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応募作品①『わたしと年金』

※これは、2019年日本年金機構のエッセイに応募したものです。 NOTEに掲載するにあたり、気がついた分については、多少修正しております。

『 わたしと年金 』

 私は去年まで障害年金を受給しながら生活をしていた。 一度社会復帰したものの再度 体調を崩し2年弱働いていない状況だったが、内縁の夫と別れたことからシングルマザーに 舞い戻り働かざるを得なくなった。そんな矢先の昨年末の暮れ、年金事務所などから前持っ て何の連絡もなく年金受給停止ハガキ一枚で突然その事を知ることとなった。
 半年ほど就職探しに翻弄していたが、なかなか再就職先がなかった。 毎年この季節になると〝今年こそは受給停止になるかもしれない〟とそのような想定をしながら暮らしていたので、仮に停止になっても不服申し立てをするつもりはなかったのだが、生活に困窮し最終的には〝生活保護〟を受給せざるを得なくなった。 十年程前、精神科閉鎖病棟へ入院したことで、私は精神障害者となり障害年金を受給しながら自宅療養をしつつ社会復帰を目指していた。 年金だけで充分生活できるとはいえなか ったが働けなくなってしまったことから、年金に限らず様々な制度を利用させていただく身の上となったので、年金制度は本当に有り難たかった。
 全く不安ではなかったわけではないが、年金をはじめその他の制度のお陰もあり、制限はあるけれども短時間のパートをしながら日常生活を行えるまでになれた。 一時期、障害のある子どもと離れて暮らすことにはなったのだが、治療に専念できたことで自分自身を改めて見つめなおすこともできた。 そして、また再度子どもと一緒に暮らせるまでに元気になれた。 それでも十年近くもの歳月がかかってしまったのだが…。 とにかく、このまま一旦障害年金から卒業し、今度はきちんと年金の納入をし、支える側となって少しでも社会に貢献できるようになれたらいいなと思っている。 それが自分にとっての恩返しのようなものでもあるし、私と同じように再度自立したいと思い、日々懸命に生き延びようとしている人も存在するだろうといった思い があるからだ。 ただ、年金受給を卒業するにあたり、厚生労働省を始め年金事務所又は支 援者の方たちへ今一度考えていただきたいことがあり、今回筆をとり応募させていただいた次第だ。
 受給停止の通知はハガキ一枚だけではなく、同時に封書での簡単な説明もあわせて届くが、 それらの内容だけでは当事者からすれば十分な説明にいたっておらず、不服申し立てしたく なるのは当たり前のように感じた。 突然の受給停止に限らずその後のサポートをもっと違 ったアプローチの手立てないものだろうかということを今一度考えてもらえたらと思う。 国からすれば、1人でも働ける人は働いてもらい巣立ってもらうということはありがたい ことではないのだろうか?  当事者にとって突然ふってわいたような年金受給停止は、本人 の症状がたとえ寛解にむかっていたとしても、ダメージは大きいと思う。 私のようにそういった想定が出来る人とできない人というのは必ずいるからこそ、一旦突き放すというような提示を唐突に示すのではなく、一度前持って当事者の声も聞くことは必要なことのように思うのだ。 何故なら、私事にはなるが年金停止になる約半年ほどの時間があったにもかかわらず、停止されるまでの移行期に就労先が見つかったり公団などに引っ越しなどができていれば、生活保護を受給せずに済んだかもしれないからだ。 受給停止にあたっては、厚生労働省の管轄になるらしいのだが、診断書を提出してから約半年ほどの間、当事者の私に対してなんの調査もなかった。 その点について、私もそれらの連絡を待たず自ら年金事務所へ尋ねるなどすればよかったのかもしれない。 そういった意味で準備不足だった自身にも落ち度はあるかもしれない。
 ただ、考えてもらいたいのだ。この日まで、どんな思いでやっとこの日を迎えることができたのかということを。 それなのに、そういった突然の降って湧いたような最終試験のようなお試しで、治ったか治ってないのかを試されているとするのであれば、どれだけ完璧に治らなければならないのだろうか?  といった疑問が私の内側で沸々と燻り続けているということにもなっているからだ。 それに、私にできたからといって同じようにできる人ばかりではないといった思いも少なからずはある。  私がここまで元気になり、そういった突然のストレスから逃れることができたのは、それなりの経験や自助努力を意識的に行ってきたからだし、私はそれらを回避できる術を得ていたからだ。 だからこそ、こういった一当事者の意見が、同じように年金を卒業するだろうこれからの人たちへ活かされればいいという思うし、制度があっても別の制度があることで、活かされないという事実があることもどこか心に留めておいてもらい制度の改訂や改正に活かしてもらえ たらと思う。  毎日元気に働けるという状況が特別になってしまったからこそ、国の社会保障制度の有難みに感謝する日々な当事者からの願いでもある。

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