、いくつかの写真をピックアップするのにこのチョイスは何なんだって話。

今回のIOのライブが素晴らしかったのに、それを全く伝えられている気がしない、「「「「「オフィシャル」」」」」レポートに中指を立てずにいられませんでした。

以上。

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