見出し画像

応募作品④『彼のようで彼ではない人』

※これは、ツカノマレーベル主催:朗読企画「こんな夢を見た。」2020 short short story に2019年に応募したものです。NOTEに掲載するにあたり気がついた分については、多少修正や加筆しております。 

_____

『彼のようで彼ではない人』

 
 こんな夢をみた。

 数年前に別れた彼氏に瓜二つといってよいくらいの男性とドライブをする夢。運転席に座る元カレ似の男性の横顔からその夢ははじまった。その彼があまりにも元カレにそっくりすぎて…

私「新カノさんと別れたの?」

 と、隣で運転している元彼似の彼に尋ねた。運転中の彼は、私からの質問に何も答えず、〝ぷっ〟と軽く吹き、ちらっと私をみて微笑むだけだった。
私はよく見間違いする性質(たち)なので、運転席に鎮座しているその彼の顔をよーく観察してみた。横顔の輪郭、眉の形や、耳のカタチ、ハンドルを握る手の指の長さ…。別れてからもう随分経ってしまったからよくは覚えていないけれど、こんなに似ている人がいるのかと思うくらい似ている。隣で静かに運転している彼を横目に、私は助手席でその元カレに似てるだろう彼からの返事を待つことにした。
 目の前を移ろいでいく景色は、今までに行ったことのない近未来の街並み。遠い昔、聞いたことのある洋楽をお共に海の見える場所まで彼は車を走らせる。そして、海岸沿いの広場で車を降り白い砂浜へ。
 波打ち際のギリギリのところを歩く彼の後を追うように、少し後ろを歩いていた私に、彼はくるっと身体を回転させ顔を近づけてきた。

彼「新カノさんって?ダレ?」
私「えっ? しーくんじゃないの? ちがうの…?」
彼「しーくんてダレ?」

(しーくんじゃないのか…)と私は思いながら

私「あのー、そのー、ごめんなさい!。元彼にすごく似ていたものだから…」
彼「えっ? オレ、あなたの彼氏じゃないんだ (笑)」
私「(はっ? 何言ってんの?この人。)あのー、といいますか、あなたは一体誰なの? 」

 やっと私の質問に応えはじめる元彼に似て非なるどうやら新しい彼。

彼「………だよ」

 打ち寄せる波の音にかき消され最後の語尾だけしか聞き取れない…

私「最初のほうが聞こえないんですけどぉ‼ もう一回‼」

という私に

彼「ヤツはオレの影武者。」
私「か、影武者…? はぁ? 影武者って? ど、どういうこと?」
彼「影武者は影武者」
私「えっ! だから、どういうこと? あなたが本物ってこと?」

 あまりにもビックリしすぎた私は、、何故か、元彼似のどうやら新しい彼の頬をビンタしてしまう。

彼「ったいなぁ…なんでオレを叩くわけ?」
私「あっいや、夢だったら痛くないと思って…。つまりその…あんまりビックリしたから…」
彼「つーか、普通自分をつねるでしょうよ!」
私「えっ!あっ!ご、ごめんなさい。だって、私痛いの嫌いだし…」
彼「(笑いながら) むちゃくちゃな人だなぁ…」

 彼は笑いながら、私の髪をもみくちゃにした。その彼の顔をもう一度確認しようとしたけれど、太陽の日差しが眩しくて目が開けられない。
 と、その時、波の音と共にバックミュージックで流れていた洋楽が、だんだん、私の携帯の着信音(「おもちゃの兵隊のマーチ」)に変わり部屋中に鳴りひびきはじめた。

 そこで夢から目が覚めた。

心の聲『なっ…なんだ(汗)ゆ、夢だったんだ…。やけにリアルだったな(汗)。けどさー、なんでそこで終わるのよぉ。元カレが影武者だったなら、これまでの辛かったことも全部面白くなるのに。私の人生こんなものってわかってるけど、夢くらいハッピーエンドで終わってもいいのに…。』

 明けて欲しくなかった夜が空しく明けてしまった週末の朝。どうやら今日は遅刻も決定。トホホ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?