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真冬の熱い熱い特別な夜のこと。~真冬の野音 渋谷すばる × THE BAWDIES~

「特別な夜」とすばるくんは綴った。
「あの時間だけ、世界からそこだけ切り取られて」と。

そんな言葉が相応しい場所だった。永遠のような一瞬のような時間だった。
ライブナタリー5周年記念公演
”渋谷すばる × THE  BAWDIES”  @日比谷野外大音楽堂

真冬の野音。
今までは春と秋のみに公演を行っていた日比谷野外大音楽堂、通称〔野音〕。今年から実験的に冬の公演もできるようにしているとのこと。


公演前、1月30日のブログで、すばるくんは野音に寄せた想いを教えてくれていた。

1986年のRCサクセションの野音公演、そのライブ音源や映像。
危ういバランスの上で潰されそうだった少年の心を救ってくれた大好きな音楽と空気。どこまでも優しい、ロックンロール。その聖地。
そこで自分が歌えることの喜びを伝えてくれた。


入場~THE  BAWDIESさんのステージ

2023年2月5日。
朝からよく晴れていた。風もなく、絶好の野外ライブ日和。
最寄りの霞が関駅を出た時から、聴きなれた声と音が響いてきた。すばるバンドのリハが聴こえる。
グッズ列に並びながら、昂ぶる気持ちがわくわくとドキドキを加速させていく。

客席に座り、空を見上げる。夕暮れ、移り変わっていく空の色。
野外のライブは空や風の匂いや空気の温度…そんなあれこれもリアルタイムで、丸ごと思い出に残る。

開演は17:30。
一番手はTHE  BAWDIESの皆さん。

え、楽しいっ!
演奏が始まって、すぐにそんな声が出た。
初めましてだったのだけど、一曲目からその世界に引き込まれて。
体が自然に揺れる。THE BAWDIESファンの方のノリ方を真似して腕を振る。
「HOT DOG」の ”ミュージカル” は声を出して笑ってしまった。
だけど演奏はど真ん中のロックンロール。ROYさんの声量もすごい。

出したい音を出したいように、自分たちがやりたい音楽を目一杯楽しんでいる。そんな想いが伝わってくる。
どんどん熱くなって、ライブが進むうちにすっかり楽しくてカッコいい4人のファンになってしまった。

MCでROYさんはすばるくんと友達になりたい、と言ってくれた。
デビュー曲を歌う時には、その曲を
「渋谷すばるさんに捧げます!」とも。
そんな言葉がとても嬉しかった。
どうか、"すばるさん"を離さないでください!
また同じすばるくんとの対バンも観たい。その時はコラボステージも、ぜひ。

あたたかくて熱くて、とても優しいロックンロール。
また絶対ライブを観たいと思ったバンドだった。

ライブナタリー5周年記念ライブ
THE  BAWDIES
 セットリスト

1.IT'S TOO LATE
2.YOU GOTTA DANCE
3.LEMONADE
4.WHY WHEN LOVE IS GONE
5.I'M IN LOVE WITH YOU
6.I BEG YOU
7.HOT DOG
8.LET'S GO BACK
9.JUST BE COOL


すばるくんのステージ

ステージの転換が終わり、すばるくんとバンドメンバーの皆さんが登場する。
位置について、一瞬の静寂の後。
すっかり暗くなった空に聴き覚えのあるギターリフが吸い込まれていった。
…「ライオン」だ!

名刺がわりの一曲目は「ぼくのうた」でも「これ」でもなく「ライオン」。
2023年一発目、今のすばるくんが自分のファン以外の方もいるライブの初めに聴かせたい曲は「ライオン」だった。

勢いよく飛び出してから、抱いた想い、生きてきた道のり。それを経て今ここにいること。ここで歌っていること。
ファーストアルバム『二歳』に収録された曲だけれど、もう一人飛び出した時の孤独な歌ではない。この日野音のステージに立ったのは、時を重ね出会いを重ねて今、仲間と進むライオンだ。今いる場所にきちんと足をつけ、顔を上げて前を見据えているライオンだった。

夜空に響く、伸びやかな声。ラストの咆哮。
”光も影も 傷跡も やき跡も
オレのもの
オレのもの
俺だけのもの"
あの頃よりも力強く、揺るぎない声。今、渋谷すばるとして、バンドの仲間たちと誇らしく鳴らす声だった。


そこから流れるように「BUTT」~「ぼーにんげん」へ。
「日比谷ー-----ー--!!!」
すばるくんがロックンロールの聖地の名を高らかに叫んで煽る。
もう、ここはすばるくんのステージだ。
この会場の誰がTHE BAWDIESさんのファンで誰がすばるくんのファンなのか、そんなことはもうどうでもいい。それほど会場はひとつになっていた。
みんなが体を揺らし拳を振り上げて、ステージへとパワーを送り続ける。

そして曲間もほとんど空けず、流れるように「アナグラ生活」が始まる。
一度聴いたら耳を離れないサビで、みんなが腕を振っている。ツアーの時のような一体感。
音楽っていい。ロックンロールは優しい。最高だ。


ここでMC。

「ライブナタリーさん、5周年おめでとうございます。そんな記念すべきライブに呼んでいただいて嬉しいです、ありがとうございます」
一言一言、噛みしめるようにすばるくんは話し出す。

「…すごい人見知りなので緊張していたんですが、THE BAWDIESの皆さんが告知動画のコメントで "共にロックンロールを愛する仲間" と言ってくれたのがすごく嬉しくて救われて、緊張が解けました。でも人見知りなので、THE BAWDIESさんと面と向かって話せてなくて。ここ(ステージ)でありがとうと言おうと決めてました(笑)」

「THE BAWDIESのファンの方、初めまして。渋谷すばると申します。今こんな感じで音楽やってます。仲良くしてください」

そして、後半戦に入る前にもう一度
「渋谷すばるです!」
と宣言するように叫んだすばるくん。自分の音楽を、自分という人間を広く広く伝えたい、そんな気持ちが強く伝わってきた。

後半戦一曲目は「ベルトコンベアー」だった。
大好きな曲。『二歳』ツアー以来、ステージで聴くのは本当に久しぶりだった。
同じ型にはめられて流されていくことへの抵抗、立ち止まって見た景色。
きっと誰もが覚えのある感情、それを寂しくないギリギリの軽やかさですくい取って歌う。そこにはきっとすばるくんが今の道を歩き出した時の想いが映っているのだろう。最後の "またね" に込められた少しの切なさとすがすがしいような潔さが胸を打つ。


それから「きになる」へ。
ハンドマイクを持って前へ出たり、上手へ行ったり下手へ行ったり。ステージをいっぱいに使って踊るように体全体で伝えてくれる。
この曲、THE BAWDIESのファンの方にはどんなふうに感じられたのかな?
渋谷すばる、こんな引き出しもあるんですよ、と。ちょっと聞いてみたい気がした。


そこから流れるように「ワレワレハニンゲンダ」が始まる。
今回のアレンジもSPOOX MUSICのビルボードライブの時のものだった。
どこか物憂げで気怠るいような、でもしなやかで強かな人間の歌。
満月の下、夜の空気にとても似合っていた。


「日比谷ーーーー!!もっと行けるかあーー!!」
「日比谷ーーーー!!あっためていくぞーーー!!」
すばるくんの煽りが夜の空気を震わせる。
そこからはノンストップでいつものロックナンバーへ。

爆音」はいつも気持ちを最高に上げてくれる。
ライブだけで聴ける、大好きな "初期衝動!"

”本当のことはいつだって 誰にも見れない
今お前と感じてる 誰にも奪えない"
生きている、と感じる。高らかに叫びたくなる。
そしてアウトロの、すべてをぶつけるようなすばるくんのシャウトが、日比谷の夜を切り裂いていく。

その後の「ないしょダンス」は、
「踊ろうぜ、日比谷ーーーー!!」
の煽りから始まった。
鋭く胸を刺すすばるくんの問いかけ。
"「お前は普通じゃない」
じゃあ普通って何なんだろ?
みんなと同じ様にする事が普通なのか”

”飛び出して来いよ
いつでも待ってるぜ”

思いのままに踊る。腕を振り上げて揺れる。最高に自由だ。
会場の熱気が最高潮になる。
アウトロのブルースハープがこれでもかと胸を揺さぶる。



曲が終わって荒い呼吸を繰り返すすばるくん。そのたびに白い息が夜の空気に溶けていく。
その息を整える間もなく、
「ありがとうございました」
とすばるくんが話し出す。

「何度も言います。ライブナタリー5周年、おめでとうございます。
ずっと続いてほしい。盛り上げていきたい。微力ですが、何でもやります。子供の頃からこの世界に身を置いている者として、ロックンロールが、ライブが、エンターテイメントが鳴る場所が増えていってほしい。…楽しい時間はなんぼあってもええやん、ね。
また呼んでください。もっと寒くてもいいです(笑)」
そんなふうに言葉を紡いで。
「渋谷すばるでした。またどこかで」

ラストナンバーは
素晴らしい世界に」だった。
ツアーのラストで聴かせたいと思ったという「7月5日」ではなかった。
ツアーからまた一歩も二歩も進んだ、今のすばるくんが最後に聴いてほしいと思ったのは「素晴らしい世界に」だった。

"どんな事にも 意味があるなら
これの意味は 何"
静かな歌い出しから、伝わる想い。高まる熱。

”どこかで誰かが叫ぶ声が この心を引きずり出して
薄い胸を震わせるんだ”
苦しくても辛くても、この世界から目をそらさない。そんなすばるくんの覚悟。それが胸をえぐる。問いかけてくる。

"世界は素晴らしい そう思える明日へと
行こう 行こう その未来へ
どんな時も ここから"
”ここから” でステージを指差すすばるくん。自分が在るべき場所、いつだって、伝えたい想いが放たれる場所は、ここだ。涙がこぼれた。

その後の
"その向こうへ"
のロングトーンは、本当に満月に届いた気がする。
…多分[薄い満月]になって笑ってた、あの人にも、きっと。

そして音源にはない、アウトロのハーモニカが深く深く胸に沁み込んでいく。
すばるくんのハーモニカはいつも、言葉で伝えきれない想いを伝えてくれるけれど、このステージでもやっぱりそうだった。
終わらないコロナ禍の中、真冬の野音でロックンロールを鳴らす意味。
すばるくんのハーモニカが奏でる音は、今またこの曲をここで歌う意味を言葉以上に伝えてくれた気がした。

歌い終わったすばるくんの白い息が揺れながら夜空に消えていく。夢のように儚く美しかった、その光景を一生忘れない。
表現を業とする人間が、持てる全てを使ってその想いを伝えようとする。
すばるくんがいつも伝えてくれるように、その時その場所でしか感じられない、たからものの瞬間に、また立ち会わせてもらえたような気がした。

すばるくんは嬉しそうだった。ずっと楽しそうだった。
心全開で、聴き手への愛、バンドへの信頼、お相手のTHE BAWDIESさんへのリスペクト…何より音楽を通してなら伝えられる、という今の自分の音楽への自信とプライド。それを伝えたい、広げたい、という想いが真っ直ぐに伝わってきた。

その声は、本当に星空に向かってどこまでも伸びていくようだった。
ステージから、伝えようとする熱とすべてを肯定して抱きしめてくれるような大きなあたたかさを感じた。


改めて聴き返すと、自己紹介のようなセットリストだ。
「ライオン」から始まって、ラストの「素晴らしい世界に」まで。
今の渋谷すばるを伝えたい、知ってほしいという想いが溢れている。
一人歩き出すまでのこと、自分はこんな人間だなんだ、ということ、大切にしているもの、今目指すべき場所…。

最初の曲が「ライオン」だったことは意外だったけれど、終わってみると一曲目は「ライオン」しかなかったような気もする。

2023年、一発目のライブ。
今のすばるくんの立ち方、進み方がこれならば。今年も絶対絶対、満ちた楽しい年になる。
そんなことを信じさせてくれた。

そしてこの最高のライブが、まだすばるくんを知らなかった方、ちょっとだけ知っていた方、久しぶりの方…。いろんな方が(初めて、もしくはもう一度)彼と出会うきっかけになったらいいな、と思う。

ライブが終わって帰り道、見上げた空に丸い月が見えた。
東京の真ん中、日比谷の空にも星が輝いていた。
火照った体と昂ぶった心に夜の風が心地よく吹き過ぎていった。


翌日、すばるくんがブログを更新してくれた。
すばるくんも同じ月を見上げていたこと…同じ場所で同じ時間を過ごせたことが幸せだ、と改めて思う。
本当に、あの場所あの時間だけの特別で幸せな夜。
見上げた満月、夜の空気、風の匂い、一生忘れない。

渋谷すばるの人生を、これからも追いかけ続けさせてください。
またひとつ、最高の夜をありがとう。
ずっとずっと、大好きです。


ライブナタリー5周年記念ライブ
渋谷すばる セットリスト


1.ライオン
2.BUTT
3.ぼーにんげん
4.アナグラ生活
(MC)
5.ベルトコンベアー
6.きになる
7.ワレワレハニンゲンダ(ビルボードver.)
8.爆音
9.ないしょダンス
10.素晴らしい世界に


#ライブナタリー5周年記念 #渋谷すばる #THEBAWDIES   #野音  #日比谷野音


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