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不発作品①『忘れられないごはんのストーリー』

象印主催で募集されていた「忘れられないごはんのストーリー」をみつけ応募しようとしたら、時期がずれていたのか、私の見間違いだったのか応募できずに不発で終わったエッセイです。

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「 もう一つの実家のごはん 」


 白米は正義!と思うくらい、我が国の白米は美味しいと思う。特に新米の炊き立てご飯は何よりのご馳走だ。そう思うようになったのは、私自身短期間ではあるが被災した経験があるからだ。当り前にできていた生活ができなくなったことで、日常の些細ことも宝物になってしまったのは私だけではないと思う。

 今回の企画に応募しようと文章を考えていた時、実の母親以外に〝母ちゃん〟と呼んでいた存在の人が突然亡くなった。 白米といえば、実の母親が炊くご飯より、その〝母ちゃん〟の炊くガス釜で炊いた少し柔らかめのご飯が好きだった。ガス釜で炊くから更にご飯の美味しさが引き立っていたように思う。よそん家にも関わらず私は遠慮せず、梅干しだけで何倍もおかわりして食べていた。そして、学校の友だちに「昨日ご飯を10杯食べたんだ!」と自慢していた…。一応女の子なのに、何の自慢だったのだろう…(苦笑)

 幼少期の頃はその〝母ちゃん〟の握ってくれる紫蘇おにぎりが好きだったようで、母がつくる紫蘇おにぎりに対して
「母ちゃんのおにぎりの味と違う!」
と母に文句をいっていたのだとか。私は幼い頃から微妙な味にうるさい子だったようだ。 
 それと、時々ふと食べたくなるのが〝母ちゃんの作る平天入りのカレー〟だ。当時は西條秀樹氏がCMに登場なさっていた中辛のカレー粉で肉のかわりに平天を入れる。平天のダシが出るのかこれがなかなか美味しい。そのカレーに甘口のお醤油をちょっとかけて食べるのが〝母ちゃん家流〟。

 その母ちゃんのごはんは、実の母が作るごはんとはまた別の次元での大切な思い出の味だし、当時へ思いを馳せれば母ちゃんたち家族と囲んだ食卓でのごはんが私の記憶の奥にしっかり根を張り息づいていたことがわかる。あの頃『母ちゃんおいしかったよ!』って私はちゃんと言えていたのだろうか? 

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