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PARASITE DEJAVU 「死と再生」

2022年10月22日(土)、10月23日(日)に、さいたまスーパーアリーナにて、THE ORAL CIGARETTES(以下:オーラル)主催のイベント『PARASITE DEJAVU』が開催された。

https://theoralcigarettes.com/feature/parasite_dejavu

本イベントは、2019年に地元・関西の泉大津フェニックスにて開催され、彼らに縁のある様々なミュージシャンやクリエイターが集まり、愛溢れる名イベントになったと有名である。ドキュメンタリー映像が映画館でも上映され、オーラル史の中で伝説の2日間になった、というイメージだ。

そんな名イベントが帰ってきた。2020年5月にさいたまスーパーアリーナで開催予定だった『SUCK MY WORLD』ツアーが中止になり、そのリベンジも兼ねて、そして「PARASITE DEJAVUを関東でもやってほしい」というファンの声に応えて、さいたまスーパーアリーナでの開催、となったとのこと。

初日はONE MAN SHOW、2日目は対バン形式のOMNIBUS SHOW。充実に充実しまくった2日間。会場内のフリースペースにはアパレルブランド「MUZE」のギャラリーや、ペインターのOLI氏によるライブペイント、ソックスブランド「SUN SOX」のギャラリーなどが展開され、イベント名物となった各クリエイターとのコラボレーションも賑わった。オーラルが如何に様々な仲間と共にシーンを突き進んでいるのかがよくわかる空間である。

初日は、オーラルならではのコンセプチュアルな演出が光ったワンマンライブが繰り広げられた。ギリシャ神話・メデューサの話がモチーフになっており、演奏の合間に物語がビジョンに映し出される。あらすじをざっくり述べると、容姿端麗すぎて神にもモテたメデューサがポセイドン(海の神)と、処女神アテナの神殿で交わってしまい、罰として怪物にさせられてしまう、という神話。怪物になってしまったメデューサは、髪の毛は毒蛇で、見たものを石に変えてしまう能力をもっていた。

そこで特筆したいのが、上記の物語が流れた後、「演出の都合上、次の一曲は動かないでください」という文言が字幕で映し出された時の様子である。直後に演奏された『嫌い』で、フロアは誰1人動かなかった。まさに、メデューサに石にさせられたように微動だにしなかった。没入感満載の異様で不気味な光景。後半のMCでメンバーも「あんな光景今まで見たことない、凄かった」と言っていたが、本当に鳥肌が立つ空間だった。あんな光景、後にも先にもあの数分だけだろう。

本イベントのメインビジュアルやステージ装飾には、メデューサの髪の毛が蛇であったことから、蛇をモチーフにしたものが多くあった。そして、蛇は「死と再生」のシンボルだということが物語の中で語られる。そこで私はすごく腑に落ちた。オーラルが映し出す死生観にすごく合うな、と思ったからだ。

人は皆、死と再生を繰り返す。それは物理的な「死」のみならず、嫌いだった自分に別れを告げ、考えを新しく改めるのだって「死と再生」だと私は思う。山中拓也(Gt&Vo.)はこの日、何度も「自分のなりたい自分になってほしい」と言った。「自分の好きなこと、やりたいことをしていい」「誰かの理想に合わせていると苦しくなるから」と。そして「俺らも、自分たちがやりたい音楽をやります」と堂々と言い放った。「俺らがここに立てているのは紛れもなく、皆さんのお陰です。この軸はずっとブレることはないです。」と感謝と愛を伝えた上で「誰かの理想になるのはもうやめます」と言ったのだ。そうして歌った『5150』は非常にグッとくるものがあったし、本編最後の『BLACK MEMORY』を歌ったあと、山中が(演出で)ステージから後ろに倒れるように落ちていったのも、今までの自分とこれからの自分への「死と再生」だったのではないかと、私は感じた。

「死と再生」を繰り返す人生を送りながら、ぐるぐると廻っているサイクルの中で、彼らに出逢えたことは何かの意味があると思う。そして彼らはその意味を知っているかのように、THE ORAL CIGARETTESの音楽を辿って出逢った人達へ、愛を込めた言葉、音楽を沢山届けてくれた。情報過多の生きずらい世の中で少しでも皆がハッピーに生きられるように、一人一人の顔を見るように歌い上げ、底上げされた演奏力で、丁寧に、でも豪快に音楽を鳴らした。



彼らは、出逢いや繋がりを非常に大切にする印象がある。それはファン1人1人へも勿論だが、一緒にロックシーンを盛り上げるミュージシャンや、クリエイター達に対してもそうだ。冒頭にも書いたように、イベントに各クリエイターのブースが設けられているのもそうだし、2日目のOMNIBUS SHOWで各アーティストがオーラルとのエピソードを話したり、時にはイジったりしながら、それを受けた最後のステージで幸せ満点の表情をする彼らの姿を見ていても思う。そしてこの2日間で、豪華な"友達"を招いて『Bullets Into The Pipe』の楽曲全てを披露したのもそうだ。移り変わる時代の中で、変化しながらも根幹にあるロック魂を燃やすミュージシャン達が、垣根を超えてお互いの音楽をぶつけ合い、混ぜ合い、最高の化学反応を起こす。お互いのリスペクトがあるからこそ、優れた音楽作品へ昇華ができるのだろう。

間違いなく、ロックシーンの熱さを感じる2日間だった。衣食住のどれでもない音楽は、コロナ禍でその必要性を問われ、ファンもアーティストも悔しい思いを沢山したと思う。そんな状況を乗り越えた音楽シーン、ロックシーンはこの先、より一層力強いカルチャーとして、脱皮して大きく再生、成長していくと思う。イベント最後に発表された2023年のカップリングツアーはきっと、ロックシーンの大きな一歩になってくれるのではないか。今後のTHE ORAL CIGARETTESがとっても楽しみである。

https://twitter.com/oral_official/status/1584152657282973697?s=46&t=RWloU5i2Y9YXGkLXYQ9I8w

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