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清張地獄八景

『清張地獄八景』は、みうらじゅんさんの松本清張愛溢れる名著である。

『清張文学とはボブ・ディランの歌であり、仏教書である』
『一度はハマると抜け出せない 清張地獄へようこそ』
『唇の履歴書』
『伝説の脚本家が語る現場秘話【橋本忍】』←このトピックが一番興味深かった。
『不倫の世界は「大人のホラー」』


とランダムに選んだ目次を読むだけで面白い。

橋本忍氏のトピックで驚いたのが、松本清張氏の晩年のお話です。

『清張さんから「頭の出だしを考えたらすぐ長編でも書き始めます。書いているうちにお終いまでどうにかなる感じですが、この頃は途中で行き詰って四苦八苦することが多い。橋本さんはシナリオは書くと決めたら、最後まで決めてから書かれるんでしょう」と聞かれました。「途中で考え込んで時間がかかったら、忙しい俳優さんのスケジュールまで狂ってしまうから、形は最後まで決めてからでないと仕事にかかれません」と答えると、「だったら僕のために、小説の構成を立ててください。僕がその構成通りに小説を書けば画期的なものになるような気がします」と言われるので、僕は思わず膝を乗り出し、「構成・橋本忍 小説・松本清張か。これはいける!」と声を上げ、清張さんの顔も晴れ晴れとしてきました』(橋本忍さんのトピックより抜粋)

橋本忍氏はあれこれと材料を探し、構想を練ったとのこと。しかし、松本清張氏の急逝によって実現しなかったそうです。

松本清張氏の作品は映像化も多々されているのですが、私的に清張作品に携わった一番好きな演出家が和田勉氏です。和田勉氏の『聖優 松本清張先生』というトピックも面白かったです。

☆★私の好きな松本清張原作ドラマベスト3★☆

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1位 『けものみち』

演出:和田勉
脚本:ジェームス三木
出演:名取裕子、山崎努、伊東四郎、加賀まりこ、西村晃

原作と違う終わり方なのですが、これがまた心に残る名作なのです。二人の男と女が墜ちる奈落が美しく見えて・・・忘れられない作品です。


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2位 『波の塔』

演出:和田勉
脚本:ジェームス三木
出演:佐久間良子、鹿賀丈史、加賀まりこ、佐藤慶、山崎努

今作品も二人の男女が奈落の底に墜ちる清張地獄的作品。和田勉氏の実写化作品でいつも思うのは音楽のセンスも良いということ。今作品で使用されている曲がリストの『死の舞踏』、緑靑の『時の列車』やショパンの『ワルツ 10番』。音楽をドラマの緊迫感を盛り上げるツールとして上手く取り入れるのも和田勉ドラマの匠の技。


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3位 『棲息分布』

演出:和田勉
脚本:石堂淑朗
出演:佐藤慶、滝沢修、津島恵子

今作品は、男女の奈落に墜ちる話ではない。戦時中、軍需品を横流しして成功した井戸原(滝沢修)の過去を知る主人公(佐藤慶)の野望と復讐を骨太に描いた作品。大変観応えがあります。

日々観た映画の感想を綴っております。お勧めの作品のみ紹介していこうと思っております。