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応募作品⑥『追憶のブラックモンブラン』

※これは、竹下製菓主催で募集された『モンブラン50周年エッセイコンテスト2019年8月に応募したものです。NOTEに掲載するにあたり気がついた分については、多少修正や加筆しております。 

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『 追憶のブラックモンブラン 』

 アイスクリームの思い出ではほろ苦い思い出がある。弟がブラックモンブランで高額当選したことだ。時は1980年代。
その当時は良く棒アイスを食べていた。 私には1つ年下の弟がおり、弟は棒アイスの〝あたりくじ〟をよく当てていた。 私もそれなりに当たってはいたのだが高額当選したことはなかった。

 当時のブラックモンブランの特賞は500円だった。一般庶民の子どもからすれば高額当選みたいなものだ。 実は弟が高額当選した場面に遭遇してしまった。小さな田舎町だったからこそ私も当たったカモしれない確率は高くなるからこそ、とてつもなく羨ましかった。だから、今でも、ブラックモンブランをみると当時のことを時折思い出すことがある。

 幼い頃から弟と比較され育ってきたことで劣等感を抱えていた。だから尚更なのだろうと思う。そんな自分を握りしめていたことに大人になり気がつき、昨今やっと折り合いがついた。空しさや悔しさの感情は〝当たった〟事への羨ましさだけではなく、弟に対する劣等感だったのだと気付いた時はなんともいえない感情にさいなまれた。

 遠い昔の些細な記憶を眺め、溢れてくる感情と一緒に静かにそっとまた記憶の底にしまいつつ、ブラックモンブランを頬張ると過去の自分のブラックな感情を対峙できた気持ちになれる気がした。そして、今年の激熱な夏が終わり秋がはじまる。

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