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King Gnu presents 『THE GREATEST UNKNOWN』東京ドーム公演

King Gnu の全国5大ドームツアー「THE GREATEST UNKNOWN」

1月27日(土)の東京ドーム公演に行ってきた。感想を書こうと思う。

開演時刻を過ぎ、綺麗と不穏が混ざった音が流れる中、満員の観客は今か今かとステージを見つめていた。そして突如照明が落ちると、待ち侘びてた分大きな歓声があがり、ステージの両脇のビジョンにはカッコよく白黒加工された彼らが映し出される。続いて巨大な目が開く映像。これから物語が始まることを示唆するような演出だ。そして「SPECIALZ」のMVの独特なシーンや絵が次々と差し込まれた。まだまだオープニング映像が続くんだろうなぁ…と呑気に思ってたら、知らないうちにメンバー全員がステージに出てきていて。急に「SPECIALZ」のロゴがバン!と出るのと同時に《U R MY SPECIALZ》と歌が入って幕を開けた。不意打ちの曲入りに体がビクッ!とはねるくらい驚いた。衝撃的な幕開けにドーム内が悲鳴に近い歓声に埋め尽くされ、そのボルテージのまま2曲目の「一途」へ。見事なアルバムの並び、且つ呪術廻戦メドレー。ラスサビ前にワンテンポの間を空けてドーム中の注目を集めた常田大希が「東京ォォァー!!」とがなり声で叫び、早くも大盛り上がりをみせた。

続く「千両役者」もザラついた映像とノイジーなサウンドが非常にカオティックでかっこよく、難解なリズムも見事なグルーヴで駆け抜ける。ステージ上の銀色のオブジェが照明を受けて眩しく反射していて一層煌めき、続く「STARDAM」では1階席まで温度が伝わる火柱が何発も派手に上がった。新井和輝のベースがブリブリに存在感を出していて、《あの日の悪夢を断ち切ったならば/スポットライトに何度も手を伸ばし続けるから》のフレーズでは、暗かった客席にスポットライトが当たった。応援ソングという言葉で形容するとチープかもしれないが、苦しいところから《あと一歩》踏ん張れるような力を宿してる名曲だ。最後には、大きく口を開けてシンガロングする観客を背景にタイトルロゴがどデカく映し出され、映画のワンシーンのような光景が繰り広げられた。

そして「MIRROR」をBGMに神秘的な映像が流れる。透明(?)なヌーが雪山を登った先に5つの星が集まる…のような、ツアーテーマとメインビジュアルにちなんだ映像。冒頭4曲はオープニングであって、ここから本編に入るんだな、と感じる演出だった。続いて、井口理の情感たっぷりな歌声が魅力的な「CHAMELEON」へ。冒頭4曲はとにかく大歓声が渦巻いていたが「CHAMELEON」その後の「DARE??」のハイクオリティなアレンジは、皆息を飲むようにして聞き入っていた。勢喜遊がコロコロと面白い表情を作りながら派手なドラミングをかまし、ピアノの椅子に座ったままの常田が観客の方に体を向け次から次へと高速で言葉を吐く。一度暗転して久しぶりの静寂が訪れてから「白日」「硝子窓」「泡」を披露した。序盤の情報の多さとは対照的で、井口の自由自在で繊細な、でも力強い歌声が見事に際立っていた。

続く「2MOЯΟ」はステージ上のカメラマンがそれぞれメンバーに寄り、小躍りしたりカメラを覗き込んだり笑ったりとカジュアルなステージングを魅せる。そして勢喜遊がドラムで「Vinyl」へと繋ぎ、《軽やかなステップ》をしながら歌う井口は、巻舌も呟きもため息めいた空気も自在に歌に含ませて、ボーカリストとしての圧倒的なスキルを魅せた。後半に向けてどんどんと熱を増していき《暴れ回れよ》のフレーズの「アーーッ!」という叫びにピークを持っていく。見事な歌唱にブワッと鳥肌が立った。

次が更に衝撃。大量の火柱がブワーーッと派手に上がり、ステージがよく見えないな…と思っていたところでなんと、「W●RK」へと突入したのだ。ようやく見えたステージには椎名林檎が立っていた。あまりにもスペシャルなゲストの登場。後半のMCでメンバーが「歓声があんまりにも凄すぎて曲聴こえてるかな?って思うほどだった」「俺らにも歓声ちょうだい?まだやり直しきくよ?(笑)」と言っていたが、本当に怖いくらいの大歓声が巻き起こった。これは大袈裟ではなく…実は本当に聞こえなかった(笑)。椎名林檎はキメキメの立ち姿から微動だにせず堂々と歌って、サングラスで表情がよく見えないところもまたカッコよく、メガホン持った常田は椎名林檎の周りを動きながら歌う。そして曲が終わると颯爽とステージを去った。まるで幻でも見ていたかのような数分間に呆然とした。

どよめきと余韻でパニックになってる観客を一気に引き戻すように、ビジョンに「阿修羅」の文字がバッ!と映って爆音で掻き鳴らし、アルバム通りに「δ」から「逆夢」へ。「劇場版 呪術廻戦0」のエンディングテーマだ。ステージ上から降り注いでいたオレンジの照明が呪術高専の教室に差し込む夕陽を思い出させる。乙骨憂太と折本里香の関係性にも、五条悟と夏油傑の関係性にも感じられるこの名曲に、改めて呪術廻戦オタクの私はジーンときた。次もアルバムの流れで「IKAROS」を鳴らし、「Wake up!」と煽りながら大迫力の「Slumberland」へ突入。メロディを抜き取ってリリックを吐き捨てていく常田とスケール満点のシンガロング、Cメロの色気ある低音の歌。東京ドームに似合いすぎるダイナミックな楽曲だ。そこからさらに「Srrows」「Flash!」でボルテージをガンガンにあげていき、全員踊り狂った。

《密かに期待しちゃいないかい?思い通りにいきやしないぜ?やるせないね/それでも主役は誰だ?お前だろ/輝けるんだ、いつだって思いのままに》

「Flash!/King Gnu」

上記のフレーズが個人的にとてもお気に入り。常田は「お前だろ」のところでカメラに向かって指を刺した。そして自分に言われているように「輝けるんだ、いつだって思いのままに」という言葉が響く。今回のツアーテーマでありニューアルバムのタイトルでもある『THE GREATEST UNKNOWN』は4年ほど前から決めていたらしい。ライブフォーメーションで中央に人が立たないKing Gnu。そんな彼らの目の前に私たちがいることで5つの星となるのだ。『主役はいつだってあなた。言い換えれば無我夢中で音楽を鳴らす俺ら』とコメントを寄せていた。まさにそうだ。一歩一歩、日々の人生を歩む私を輝かせてくれる。そして音楽と真っ向から向き合ってロックバンドやってる4人もギラギラと輝いている。彼らの言葉通り《有名無名は関係ない》と思った。皆の人生がそれぞれの明るさで輝いている。輝いていることは1人じゃわからないな。反射で分かることもある。

続くMCでは、椎名林檎登場時の半端ない歓声に言及しつつ、10年前に出会った時のことを懐かしんだ。そして次の「BOY」では、MVに出演した子たちが登場したのだ。いつの間に出てきたのかが見えず、歌が始まったら突然いたもんだから驚きと可愛さで心がいっぱいに。そして多幸感満点の「SUNNY SIDE UP」「雨燦々」を経て「三文小説」を伸びやかに歌い、最後は「ЯOЯЯIM」をBGMにエンドロールが流れて本編は幕を閉じた。大人数のスタッフの名前が流れるエンドロールを見て、改めてこんな大人数が関わって作り上げたステージを背負う4人は凄いなと思った。最後はもう一度ツアーロゴが映し出され、少しぼやけて消えていった。それはまるで眠りにつく時の視界みたいで、オープニング映像の目が開く演出とリンクしているように感じた。

鳴り止まないアンコールに応じて再びステージに登場した彼らは、「Teenage Forever」「飛行艇」を届けた。全員で大シンガロング。最初から最後まですごい迫力のシンガロングで、まだ始まりたてのライブのように満ちているパワー。「飛行艇」はラストに演奏したのにも関わらず、"ここから始まる”感じがした。以前、常田が自身のTwitterで「今年から拠点も動き方も大きく変わる」と言っていたことから、余計に《どんな夢を見に行こうか》という始まりのフレーズが染みる。まるでネクストステージに向かう背中を見てるみたいで、切ないような、それでいてワクワクするような気持ちになった。
これからも世界中を巻き込んで《台風の目となって/大空を飛び回って》いってほしい。

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