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渋谷すばるさんの「7月5日」のこと。


心の中で「7月5日」が鳴っている。
たぶん、初めて聴いた時からずっと。

2022年9月7日。
7月5日」リリース。

当日、配信前に告知のインスタグラムで聴いたほんの数十秒。
"あの日の君が 辛かった意味が…"
このワンフレーズに心を持っていかれてしまった。
理由、ではなく、意味。

それだけで辛かった日々に立ち止まったことも、今それを受け入れて前を向いていることも、ぜんぶ伝わってくる。
…なぜそんなにも優しいんだろう、と。


イントロは力強い手拍子で始まる。
そこに光を差し込むような本間さんの鍵盤。シンセサイザーの伸びやかな音がすばるくんの世界をどこまでも広げていく。
手拍子をなぞるように力強く重なっていく茂木さんのドラム。音を束ねてバンドを支えるようにリズムを刻む安達さんのベース。


すばるくんの歌声は、何の技巧も感じさせない、ただただ想いを伝えようとするように真っ直ぐだ。
前半には つらかった "あの日" が苦しいくらいに胸に迫るけれど、途中、"あの日の君が辛かった意味が…" からはあたたかく伸びやかで。

ラストで
"あの日の君と これからの君が 
失くした日々を 見失わずに歩けるように
どんな時でも こんな時代も
いつまでも日に染まれ"
と歌い上げる。ここの歌詞もとても好きだ。

あの日もこれからも。失くした日々さえも抱きしめて、すべて抱えたまま歩いていこう、と。

"日に染まれ" という言葉には、ただ光に照らされるという以上に温もりを感じる。
どうかずっと日差しの中に…と、あたたかな気持ちになる。


そして、アウトロでは新井さんの圧巻のギターソロ。
あれは新井さんにしか出せない音だ。きっと新井さんだから、のアレンジだった。
「7月5日」は、あの時のあのメンバーの、渋谷すばるバンドにしか歌えない歌、出せない音だったように思う。


2ndアルバム『NEED』をリリースした時(2020年11月)はまだ、希望が見えていた気がする。世の中も、きっとすばるくんも。
でもますます深刻になる状況に、ツアーやフェスの中止が続いて。
彼自身が「何もできなかった」と言っていたように、深く落ちて沈んだ時期があった。

そこから少しずつ前を向いて、2021年9月 苦しい想いとそこから生まれようとする希望を音に落とし込んだような『2021』のリリース。


それから大切な出会いがあって、さまざまな経験を重ねて
「絶対に音は止めたくない」と決意して。

7月5日に更新したインスタグラムで教えてくれた、
”数年ぶりになぜか呼ばれた気がして引っ張り出した”という、テレキャスターとの奇跡の出会い。
多くは語らないけれど、きっとすばるくんにとってとても大きな出来事だったのだろうな、と思う。

そして
『2021年』から約1年後、4か月連続リリースの第1弾としての「7月5日」が発表された。

初めてフルで聴いた時、最初に浮かんだ言葉は "ありがとう" だった。
歌い続けてくれてありがとう。
今、この歌を届けてくれてありがとう。

『二歳と1328日』のツアーの時、本編ラストで届けてくれた「7月5日」。
すばるくんは毎回アウトロで、あの奇跡のテレキャスを弾きながら客席のひとりひとりを見てくれていた。とても優しい表情で、時々頷きながら。

7月5日」はあの時、あのツアーのための曲だった、そんなふうに思える。
すばるくんも私たちも苦しい時間を過ごしてまた会えた、その時のために作ってくれた歌なのだろう、そこで聴かせたい曲だったのだろう。


彼らがステージでこの曲を歌うことはもうないのかもしれない。
でも、あの時のすばるくんの歌声とバンドの音と、すばるくんの優しい表情にみんなで手を振って応えたあの たからもの のような時間はずっと忘れない。一生大切に抱きしめていきたい。

ステージのすばるくんはとてもやさしくて、しなやかで強かった。

表現者として前に立ち続ける覚悟。
自分を愛してくれる人たちを守って、先頭切って走り続ける覚悟。

今までの自分も今の自分もこれからの自分も、ぜんぶを引き受ける覚悟、相手のそれを受け止める大きさとあたたかさ。

とても優しいのだけれど
でもそこに寄りかかるのではなく
自分で立たなければ、と思わせてくれる
凜とした強さもあって。

すばるくんのあたたかく優しい声が
立ちすくむ心を包み込んで
そっと背中を押してくれて。
踏み出す一歩に勇気をくれる。

7月5日」は
悩んで苦しんで迷って動けなくなって
それでも自分に嘘をつかず
また立ち上がって真っ直ぐに前を向いた
渋谷すばるという一人の人間から
私たちひとりひとりへのラブレターであり、
すばるくん自身をも含めた、それぞれの人生へのエールのように思えるのだ。

何度も思う。
あの時、この歌を歌ってくれてありがとう。
寄り添って一緒に連れていってくれて。
本当に、ありがとう。


#渋谷すばる #7月5日 #二歳と1328日

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